第135話
「ソフィア?」
「また新しい女の子を捕まえようとしてる?」
「え?は、はぁ?俺様をまるで女遊びしているみたいに言うな」
「だって事実でしょ。しかも可愛い子ばっかの面食い野郎の癖にあたかも悪くないって雰囲気出してるのムカつく」
「グッ、なんかお前いつにも増して棘があるな」
「う、うるさい!!だ、だって最近はユーリもあんたの話ばっかするし、私だけ置いてかれた感じがして……」
「……よく分からんが、リーファ」
「な、何よ」
「お前はお前のありのまま(俺を嫌いなまま)でいろ。他人の評価や考えなんて気にするな」
「え、あ、うん」
「それじゃあ俺様は行くからな」
「あ、じゃあね」
「……ふん」
俺はそのまま学園へと向かった。
わけもなく
「一時的にだが、俺の記憶から抜け落ちていた」
「すまん。我の力不足だぞ」
「いや、ルシフェルは悪くない。むしろ思い出せただけでもありがたいもんだ」
俺は真っ直ぐとリーファとすれ違った道へと向かう。
目的地はみんなご存知ダサい店名で有名な例の
「おや、いらっしゃい。今日は学校では?」
そこには一見ただの優しそうな老婆の姿。
腰を曲げ、柔和な顔で俺を迎える。
「チッ、そういう小芝居は求めてない。分かってるだろ?」
「はぁ、神は常に暇を持て余してるんだ。もう少し私の余興にでも付き合え、人間」
そしていつの間にか俺は知らない場所にいた。
白い空間。
どこか神聖さと、それ以上の空っぽな雰囲気は、どこか寂しさを覚えた。
そして老婆の姿は徐々に徐々に変化し、一つの新たな姿へと変貌した。
「へぇ、神っぽいこと出来るんじゃねーか」
「神っぽいどころか私は神だ。本物をあたかも偽物のように呼ぶな」
「はん、ババァの姿で地上の人間を親気分で見てるような人間クセェ奴が神なんて世も末だな」
「それを言うなら君のとこのその神はなんだい?アイスを食べ過ぎて頭を痛めてる姿は神と呼べないだろう」
「ルシフェルが神なわけないだろ?」
「我は邪神ぞ!!」
「ハハ、ルシフェルも冗談が上手くなったなぁ」
「冗談じゃないぞ!!」
マユと俺は二人でルシフェルを笑う。
ルシフェルも怒った様子で頬を膨らませる。
いやぁ、なんとも平和な雰囲気だ。
「で、お前が犯人か?」
「そう睨むな。言っただろ?君は唯一私達神を殺すことの出来る存在だ。そんな危険な存在に喧嘩を売る程の度胸も理由もないよ」
「だが似ている。状況が限りなくあの時と同じだ」
「その通りだね。でも一時期君もことの顛末を忘れていただろ?私の力では君の記憶に干渉出来る程の力がないことは証明済みだ」
「力が増しているかもしれないだろ?」
「まぁ確かにその通りではあるが、それは君にも同じことが言えるだろう。まぁそうカリカリするな。少なくとも犯人は私ではない」
マユは一切の動揺を見せることなく、その姿は凛としていた。
「じゃあ誰がやったんだ」
「少なくとも私よりも上位の存在だろうな」
「お前らが関わっていることは確定か」
「そうだろうね。逆に言えば、それくらいでないと君に干渉出来る存在が最早いないことへの証明でもあるけどね」
「俺様……アクトグレイスにそんな力があると?」
「力が戻ると同時に見えてくるものがある。確かにアクトグレイスという人間の力は雑魚だろうな」
「なら」
「だが、君はアクトではないだろう」
「……」
いや、神相手だ。
自分が他の世界から来たことくらい知っていて当然か。
「詳しいことは私もまだ分からない。それ程までに君の施されている力は常軌を逸している」
「どういうことだルシフェル」
「わ、我も分からないぞ」
「向こうも相当困っただろうね。この世界の法則すら超える君の存在。それを知ってしまった人間をそのままにしておくわけにはいかない」
もしや
「ソフィアは俺様のことを」
「天才故だろうね。気付いた真理が領域を過ぎてしまった。そんな者をみすみす放置する程彼ら彼女らは生半可な気持ちで世界を管理していない」
話が難し過ぎてよく分からないが、これはかなり世界の根幹に触れているのでは?
いや、どうでもいい。
今は
「それで、どうすればソフィアを助けられる」
「借り、と受け取っても?」
「違うな。俺様はお前の娘と妹を救っている。これは借りを返してもらうものだ」
「ふむ、確かにその通りだな。私も神の端くれだ。願いの供物を捧げられたなら、返すのが通りか」
マユは何もない空中に座る。
「救出方法は簡単さ。君が奴らを倒せばいい。そしたら彼ら彼女らもビビって嫌な顔で返してくれるだろうさ」
「俺様が神に勝てると?」
「さっきまでの威勢はどうした。神である私を殺そうとした君が臆するとは思えないね」
「俺様は真面目な話をしている。他に選択肢がないなら負け覚悟でも挑む。だが、目的は奴らをぶっ殺すことだ。勝つ手段くらい揃えるのが普通だろ」
「正論で耳が痛いね。リーファの時は顔を真っ赤にして暴れた君とは思えないよ」
いや、俺だって今すぐ助けてあげたい。
だが多分まだ大丈夫だと思う。
特に今の話を聞いたら尚更だ。
「その奴らは俺様にビビってるんだろ?だからわざわざソフィアを殺すのではなく抹消した。記憶から、世界から消えるように」
「必死だっただろうね。彼女に手を出せば君が飛んでくる。かと言って放置することは世界の法則が許さない。板挟み状態で同情を禁じ得ないよ」
「俺様が忘れたら本望。だが、もし記憶が戻った時に言い訳が付くように殺しはしない。奴らは全滅することをどうにか避けているんだろ?」
「聡明だね全く。私も同じ結論だよ。だが結局原因は君であることを覚えて置いた方がいい。君の存在のせいで奴らは動く必要があるのだからね」
「あぁ、そうだな」
確かにその通りだ。
ゲームでこんなイベントはない。
つまり、ソフィア今の状態は完全な俺のマッチポンプなわけだ。
だが
「俺のヒロインに手を出したんだ。ただで済むと思うなよ?」
◇◆◇◆
<sideソフィア>
「……ここは……どこでしょうか」
「答えることは難しいな。今の人間では辿り着けない領域であることは確かだ」
「あなたは……誰しょうか」
目を覚ますと、真っ白な空間にいた。
周りの景色はハッキリとボヤけている。
目の前に奥があり、下に天井がある様子は、私の平衡感覚を奪うには時間を有さなかった。
「逃走は出来ないわけですね」
「すまないな。我としても人間に干渉することは不本意だ。だがお主は少し知り過ぎた」
なるほど、そういうことですか。
私は自身が今の状況にいる理由を表面的に理解する。
「名、だったな。我の名はプロパ……いや、我の名などどうでもいい。好きに呼んでくれ」
「ではプロパンさん。私はーー」
「待て、やはりプロパトールと呼んでくれ」
「分かりました。ではプロパンさん」
「この人間話を聞かないな」
「アクトについて教えてもらえますか?」
プロパンさんの顔が強張る。
「それは無理な相談だ」
「ですが私がここにいる理由は」
「お主は随分と肝が据わっているな」
「はい、研究者が知を求めるのに臆する必要がありますか?」
「いや、全く持ってその通りだ。我も同じようなものさ。だが、これ以上お主に情報を吐くのはあまり良い決断とは言えない」
「そうですか」
理由は分からないが、この何かからはそれ以上アクトに関することは聞けないと分かった。
「だがそうだな。それ以外のことなら教えてやれんこともない」
「では、魔獣についても?」
「構わん」
「では」
こうして私は楽しく何かとお喋りするのでした。
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