第93話

「うっふっふっふ」

「俺様を解放しろ!!」



 桜に拘束された俺は桜の家の中に監禁される。



 魔法を使えば一発だが、今はエリカの魔法で魔法を発動出来ない。



「俺様にこんなことして許されると思ってるのか!!」

「それが思ってるんだよー」



 桜はニシシと笑う。



「以前までのアクトならまだしも、今のアクトは犯罪者だよ?」

「クッ!!」

「つまり」



 桜が俺の顔に手を添える。



「今なら何をしてもいいってこと」

「別に犯罪者だからって何でもしていいわけじゃ!!」



 桜の顔が少しずつ近付く。



「お、おい!!」



 近付く。



「ちょ、あの」



 近付く



「……」



 カシャリ



「……へ?」

「ん」



 桜は写真を見せる。



「アクトのキス顔です」

「ふぇ?」

「これが周りに知れ渡ったらどうなるでしょう」

「ま、まさか!!」



 桜は愛おしそうに写真を眺め



「さて、私の奴隷アクトよ」



 脅してきた。



「将来の私の義妹いもうとについて話してもらおうか」



 ツッコミたい気持ちを抑え、俺は涙ながらに現状を話した。



「そもそもお前ら連絡取り合えるだろ?」

「いつどこで話を聞かれるか分からないから。それに、ユーリもリーファもこの前から少し忙しくなるって言ってから連絡取れないし」

「そうか」



 ん?



「アルスはどうした」

「アルスはアクトを探しに行ったよ。多分今は世界の反対側くらいじゃない?」

「灯台下暗しじゃん」



 探す範囲のスケールが彼女らしくていいけどね。



「じゃあアクトは今何してるの?」

「俺様はこれから幸福教のトップに会う」



 一瞬桜が顔を顰める。



 無理もない。



 母親と幸福教は切っても切れないものだからな。



「そっか」



 桜は小さく呟いた後



「アクトって美少女より男好きだったんだね」

「違ぇよ?」



 多いな最近。



「ま、冗談は置いておいて、連絡ならつけれるよ?」

「なに!!」

「ほれ」



 右手の拘束だけ外され、桜の携帯を見る。



 そこには



『シウス』



「どうして」

「なんか突然友達追加が来てた」



 悪徳宗教の長が友達追加ってなんかシュールだな。



「なんかこの前見つかった時に気に入られたらしくて、まぁいつか役に立つかもって思ってさ」



 普段なら強めに消せと言うところだが、今回ばかりはファインプレーだ。



「あ、ちょっと外出るから待ってて」



 桜は何か用事を思い出したのか、携帯を俺に渡したままどこかに行く。



 そして知る。



「何だこれ」



『未来の旦那様』

『義妹』

『親友』

『ギャップ萌え騎士』

『リーファってさ、美人さんなのに中身へっぽこだよね』

『ソフィア』



 ……。



 とりあえず義妹を押して見る。



『リアちゃん、いつになったらお姉ちゃんって呼ぶの?』

『一生呼びません。桜さんこそ、ご祝儀の準備は出来たんですか?』

『結婚後に備えて貯金してるから無理ぃ、ごめんね』



 この子達何の話してるの?



 多分絶対違うと信じたいが、これ当事者知らないよね?



 まさか当事者現在進行形で拘束されてないよね?



 その後は



『リアちゃん大丈夫?』



 桜の心配のメッセージで埋め尽くされていた。



 喧嘩はするが、やっぱりお互い大事に思ってるんだとホッコリする。



「さて」



 ここからが問題だ。



『桜、例のブツは用意できた?』

『うん!!バッチリだよ。なんか教会に行ったらエリカ様が出て来て、事情を話したら嬉しそうに協力してくれたよ!!』

『それは好都合ね。じゃあ、その縄はあの日の計画の日まで保管お願い』

『りょ!!』



 俺は自身を縛る縄に注目する。



「アクト、この縄に強力な光魔法が付与されてるぞ。これじゃあ魔法は一発も使えないぞ」



 ルシフェルが教えてくれる。



 会話の内容的に、この縄は何かを拘束するために用意されたもののようだ。



 そして、光魔法は闇魔法に高い特効を持つ。



「じゃ、邪神教でも捕まえようとしたのかな?」



 現実逃避する。



「つ、次だ」



『急にどうしたんだ?桜』

『実はユーリにおり行って相談があるの』

『……話を聞こう』

『実は……』



 それから桜の返信は無く



『お、おい!!もう十分も経ってる。何かあったのか!!』



 ユーリが心配のメッセージを送ると



『これ』



 ユーリが猫を蕩けるような顔で撫でている画像が上がる。



『これを……ネットに上げたいの』

『やめてくれ』

『でも!!このユーリの可愛さを世に広めなきゃ!!』

『お願いだから、やめて』



 ここでユーリが今度ご飯を奢るということで手打ちになったようだ。



「この画像欲しいなぁ」



 俺は携帯を壊したことを悔いた。



 そして



「リーファも携帯買ったんだな」



 レオがいなくなり、真や桜のお陰で客足が増えた結果、少し生活に余裕の出来たリーファ。



 まぁそれは喜ばしいことなんだが



「名前が完全に誰かへのメッセージのように見える」



 確かにリーファは美人なのに中身は可愛いんだよな。



『リーファってさ、アクトのこと好きなの?』

『嫌い』

『あれれ?既読がついてからメッセージ返ってくるの遅くない?動揺した?』

『これはまだ慣れてないからだよ!!』

『返信速〜』



 内容は置いておいて、この二人はなんだかんだで気の合う仲になったようだ。



「なんだろう、すげー感動してる」



 このおかしくも楽しそうな会話。



 ゲームでは見られなかった皆の関係や、ありえないはずの出来事が俺の目の前にある。



「そうだなぁ、どうせ死ぬなら最後に、ヒロイン達がみんな仲良くしているところを見たいな」



 自分勝手で傲慢な俺に、最後くらい夢を見せて欲しい。



「だから」



 この件も綺麗に完璧に解決してみせる。



「あ、そういえば」



 ある意味驚きであるが



「ソフィアと桜は知り合いだったのか」



 桜ルートを選べばソフィアはいないし、ソフィアルートを選べば桜はいない。



 だからこの二人の絡みを俺は全く知らない



「どれどれ」



 クリックする。



『間違いありません。アクトグレイスの正体は』

「乙女の携帯を覗き見るなんていい度胸だねぇ」

「!!!!!」



 携帯を取り上げられる。



「いや、これはお前が置いていくから」

「おっと、言い訳かぁ?」



 桜はどう考えてもダメージは受けてない様子。



「うん、写真は見てないんだね」

「あ」



 忘れてた。



 さっき撮られた写真を消すチャンスだったのに。



「危なかった」

「ふん、そんなに俺様の弱みを握って嬉しいか」

「いや、そっちじゃなくて」



 桜は自身の顔に携帯を重ね



「私の裸の自撮りがあったから」

「な!!」



 んでそんなものを



「いやー、最近体型が気になり始めまして。ちょっと撮ってみたんだよねぇ」



 桜は服の上からも分かるほどボンキュッボンであるが、今はそんなことよりも



「口から血が出てるけど大丈夫?」



 悔しい!!



 俺は今、前世を含めて全てを差し置いて今の状況を悔いている。



「どうして!!!!」



 どうして俺は写真フォルダーを開かなかった。



「クソ!!!!」



 自身の不甲斐なさを呪う。



「見たかった!!!!」

「うわぁ」



 あまりの気迫に桜が若干引く。



「ま、将来いくらでも見れるんだし」

「え」



 そうなの?



 じゃあいっーー



「良くない!!」



 それって絶対ゴールインしてるよね?



 完全にランウェイ抜けた後だよね?



「まぁ細かいことは気にしないでさ」

「いや全然細かくないんだけど」



 桜は画面をみせる。



「集合場所は例の場所だってよ」



 桜が画面を見せる。



「なるほど」



 俺と奴の出会いの場であり



「あいつの性格の悪さが出てる場所でもあるな」



 だがこれで



「王手だ、ザンサ」



 俺はラスボスらしく、豪快に笑った。



「ところで桜」

「何?」

「これはいつ解ける」

「え?」



 桜は不思議そうに



「今日一日ずっとだよ?」



 コノコナニイッテルノ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る