第148話
第三ブロックが始まった。
俺の知ってる奴はいない。
興味もないので学園の屋上でボケーっと暇を潰す。
その後運営が回らなくなったのか、ユーリとリアは連れていかれた。
そもそも俺のような不良生徒と違い、二人は皆に慕われる真面目さんだ。
悪い奴がモテる理論はまさか正解だったのか?
「う〜、こんな太陽が近いと日焼けしちゃうぞ」
「お前の体は魔力で出来てるから焼けねぇよ」
同じく日向ぼっこに興じるルシフェル。
太陽がジリジリと俺の肌を焼くのが分かる。
「なぁルシフェル、覚えてるか?」
「毎回思うが、その質問世界一意味がないと思うぞ」
「もし契約したら、自分の意思と関係なく世界を滅ぼすってやつだよ」
「あー。……あ?」
「おい」
「た、たしかに忘れていたが事実ではあるが、確かに願われると我は世界を滅ぼすな」
「そうだよな」
あー嫌だな。
この憶測が外れていることを本当に切に願うよ。
「ん?」
すると、太陽の光がかき消される。
「お付き合いしても?」
ヒラリと白いワンピースが揺れる。
麦わら帽子を被った少女がそこに立っていた。
「海賊王にでもなるつもりか?」
「海賊にはなりませんが、子供達と海賊ごっこならしたことありますね」
「聖女が何やってんだよ」
エリカは自然と俺の横に座る。
汚れが気になるのでブルーシートを持ってきていて正解だったな。
後は
「せっかくの良いお天気ですよ?」
「知るか。俺様が眩しくなってきたんだよ」
魔法で太陽を遮る。
エリカの白い肌が焼けてしまったら俺は責任が取れない。
「いえ、責任は取ってもらいますよ?」
怖いよ。
色んな意味で怖いよエリカさん。
「解説はどうした」
「少し事情が出来たので抜けてきました」
「何かあったの……なんだその顔は」
「いえ」
ニマニマと俺の顔を見るエリカ。
何故だろう。
可愛さと少し憎たらしい気持ちが湧いてきたな。
「安心して下さい。今回は何もないですよ。私を信じて下さい」
「おま!!話聞いてたのか!!」
一気に顔が赤くなる。
「カッコよかったですよ」
「わ、忘れろ!!」
「いいですよ」
「クソ!!……え?」
忘れるの?
「はい、今忘れました」
「いや何言ってんだよ」
元々見た目と違いお茶目なエリカだが、なんかいつもよりレベルが低いというか……いや何を求めてるんだ俺は。
「忘れたんです、いいですね」
「あ、ああ」
まぁ都合がいいのは俺の方だからいいか。
「それじゃあ何しにきたんだ。わざわざ抜け出して、俺様の場所に来た理由は」
「リアさんの件です」
「……」
なるほど。
「本人に直接聞けばいいだろ」
「いえ、忙しそうでしたので」
「俺様も忙しいんだよ!!」
「でも日向ぼっこしてましたよね?」
「光合成の可能性の追求してたんだよ!!」
「……答えにくいこと、なのでしょうか?」
エリカは少し不安そうに尋ねる。
「別に。最初に言っただろ、本人に聞けって。この件に関しては、俺様の口とリアの意見が違うからな」
「意見が違うと言いますと?」
「だからそれは本人に聞け」
「すみません。ですが……」
「お前の心配も分かるが、お前はリアとの付き合いはまぁまぁあるだろ。なら、分かるはずだ」
「……ふふ、やっぱり兄妹揃ってお優しいですね」
エリカは風で帽子が飛ばないよう抑える。
「先ほどのリアさんのものは、下手をすれば辺り一帯が吹き飛ぶ威力でした」
まぁ神の力だしな。
かなり弱体化していても強いことは俺が一番身に染みている。
「ですが被害は結局ゼロ。あぁ二人ほど少々精神にダメージを負いましたが、軽いトラウマで済むそうなので」
「それは本当に大丈夫なのか?」
トラウマを軽くみちゃダメだろ。
特に
「……」
「時に、精神の弱さを自覚させてくれるものが恐怖です。それによって潰れるか、はたまた乗り越えられるかが大きな人生の分岐点となる。そう思いませんか?」
「……同意見だ」
「そしてリアさんは父親というトラウマを刺激された。ですが、彼女の優しさが被害を抑え込んだ」
エリカは立ち上がる。
「私は時々この地位が憎く感じる時があります。もっと自由に生きられたら、こういった悩みを負わずに済むんでしょうね」
「……」
もしリアが人類の敵になるなら、エリカはその敵になる。
絶対にそんなことは起きてはいけない。
だからエリカには言ってやらなきゃいけない言葉がある。
以前ならその役目はあいつのものだった。
俺みたいなラスボスが絶対に言わないような、寒い台詞を言わなきゃいけないのに。
「お忙しいところ失礼しました。キナコさんの場所に帰りますね」
エリカは笑顔を浮かべるが、どこか悲しそうな表情で立ち上がる。
やめろよ……
俺はそんな顔を君に
「いつかは分からん」
君に
「だがいつか」
して欲しくないんだ。
「誰かがお前を救うだろうよ」
エリカは扉の前で立ち止まる。
そして誰にも聞こえない程小さな声で
「待ってます」
扉は静かに閉まった。
◇◆◇◆
「さぁ第一と二に比べてあまりにも普通、故に見応えがあった第三ブロックを終えました」
軽くディスってるよな、あれ。
「そして第四ブロックでは、多忙のエリカ様に代わりこちらの方に来て頂きました」
「第二ブロックで粗相をしたリアです。どうぞよろしくお願いします」
本当にね。
「いやぁ第二ブロックでのリア様は凄かったですねー。正に圧倒、正に最強、これぞ三代貴族様です」
「キナコさん、そう褒めても何も出ませんよ」
「えーと……これは?」
「褒めても何も出ませんが、先に賄賂は渡しておくべきかと」
「あの……色々言いたいですが、一応まだマイク入ってますよ?」
「あぁ問題ありません。国中へ繋がる映像は既にジャックしてるので、多少バレても問題ありません」
わぁ、あの子やっぱ将来ビッグになるわ。
「という茶番を終えたところで、早速第四ブロックを開始したいと思います!!」
ちなみに茶番の半分は本当である。
「それでは選手の入場です!!」
キナコが叫ぶが
「……おや?」
選手が誰一人入ってこない。
「えっと、少し失礼」
マイクが切れる。
ザワザワと周りが騒めく。
「絶対あの子じゃん」
原因を即座に察した俺は、今回の選手への祈祷を行った。
「はい……はい、分かりますした。えー皆さんお待たせしました。これから選手と一緒に、特別に参加資格を得た方が入場されますので、ご了承の程よろしくお願いします」
キナコは丁寧に説明をし
「改めまして、選手入場です!!」
今までの乱雑ではあるものの、自信に溢れた様子で入ってくるものとは違い、どこかオドオドしい様子で選手が入ってくる。
その異常さに、観戦する生徒の間で緊張が広がる。
そしてついに
「それでは注目の選手は」「もちろん妾じゃ!!」
いつの間にかマイクを奪い取る自由人。
「さすがだ」
俺は涙した。
ある意味で、何をしでかすか分からないという期待を裏切らない。
「ん?リアいたのか。妾が活躍するところ見ておくのじゃよ」
「はい、頑張って下さいカーラちゃん」
リアはわざとらしく、カーラと自身が友好な関係であることを示唆した。
そして、カーラの背に生えている翼は亜人である確かな証明だった。
「さて、主ら。不幸にも妾と戦うこと実に悲しく思う。じゃが、今日は天気が良い。妾を倒すには絶好のチャンスと言えよう」
カーラはゆっくりと、ゆっくりと地上へと降りる。
その姿は悪魔か、はたまた死神か。
観客含め、全ての者がただその美しさに目を奪われた。
そして
「へ?」
「何を呆けておる」
目にも止まらぬ速度で攻撃された一人が、空中へと打ち上げられる。
「戦いにカウントダウンなぞ優しいものはないぞ?」
カーラはまた一人の選手を倒す。
「さぁ、全力でかかってくるのじゃ。つまらない者から順に殺していくのからの」
素敵な素敵な殺戮ショーが始まるのだった。
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