第4話 目撃
そこには、日本刀を持った女性に押し倒されて、足を乗っけられている柚木の姿があった。
柚木さんは気絶していて、ピクリと動いていなかった。
状況が読み込めず、頭の回転が止まる。
止まった頭の回転をゆっくりと回し、声を荒げて質問をする。
「おまえ何してる?」
「この女を祓おうとしてるんだよ」
答えは端的に、でも言葉には殺気が籠っていた。
気迫に押されてはダメだと、自分に言い聞かせて奮い立った
「柚木さんから足をどけろ」
「どけろって言われても・・・祓うのが仕事なんだから無理だよ」
「何も悪いことをしていないじゃないか。どこに祓う要素があるっていうんだ」
「君は知らないかもだけど・・・幽霊ってものはいつかは化け物になる。化け物になったら人を襲う。」
その言葉を聞いて頭が真っ白になった。
柚木さんもいつかは化け物になり、人を襲い殺す。
柚木さんは父親に殴り殺され、幽霊になってもなお殺される。
あまりにも残酷でかわいそうじゃないか。
これは俺のエゴだけど、柚木さんを守りたい。
「仮に柚木さんが化け物になったら俺が止める。だから」
その瞬間、体が宙に浮いたのが分かった。
腕を蹴り飛ばされ、地面に着いた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
痛みに耐えきれず、叫んだ。
きっと腕は折れ曲がっている。
はあはあと腕を押さえつけ、何もできずうずくまる。
「腕が折れたぐらいで痛がり何もできない人間が調子乗ってるんじゃねぇ」
「頼むよ、頼むから柚木さんを殺さないでくれ」
俺は懇願することしかできなくなっていた。
突如、後ろの扉が開き男が入ってきた。
「終わったと思って来たのに終わってないじゃん」
「どうなっての明美?」と男は尋ねた。
明美と呼ばれ、言いずらそうに理由を話した。
「すいません先生手こずってしまって」
「手こずるのはいいけど人に手出しちゃダメでしょ」
「すいません」
明美は申し訳なさそうな顔をして立っている。
男がこちらに近づいてくる。
「君大丈夫?」
大丈夫な訳がない、男の態度にいら立ちがでてきて敵意を向けた。
「こわいこわい、ごめんねうちの生徒が」
「謝るぐらいなら柚木さんを祓わないでくれよ」
先生と呼ばれた男はニコッと笑って「いいよ」とあっさり了承した。
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