第176話
その場には合計12名もの人物がいた。
「多いな……」
「キャラ紹介とかしとく?」
「誰に向かって?」
「そりゃあれだよ。神様?」
桜は思いついたように
桜「あ、これだと分かりやすいんじゃない?」
「桜、なんで喋る前に一回自分の名前を言ったの?」
桜「ダメだよリーファ。それじゃあ分かりにくいって話したばっかりじゃん」
「え、えー」
アクト「おいお前ら、ふざけてる場合じゃないだろ」
「それアクトが言う!!」
俺は警戒するように前に立つ男を見る。
シウス「おーおー、まるで狂犬みたいな目じゃねーか。まだ俺は何もしてないってのによ」
アクト「どの口が言う。既に俺様には無視出来ないことしか起きていないが?」
シウス「それは過保護がすぎるんじゃねぇか?」
アクト「過保護?俺様は俺様に関することにしか動かな」
「ちょっと待って!!」
リーファが叫ぶ。
「何で平然と喋る前に自分の名前言うことになってるの!!」
アクト「帝国ではこれが一般的だ。そうだよな、ノア」
「え?聞いたことがな……というかなんでノアの名前を……」
アクト「だよな?」
「あ、はい」
アクト「ほらな」
桜「勉強不足だねーリーファ」
「私がおかしいの……」
という話もあり、話は一旦全てが終わってから始めることになった。
シウス「てなわけで自己紹介だ。俺の名前はシウス。この部隊エースの隊長だ。気軽に隊長様と呼べ」
アクト「んで、ゴミ野郎。お前に選択肢を与えてやる。洗いざらい全て話すか死ぬかだ」
シウス「じゃあ第3の選択肢だな」
そう言うとシウスの後ろから小さな女の子が顔を出す。
その場にいる皆が首を傾けた。
2人を除いて
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悶え苦しむアクト。
「え?どうしてハルがここに?」
動揺するキナコ。
だが、地面を転げ回るアクトの奇行により、キナコの表情の変化に気づくものはいなかった。
桜「アクトのセンサーに引っかかる。つまり彼女は」
リ……「コホン。まさかあんな小さな子にまでなんて」
シウス「襲って来てもいいんだぜ?コイツがどうなってもいいのなら」
「殺す!!シウス、テメェだけは絶対いつか殺してやる!!」
シウス「さて、代わりに自己紹介してやる。コイツの名前はハル。部隊の一人だからよろしくな」
桜「わーい、よろしくね」
桜はシウスをぶん殴り、隣にいたハルに手を伸ばす。
だが
「……」
ハルは何も言わず、桜の言葉を無視した。
桜「ありゃりゃ」
「人見知りなのかな?……共感出来る」
桜「確かに、リーファも最初はこんな感じ……いやリーファはもっと酷かった気がする」
キナコ「ハル。こっちに」
キナコがそう言うと、ハルと呼ばれる少女はキナコの背中に隠れる。
キナコ「この子は私の友達ですのでお気になさらず。あ、ちなみに私の名前はキナコです。武闘大会での皆様の活躍を実況させていただきました。あんな凄い皆さんと一緒で幸せです」
桜「そ、そう?」
「悪い気はしないな〜」
アクト「おいモブ。お前らも喋る前に自分の名前を言え。モブの名前なんていちいち覚えられん」
モブと呼ばれた3人は顔を見合わせる。
アギト「アギトだ……です。ソフィア様に負けました」
「サウスだ。俺は騎士を志している。ユーリ様ならまだしも、他の貴族達の圧力に負けるつもりはない」
ネイト「ネイトです。よろしくお願いします」
モブ達の自己紹介が終わるが、もちろん興味がないので覚えるつもりはない。
肉壁くらいには考えてやるつもりではある。
桜「じゃあ次は私達かな?」
咳を立て、相変わらず奇抜なポーズをとり
桜「荒野に咲く一輪の花!!天真爛漫、驚天動地、支離滅裂と言えば私のこと!!今日もみんなに笑顔と愛を。みんなのアイドル桜だよ!!」
「「「「………………」」」」
「さすが桜だぜ」
あまりに素晴らしい挨拶に俺は涙を流す。
「リーファです。よろしくお願いします」
「「「「おお!!」」」」
「さすがリーファだぜ」
あまりに素晴以下略。
という感じで桜とリーファの自己紹介が終わる。
ちなみにリアクションをしているのはモブとうちの可愛いノアである。
さて、ご存知の二人の自己紹介が終われば流れ的に彼女がきてもおかしくないが
「すー」
俺の隣から寝息が聞こえる。
桜「あ、ちなみにこの子はアルスです。昨日は夜更かししたらしくお眠なので許してあげてね」
そこには俺にもたれ掛けながら爆睡しているアルスがいた。
そして必然的に、皆の目は俺の方へと向く。
仕方ないな。
アクト「俺様の名前はアクトグレイス。誰もが知る最上位の人間だ。帝国だろうと俺様に媚びへつらい、俺様を楽しませる努力だけしてろ」
この圧倒的なアクト節を披露し、満足気な俺。
だがいつもと違い、向けられるのは冷たい目線ではなく生暖かいそれであった。
アクト「どういうつもりだ」
桜「何が?」
アクト「何故俺様に学芸会で頑張る子供を見守る親かのような目を向ける」
「桜「だってアクト、アルスが起きないように小さな声でボソッと自己紹介するから、緊張して恥ずかしがる子供にしか見えなかったよ?」
なんだか居た堪れない気持ちになった。
アクト「まぁいい。俺様の偉大さなど言葉にせずともお前らは知ってるだろう」
「ああ、実際にそう思ってるよ」
アクト「誰だぁテメェ」
「サウスだ」
アクト「おい最初に名乗れと言っただろ。誰か分かんねーんだよ殺すぞ」
「アクト。貴殿のこれまでの悪行を許すことは俺には出来ない。だが、それはそれとして貴殿の強さや活躍もまた無視することは出来ない」
サウスは手を前に出し
「これからよろしく頼む」
「……」
え、モブなのにカッコよくないっすか?
なんだよお前、中々骨があるじゃねーか。
だがユーリが好みそうな性格のため最終評価はマイナスだ。
ユーリが惚れちゃったらどう責任取るつもりだ?
是非教えて下さい!!
アクト「俺様はお前らと馴れ合うつもりはない。余計な真似さえしなければそれでいい」
桜「翻訳すると、なんや兄ちゃんカッコいーじゃねーか。だけど俺の桜が惚れちゃいそうだから減点だぜー。ま、ピンチになったら命ぐらいは助けてやるよ、って意味だよ」
「そうだったのか」
「違うが!!」
桜は悪戯に成功したように小悪魔のような笑顔を向けてきた。
俺には効果抜群だったので暫く瀕死状態となった。
桜「さて、じゃあ次は気になる人物いきましょうか」
注目された少女は顔を赤くしながら口を開く。
ノ、ノアです「は、初めましてノアです。えっと……元々帝国生まれです。シウスさんに現地の案内と友好の証、それと人質?として連れて来させられました」
やっぱりシウスの野郎、間違いなく俺への対抗手段を用意してきてんな。
メンバーを見た時点で俺に喧嘩を売ってることは伝わってたがな。
シウス「いわばガイド役だ。先頭に関してはこの中で最弱だから、出来るだけ守れよー。あと死なせたら多分全員死ぬから気をつけろ」
アギト「何故死ぬんです?」
シウス「まぁ」
シウスはチラッと俺を見る。
俺も一瞬白目から戻り、シウスを睨みつける。
シウス「化け物を呼び起こすからだ」
「えぇ!!ノアが死ぬと化け物が呼び起こるんですか!!」
アギト「本人が知らないみたいですが」
シウス「どっちにしろ真実を知る頃にはみんな死んでんだ。死ぬ気で守れ、俺から言えることはそれだけだ」
と、まぁこんな感じで自己紹介が終わ……
アクト「おい待て。サムの野郎はどこだ」
シウス「ん?」
すると突然、シウスがとんでもなくゲスな顔を浮かべる。
間違いなく何か企んでいる顔だ。
「あーサムな。来てるぜ。ほらそこに」
シウスは指を指した方を見ると
「!!!!」
フードを被った誰かがコッソリと近くまで歩いて来ていた。
まるで正体がバレたくないような態度だな。
サムならどうせ顔だって変えられるはず……っておい待て。
おい……まさか嘘だろ……
???「あ、ども、サムよ」
桜「サム?誰か知らないけど、女の子で合ってる?」
???「そ、そうね……。女よ私は」
「おい待てシウス。どういうつもりだ」
「はぁ!?なんでアクトグレイスまでここに!!」
俺と彼女は同時にシウスに向かって視線を送る。
どういうつもりだと。
シウス「や、やめてくれ。俺を笑い死にさせる気かよ」
「お前マジふざけんなよ!!」
「ちょ!!扱い!!私これでもあんたの上司よ!!」
「一回表出ろや!!」
「ぶん殴ってやるわ!!」
シウス「まぁ落ち着けよ。ここで目立ってもいいことはないだろ?」
王女様
「こんの」
そう、サムを名乗って登場したフードさんはおなじみの俺の愛しい人。
「全部終わったら絶対処刑してやる」
元王女にして現国王、アイリーンその人であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます