第115話
「い、家!!」
「そうじゃ。妾は元々城に住んでいたが、ここに引っ越すにあたり金銭を用意していなくてな。まさかこんな小さな娘が野宿などありえないじゃろ?」
小娘(X14歳)が野宿か。
カーラは吸血鬼だが、なんか色々超越して食事が無くとも生きていける為、血は最早彼女にとっては嗜好品の一つになっている。
そして戦闘面はご存知の通りめちゃ強。
だから絶対に野宿しても安全だが、彼女を野宿させるのは俺の心が許せない。
「いいだろう。ただし、家にいる間はルールくらいは守ってもらう」
「大丈夫じゃよ。妾は基本的に寝ておるから」
やはり掴みどころがないというか、無気力な感じが伝わるな。
この性格故に、ゲームでも苦労したな。
カーラはかなり難易度の高いキャラのため、攻略ルートに入れなければ確実に邪神教として相対する。
その時にカーラから情報を引き出し、次の攻略の為にメモしたのはいい思い出だ。
「それで、お主は何をしているのじゃ?」
「俺様は邪神教として活動してんだ。邪魔するんじゃねーぞ」
「ふむ」
カーラは納得し
「なら、妾も連れて行け」
「は?」
「仮にも妾も邪神教じゃ。なら、問題なかろう?」
「いや確かにそうだが」
俺が今からするのはただの嫌がらせだよ?
今後ヒロイン同士の優しい世界を見たい俺としては、カーラに対して悪い印象を抱かれるのは芳しくないんだよな。
「やっぱりダメだ。この作戦は緻密に計算されたものであり、お前に妨害されるわけにはいかない」
「そうか」
「あ、ああ」
なんだ?
案外あっさり引き下がったな。
「それじゃ、妾は少し寝ておるから、終わったら呼んでくれ」
「わ、分かった」
そのままカーラはプカプカと浮かんでいった。
「ま、まぁいいか」
疑問は残るが、それで彼女が引き下がってくれるなら本望だ。
「えっと、順番的に次は……」
頭の中に赤髪の化け物が通り過ぎていった。
「よし、リーファか」
◇◆◇◆
「ターゲットを補足した」
道端で鼻歌を歌いながら歩くリーファを発見。
「対象、周りに誰もいないと思い、全力で歌っております」
人が通りかかったら顔真っ赤になるんだろうな。
「何故対象はこんなにご機嫌なんだ?コードネームL、教えてくれ」
「きっと美味しいものを食べたからだぞ。我も美味しい料理を食べた後はいつもあんな感じだ」
「L、情報提供感謝する。明日焼肉に連れてってやる」
「我カルビが食べたいぞ!!」
ま、状況的に桜かリアに会って嬉しかったとかだろうな。
あの子人見知りなのに寂しがりやだから。
「だがよく考えると、以前リーファにはやることやったな」
店の前で起こした事件がある手前、わざわざここで好感度を低下させる必要はないし、そもそもそも俺はリーファに嫌われている。
ここで下手なアクションを起こして不測の事態が発生する方がよっぽど危険ではないか。
「それになんか楽しそうだし、邪魔するのも何だからな」
「じゃがそれだと面白くないの」
「は?」
突風が吹いたかと思えば、カーラは凄まじい勢いでリーファの前に姿を見せる。
「誰!?」
リーファは急に現れたカーラを前にし、大きく後ろに下がる。
「クックック、妾の名前はカーラ。邪神教幹部2席にして、なんか凄い強い奴とは妾のことじゃ」
「邪神教!!」
リーファは周りに目線を送る。
緑の目が周囲を見渡すと
「仲間もいるの」
「ほう、お主中々やるな」
身を隠した俺だったが、壁の向こう側を透かすようにリーファは捉える。
「簡単だよ。足が出てるからね」
「あ」
……れ?
俺の足って……
「ふん、バレてしまっては仕方ないな」
「あ!!あの時の!!」
「クックック、そう、俺こそが邪神教幹部7ーー」
「待て人間。なんだその笑い方は」
「お、俺がどんな笑い方だろうと関係なーー」
「妾の真似よな?」
「……」
「なんじゃお主、まさか妾のファンだったのか?」
「分かった。笑い方を変えよう。グヘヘへ、俺こそが邪神教幹部7ーー」
「アクトと同じ笑い方!!」
「してねぇから!!」
え、俺そんな笑い方するの?
ネタですることは幾たびかあったが、笑い方普通だよ俺。
「私達のことを遠目で見る時いつもそんな笑い方してる。普通に気持ち悪いけど、邪神教にされるのはもっと嫌」
「グフッ!!」
なんかアクトとしてではなく、本来の俺が気持ち悪いと言われたようで精神的にダメージを受けた。
「それにしてもエルフよ。お主中々美味しそうじゃの」
「俺もそう思う」
「まさかあなたも亜人!!」
「そうじゃよ。モデルは吸血鬼じゃ。カッコいいじゃろ?」
「はい!!」
「だから邪神教に入ったの」
「違うと思います!!」
「妾がそのような些細な問題で邪神教に入ったと?舐められたものじゃな」
「是非舐めたいです!!」
「じゃあどうして?」
「ただの暇潰しですね」
「答えてやってもよいが、今は興が乗らん。お主が妾を楽しませると言うのなら、喋らんこともない」
「俺が楽しませてましょうか!!」
「いいよ。そういう簡単な方が分かりやすくていいしね」
空気がピリつく。
魔力の異常発生により姿を変えた二人の嵐のような魔力が吹き荒れる。
どうしようか。
このまま二人が争うのは俺としては断固としてやめさせたい。
だけど完全に乗り気になっている二人を止めるのなんて
「それじゃ」
「いざ尋常に」
「「勝負!!」」
「あ、UFO」
「「え!!」」
どっちも頭はいいだろうに
感情で動くタイプの二人は同時に何もない空を見上げる。
その隙をついて
「ノア」
「え、あ、はい」
逃げて
◇◆◇◆
ノアには悪いことをしたな。
急に電話をかけてのお願いだし、彼女も今頃グッタリしているだろう。
ある意味嫌な役割としては合格だけどな。
「なんじゃ。せっかく楽しくなろうとしておったのに」
「知るかよ。俺様には関係ないことだ」
「それにここはどこじゃ?」
「俺様の家だ」
「まさかと思うが、妾にここで寝てろと?」
「大人しくしてろってことだ」
「なんとも身勝手じゃの」
「おまいう?」
とりあえず客室の高いベットでも見せれば、一日は起きないだろ。
「何者だ」
「へ?」
玄関から家に入ろうとすると、使用人に止められる。
「な!!邪神教ではないか!!」
「あ、やべ」
アクトスイッチが入ってて気付かなかった。
俺の姿は今グレイムではないか。
「ということは、隣にいるその少女も」
「うむそうじゃ。妾こーー」
「ドヒャヒャヒャヒャ、この幼気な少女の命が惜しいなら、お宅の頭を出しやがれ!!」
凄いな俺。
今日で何回人脅してんだろ。
邪神教の鏡じゃん。
「リア様はまだ出掛けておられる。今は不可能だ」
「おっと、そいつはいいことを聞いたぜ。このまま俺がここを占拠し、邪神教のアジトにしてやるぜ!!」
よし
このままわざと敗北し、カーラを上手いこと保護させよう。
客室に行ったカーラが起きる頃には俺もアクトの姿に戻れる。
そうなれば上手くカーラの存在は秘匿できるはずだ。
己の失敗は己の手で回収するのだ。
「よーし、それじゃあ早速ーー」
「あなた」
「もう次は何だよ!!」
声のする方を向く。
まだ昼間にも関わらず、何故か寝具を抱いたソフィアが立っていた。
「何をしようとしているのですか」
「こっちの台詞ですけど!!」
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