第133話

「……」



 ……



「……」



 ……



「……」



 はぁ



「何……やってんだ俺……」

「な!!そんなコンボズルだぞ!!」



 絶賛疑心暗鬼中の俺は部屋で温かいベットの中にうずくまる。



「死にたい……」

「死にたいぞ……」



 オンライン対戦で煽り厨に泣かされたルシフェルも鬱に陥る。



「どうしてあの時あんなことを……」

「どうしてあの時決められなかったんだぞ……」



 昨日の出来事を思い出し、嬉しさと同時に何やってんだ俺という感情が押し寄せてくる。



「気の……迷いだったんだ」

「手元が……狂ったんだぞ」



 ……



「おいルシフェル。俺がセンチメンタルな気持ちになってる時にしょうもないことで邪魔するな」

「何を言うんだアクト。我だってこの上なくセンチな気分だぞ」

「ゲームで負けただけだろ?何がセンチな気分だ」

「な!!ば、馬鹿にしたな!!」

「おう、しましたとも。この上なく貶しましたとも」

「ム、ムッキー!!」



 いつの時代のキレ方だそれ。



「それを言うならアクトだってしょうもない悩みだぞ!!」

「は、はぁ!?どこかしょうもないって!!」

「だってもう取り返しのつかない連中を量産しておいて無理があるぞ!!」

「……グフッ」



 こ、こいつなんていう邪神だ。



 俺が気にしていることを見事にクリーンヒットさせやがった。



「ピンク髪の人間にアクトの妹、それからあのヤバいの。全部手遅れだぞ」

「おいルシフェル。いくらお前といえどアルスのことをヤバい呼ばわりは許さーー」



 プルプルプル



「……」

「……」



 電話を取る。



「呼んだ?」

「呼んでないです」

「そう」



 プツン



 ツー ツー



「ヤバ」

「アクトも認めてるぞ」

「でも可愛い」

「色々手遅れだぞ、みんな」



 俺はしばらくアルスと会話出来た余韻に浸るが



「いやだから何も解決してないって!!」

「もう諦めろ。あの後の様子を見れば、あの青髪のあれは奴らと同じ領域に踏み込んでるぞ」

「あー聴きたくないー。もう何も見たくないー」

「現実から目を背けても何も起きないぞ」

「本当に、何も起きないことが一番なんだけどな」



 夏休みが終わる。



 学園が始まれば怒涛の日々がまた始まる。



 しかも物語は中盤、つまりは



「敵が強くなり始める」



 という風に洒落込んでみたが



「正直負ける気がしない」



 だってなんかもうみんな強いもん。



 雑魚代表のアクトである俺でさえ強くなり始末は、この世界のインフレを感じる。



 最近みんな超パワー発揮し過ぎじゃない?



 人のこと言えないけどさ。



「考えると疲れるな」



 ボフンとベットに飛び込む。



 掃除は使用人に任せているが、埃ひとつ立たない。



 さすがだな。



「アクト、今何か落ちたみたいだぞ?」

「ん?なんだ?」



 ルシフェルはベットの下を指差す。



 覗いてみると



「なんかの機械か?」



 黒い機器が落ちていた。



 まさか



「俺の命を狙」

「お兄様!!」



 扉が開く。



「うお!!なんだリア!!」

「申し訳ございません。実は忘れ物をしていまして……あ、お兄様のお手にあるのは」

「あ、ああ、これはリアのだったのか」

「ありがとうございますお兄様。それでは失礼します」



 バタンと扉が閉められる。



「我が思うに、あれは」

「みなまで言うなルシフェル」



 俺はもう一度部屋を探索し、それ以上何もないことを確認する。



「大丈夫そうだな」

「愛が重いぞ」

「……ここいらで情報を整理しよう」

「情報?」

「ああ、これからの目的、それと」



 俺は大きな紙を広げ



「好感度表」



 ◇◆◇◆



 好感度  低



 リーファ 30点



・特に好感度を上げていない

・嫌いだとよく言われる

・めっちゃ可愛い



「嫌いだと言ってるしこんくらいじゃないか?」

「アクトは何も分かってないぞ」



 ノア 10点



・出会いから最悪

・契約と称して酷いことを何度もさせる

・うん可愛い



「ノアには確実に嫌われてるな。相当酷い仕打ちをしたから……ごめんよ……」

「アクトはやっぱり馬鹿だぞ」



 カーラ 1点



・多分次会った時忘れられてる

・てかなんか家にいないんだけどどこ行った?

・可愛いからいいや



「多分……気に入られてると思う」

「それでこの順位か?」

「そもそもカーラは俺のことを普通と違うモンキーとかいう感覚だろきっと」



 王女 0点



・色々酷いこと言った

・従者も脅してビビらせた

・うんと可愛い



「ないな」

「いやあの人間の反応的に……もうどうでもいいぞ」



 ここまでが好感度の低いヒロインズ。



 ハルのようなまだ接点という接点を持っていない子は省いている。



 判断のしようがないから。



 それにしても



「少ないな」

「多分もっと少ないと思うぞ」



 おかしい。



 自分でも何故このような結果になってしまったのか理解できない。



 その場の気分で行動した結果がこれなのか?



「ま、まぁいい。次だ」



 好感度 高



 エリカ 50点



・色々怪しまれてる

・態度に余裕があるのが丸分かり

・え?可愛すぎん?



「多分好きでも嫌いでもないな。アクトが急に変わって気になるだけだろ」

「ア、アクト。本気で言ってるのか?」

「は?本気も何も事実だろ」

「我はアクトが心配になってきたぞ」



 ソフィア 70点



・体の構造、ゲームならではの知識がバレた

・多分深読みで好感度上がってる

・可愛いし大きい



「少し高めに設定したな」

「適切だと思うぞ」

「ソフィアに関しては彼女の知的好奇心をくすぐり過ぎた。異性とか関係なしに一つの興味として好感が持てるのだろうな」



 あれ?



 こうして見ると少ないな。



「おお!!案外俺の計画は上手くいっていたのでは!!」

「目を背けるなアクト。四天王どころかそれらは雑魚モブだぞ」

「……次だ」



 好感度 バグ



 桜 1000000000000000000000000000000000



・いつの間にか好感度が終わってた

・自分でもどうすればいいか分からない領域だった

・でも可愛い好き



「なんでだ!!恥を忍んで100と書いたのに、何故こんなに0が増えてる!!」

「わ、我にだってわからないぞ!!」



 リア お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お



・ザンサが嫌いすぎて勢い余って色々してしまう

・元々昔優しかったアクトのせいで好感度が上がりやすかった

・可愛いが過ぎる



「ミーム感染か何かかこれは!!」

「最早数字ですらないぞ!!」



 アルス 愛してるわ



・今だに何故あそこまで好かれてるのか実はよく分かってない

・おそらく俺の知らないとこで俺のことを見られていたのだと思う

・ひたすらに可愛い



「おいこれもうドッキリだろ!!スタッフ出てこいよ!!」

「助けて神様!!」



 ユーリ 100点



・マジでなんであんなことしたんだろ

・アーサーの命の危機を救った時点で好感度は相当高かった

・もう可愛いーからなんでもいいや



「お、おお!!」

「変えってない、変わってないぞ!!」



 何故か二人で喜ぶ。



 運命を乗り越えた気がしたからだ。



「ま、待てアクト!!この字まだ第一形態だぞ!!」

「ラスボスか何かかよ!!俺の立つ瀬がないだろ!!」



 徐々に100の文字は変化していき



『どうでしたか?試作機ですが中々面白かったかと思います。リアさんに部屋に置いておくよう頼んで正解でした』



 字がどんどん浮かんでくる。



 これは



「ソフィアか?」



『これをアクトが読んでいる頃には、私はこの世にいない……というわけではありませんが、おそらく自由の身ではない可能性があります』



「まさかソフィア、気付いてたのか?」



『これは書かれた情報をデータを元に面白おかしくするものです。ただメッセージをお伝えするのは申し分ないので付けておきました』



「小粋なことするな」



『さて本題です。ただいま幽閉中となっているであろう私を助けて下さい。以上です』



「随分と……あっさり返ってきたな」

「アクトは分かっていたのか?」

「まぁな」



 やはりというか案の定というか



「随分と速い行動だな」



 標的が動いた。



 その事実がよくやくこの手に掴んだわけだ。



「そうだな。しんみりしている時間はない」



 嫌われるかどうかよりも先にやらなければいけないことがあるではないか。



 そうだ、変わらない。



 俺は今まで通りただ



「助ける」



 部屋を出ようとした俺を



「アクト、まだ残ってるぞ」

「何」



 ルシフェルが引き止める。



 メッセージはまだ続いていた。



『あ、ですが別にまだ助けていただなくて結構です。個人的にもう少し魔獣の件で実験したいので、幽閉生活は案外いい感じになるでしょうし』



 そこにはぎっしりと出鼻を挫く発言が書きなぞられていた。



「……ソフィアらしいな」

「大丈夫なのか?」

「問題ない。命に別状はないのは確かだ。だが、精神がどうかは分からないがな」



 だが彼女としてはこの生活に触れてみたいのがあるのだろう。



 真に向き合うべき時が来た、って感じだろうな。



「アクト」

「ああ、そうだな」



『学園でまた会いましょう』



 ああ、そうだな。



「勝負といこうか、エムリル」



 救済√6



 ソフィア マーリン

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