第166話
その後、桜は凄い怒られた。
危ないわアホ!!
って感じだ。
実際は、多少本気出したモードの俺じゃないと桜にダメージは与えられないのだが、俺としても危ないから是非とも反省して欲しい。
ちなみに何故桜が制服を取り替えてたのかと言うと、結界が壊れると最後に話し合いが出来ないからだそうだ。
別にいつでも話せると思うのだが
『前の試合のアクトがイケメン過ぎてつい……』
と言っていた。
ちょっと恥ずかしかった。
「それにしても……まっずいなー」
何がまずいって、桜の話を要約すると
『アクトって、私達助ける為に死にそうだから邪魔してもいい?』
という内容だ。
俺のヒロインを助けるという道に、邪神教のみならず桜まで立ちはだかってしまった。
だけど桜も気付いているのだろう。
俺の動きを制限するということは、その分誰かの存在を蔑ろにするということ。
俺を取るか、名も知らないヒロインを助けるか。
その問いに対して俺はこう言った。
『俺みたいに好きにしたら?』
すると桜は
『オッケーじゃあ邪魔するけど、ギスギスはしたくないから今まで通り過ごそうねー』
と返答した。
別に真のように忌み嫌われたわけじゃない。
俺が大切だからこそ、俺を邪魔したいという話だ。
「複雑だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「アクトが壊れちゃったぞ」
「助けてくれルシフェル。俺は一体どうすればいいんだ」
泣きつく俺にルシフェルはめんどくさそうに対応する。
「とりあえず今は準決勝に上がることを考えたらどうだ?」
「て言ってもな。正直ノルマは達成したし、これ以上はもう何も出来ないと思うんだよな」
現在のポイントだが
俺 2P
ユーリ 2P
カーラ 1P
リア 1P
ソフィア −1P
桜 −1P
リーファ −2P
銅像 −2P
といった感じだ。
「……」
いや俺凄くね?
いや凄いのはルシフェルなんだけどな。
それにここから怒涛の連敗が待っているわけでもある。
だけどやっぱり凄いと思うんだよな〜。
「もしかしたらだけど、このまま単独トップに立ったりなんかし」
◇◆◇◆
「参りました」
試合開始一秒で俺は敗北を認めた。
「なんじゃ面白くない。せめて足掻こうとせんか」
カーラは興醒めとばかりに不満を表に出す。
「お前相手はこれが一番だ。下手して呪われでもしたら面倒だしな」
「なんじゃ、バレておったのか」
カーラは闇魔法を閉じる。
案の定俺に何か仕込む予定だったらしい。
どうせ俺が勝ちそうなところを邪魔する気だったのだろうが、そうはいかない。
「じゃあ俺様は昼寝の続きをするか」
俺は大きな欠伸をしながら来た道を戻ろうとすると
「何を言っておる。まだ試合は続いておるぞ?」
カーラが意味の分からないことを言い出した。
「は?だから俺様はさっき降参と」
「アクト、まずいぞ。闇魔法でアクトの声が届いてないぞ」
ルシフェルが慌てた様子を見せる。
確かに闇魔法なら声を届かせないなんて芸当可能だが、それはこの場では絶対にありえない。
「いやいや、エリカがいるのにそんなこと出来るはずないだろ」
俺の呆れた物言いに対して、ルシフェルは証拠とばかりに上を指差す。
「……」
空を見上げると、黒い雲によって世界が覆われていた。
あれは間違いなく、俺のよく知る闇魔法そのものであった。
「……いやいや、エリカがいるのにそんなこと出来るはずないだろ」
「現実を直視した方がいいぞ」
観客からの視線も遮られ、声も届かない。
完全に隔離されてしまった。
「かなり骨が折れたの。聖女にバレずに少しずーつ魔法を展開するのは」
「他の連中は俺様達が戦ってる映像でも見てるのか?」
「そうじゃの。まぁどうせ直ぐにバレる。せいぜいもっても一分じゃろ」
「目的はなんだ。悪いがお前を満足させる力は今の俺様にはない」
「分かっておる。今はただのお喋りの時間じゃ」
お喋り?
「意外そうな顔をするの。なんじゃ、妾のことを戦闘民族か何かかと思っておったのか?」
「いや別に、むしろお前が戦闘よりもこう言った時間の方を好むことくらいは知ってる」
彼女にとって人生は暇潰しだ。
だから誰かと語らう時間は彼女にとって、とても大切な時間だ。
ゲームでカーラの言っていた言葉を思い出す。
『誰かと喋るのは好きじゃった。誰かと一緒におると、妾を縛る時間という概念を一時忘れられる。そしてその楽しい瞬間を終わらせるのもまた、時間じゃった』
あまりにも常人からかけ離れた彼女だが、その奥には深い人間味溢れている。
その姿は何度見ても美しく、気高く、それでいて哀らしい。
……あっ、ヤベ、泣きそう。
「なんじゃ、そんなにあの雲が気になるのかの?」
「ああ。少し雨が降ってるみたいでな」
「雨は降っておらんが?」
カーラは不思議そうにするが、まぁよいと話を戻す。
「さて、お喋りと言っても長話は出来ん。端的に言うとじゃな」
カーラはいつも通りな態度で
「邪神が復活しおった」
衝撃発言を繰り出した。
俺はルシフェルに目を向ける。
ルシフェルは物凄い勢いで首を横に振る。
何も知らないという意味だろう。
俺はとりあえず話を合わせる。
「邪神教がやったのか?」
「いや、それなら妾や主に情報が来るじゃろう。それが無いということは、完全に妾達の知らぬ第三者……というより、この前妾が殺った人間じゃろうな」
「生きていたのか?」
「おそらくじゃがの」
カーラが嘘を言っている様子はない。
そもそもそんな必要がないしな。
だが話が噛み合わない。
ルシフェルは俺の真横にいる。
俺の知らぬ間に消えた様子もない。
「何が起きてる」
考える時間はない。
「最近は奴からの監視がうざったくての。聖女の力でやっと脱出できた」
「なるほど」
もしやカーラが武闘大会に出ようとした理由の一部はこの為だったのか。
そして何より、カーラの力でも骨を折る相手だということも分かった。
「邪神が復活したなら何か願ったはずだろ?内容は分からないのか?」
上空から光が差す。
あれはエリカの光魔法か。
タイムリミットだな。
「さすがの妾でもそこまでは分からん。それを知る為に妾もこの話を主にしたのじゃ」
頼られている。
そう解釈してもいいだろう。
「じゃが一つだけ、最後に妾の持っているカードを渡すとなると」
そして伝えられる衝撃の事実。
「邪神教の頂点に君臨している存在こそが、現在力を得続けおる邪神そのものということじゃ」
◇◆◇◆
「あーもう意味分かんねー」
俺は待機室のベットに倒れ込む。
どういうことだよマジで。
「大丈夫か?」
ルシフェルが心配そうな目でこちらを見る。
「……ああ、大丈夫だ」
馬鹿野郎。
なーにルシフェルを疑ってんだアホんだら。
そもそもルシフェルは契約を結ばれちまえば、ルシフェルの意思を無視して行動するんだ。
俺がどうこう思ったってどうしようもないだろ。
「……なぁルシフェル。今のルシフェルってなんなんだ?」
「??」
ルシフェルはどういうことだと首を傾げる。
「難しい言い方して悪かった。今のルシフェルって復活してる状態であってるんだよな?」
俺と契約を結ぶという形でこの世界に存在しているわけだからそういうことだよな。
「ん?我はまだ復活していないぞ?」
「え?」
どゆこと?
「だ、だってお前、今俺の目の前にいるだろ?」
「復活と契約は別物だぞ?復活とは魔力体でなく、本体自体が世界に行くことだ。我はあくまでアクトと魂で繋がっているだけで、復活はしていないぞ」
ますます混乱してきた。
「じゃ、じゃあその復活した邪神って、お前の本体とかじゃないよな?」
「た、多分違うと思うぞ……多分……」
契約は絶対だ。
もしルシフェルの本体がこの世界に舞い降りて、契約を結ばれた場合
「もしかしてだけど」
「我の体が勝手に動いている?」
「「……」」
うん
「「まっさかー」」
ルシフェルに自分VS自分みたいな展開が起きるはずもないか。
ルシフェルってマスコット枠だし(違うぞ!!)。
「だとしても結局、答えは謎のままだな」
「あの吸血鬼、間違った情報を掴まされたんじゃないのか?」
「いや、カーラは一見可愛くてキュートでポンコツに見えるかもだが、実際はマジで賢い。おそらく色々と検証した上で、邪神が復活したと言い切ったんだと思う」
邪神の復活は間違いない。
だがおそらく、この情報には俺達と真実との間に認識のズレがあるような気がする。
「そもそも邪神が大っぴらに動いたなら間違いなく異変が起きる。それがまだ発生していないということは、まだ完全な復活じゃないんだろう」
カーラも力を蓄えている途中的なこと言ってたしな。
となるとやはり、一番手っ取り早いのはあのビクティとかいう男を倒して情報を聞き出すことだな。
それにしても
「邪神が邪神教のトップってどういうことだよ本当に」
ただでさえ最近は色々と謎が多いのに、これ以上面倒事起きないでくれよ。
てかこの世界厄介事多すぎるって。
「はぁ……ヒロインを残して世界滅びんかな?」
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