第77話
邪神教生活二日目
「俺がどうして邪神教に入ったか、ですか?」
「ああ」
俺はラトに質問する。
「俺は普通ですよ。ほんの少し人より才能があった結果、嫉妬されて、爪弾きにされただけです」
「ふ〜ん」
聞いといて興味なさげに返答する俺。
俺にとってこの世の不幸話は全てが彼女達の劣化であり、大したものではないと考えている。
あくまで今の質問はこいつの動機を知る為であり、それ以上でもそれ以下でもない。
「逆に質問してもよろしいですか?」
「どうしたナナ」
「グレイム様は何故邪神教に?」
「俺か?そうだな」
この前みたく曖昧に答えてもいいが、少しこいつらは信頼できる。
少し踏み込んでもいいかもな
「俺には大切な人達がいるんだ」
「グレイム様の大切な方、ですか?」
「ああ。彼女達を不幸にする世界が気持ち悪くて仕方がないんだ。命をかける彼女らの上に、ただ傲慢に文句を垂れる奴らを皆殺しにしたい、それだけだ」
「さ、さすが、幹部となると殺意が凄いですね」
少し冷や汗を垂らすナナ。
どうやら俺もこの世界に少しずつ染まってきたようだ。
「ところでグレイム様」
「何だ」
「ここはどきですか?」
「あ?ケーキ屋に決まってんだろカス」
「はぁ」
俺は名前のおかしなケーキ屋にいた。
「いらっしゃいませ」
「あ、亜人!!」
ライの頭を引っ叩く。
「殺すよ?」
「も、申し訳ありません!!」
「あのー、お客様?」
「ああ、すみません。案内してもらっていいですか?」
「どうぞこちらに」
リーファの案内により三人で席に着く。
「ここに何かあるんですか?」
「いや、ケーキ食べたいだけ」
「ナナ。昨日のことを考えろ、グレイム様の考えを俺らが理解できるはずがない」
「ハ!!申し訳ありません」
「分かればいいんだ」
ちなみに理由は本当にない。
ただ顔が変わったし、ちょうどいいからリーファと会いたいと思っただけだ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「お前ら何食う」
「え!!食べてもよろしいので?」
「当たり前だろ」
「えっと、じゃあこれを」
「じゃあ俺はこれで」
「分かった。これとこれ、あとコーヒーと君を下さい」
「確認しますね。チーズを一つ、チョコを一つ、それとコーヒーに私、以上でよろしくない!!」
リーファが叫ぶ。
「私何か聞き間違えた?」
「いや、合ってた。じゃあよろしく。あとスマイル頼める?」
「頼めません。そういうお店じゃないです」
「じゃあ萌え萌えキュン頼める?」
「頼めません」
「じゃあ握手は?」
「アイドルじゃありませんので」
「チェキも?」
「ありません」
「じゃあケーキは?」
「それしかありません」
「内容薄い店だなぁ」
「むしろケーキ食べに来てケーキ以外の要素がある方がおかしいですが」
俺とリーファの会話に二人がポカンと口を開ける。
「何だ?今の会話は」
「何かの暗号か何か?」
「となると、今のは隠語だと考えられる」
「今度は一体何を……」
勝手に深読みしてる二人だが、この会話に意味はない。
「それでは、少々お待ち下さい」
リーファが少し疲れながら奥に消える。
「はぁ〜、尊(クソデカため息)」
少し時間が経ち
「お待たせしました」
二つのケーキとコーヒーが来る。
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「いや、まだーー」
「以上ですね」
「さすがのスルースキルだぜ」
テクテクと帰るリーファ。
「よし、お前らに今後の予定を話す」
「「は!!」」
「俺らは基本的に依代探しを主にする。どうせ幹部連中は変人だらけだ。今も依代を探してるのはアータムくらいだろう」
「他の幹部の方々は邪神様の復活に興味がないのですか?」
「いや、あるにはあるが、めんどくさがる奴とか、目の前の欲に負けたりだとか、色んな理由で活動が遅い」
「そんな中、幹部に加入したばかりなのに活動するグレイム様は優秀ということですね」
「そういうことだ」
活動されると俺が困るんだけどな。
「と言っても依代候補は名前だけが知られているため、探すのには骨が折れる」
「リストはどのようにして作られているのですか?」
「ん?ああ。あれは公しーー」
待てよ
「何故依代候補を邪神教は知ってるんだ」
公式資料に載っていた依代のリスト。
設定では邪神教はそれを頼りに探していたそうだが
「どう考えてもおかしいだろ」
姿も形も性格も分かっていなのに、何故か依代である可能性が高いものの名前だけが判明している。
「やはり君LOVEはまだまだ奥深いな」
全てを知った気になっていても、実際はここに来て予想外の展開ばかりだ。
「邪神教に入った目的がまた増えたな」
原作を解き明かすなんてゲーマーの夢だろ。
「孔子によって作られたのですか?」
「この世界にいるのかよ。いや、俺も知らん。少し見栄を張っただけだ」
ナナとラトは目を合わせ首を傾ける。
「ここでの用は済んだ。帰るぞ」
「やはり先程の亜ーー」
睨みをきかせる。
「女性と何かを?」
「好きに想像してろ」
意味深(中身無し)感を出して会計に出る。
「はいはい、お会計だね」
「リーファを出せ」
「あの子はあんたさんの相手は疲れるってさ」
「ならしょうがない」
「厄介とアッサリが同席してますね」
リーファが現れる。
「疲れますが、楽しくないとは言ってませんので」
「愛してる」
「お会計1200です」
「釣りは要らない」
「足りてません」
「桁を一つ間違えた」
「いえ、そういうのは困るんですきっかり払って下さい」
「すみません」
俺は正規の値段を払い、店を出た。
「あれが例のエルフ」
「サクッとやっちまうか」
すれ違う二人組の男。
「おい」
一人の男の肩に手を置く。
「んだよ」
「初めまして、こういうものですー」
「名刺?って邪神……」
俺は剣を抜く。
「happy end」
「邪神教だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
男が大声を上げる。
「どうして騒ぎを?」
「いいから」
あの二人、確か本編でも登場した変態共だ。
確かあの子がこの二人に……
「殺しとこうかな?」
いや
「この店の前で殺人はな」
「邪神教!!」
店からリーファが飛び出てくる。
「貴方達、邪神教だったんですか!!」
「おーおー、気軽に俺らを入れるとは世間様はここのケーキみたいに甘ったるいなぁ」
「あんた達がいなければ平和だからじゃない?」
「違いない」
俺は撤退の合図を示す。
「逃すと」
「思うな」
俺は先程の男二人を人質にとる。
「おっとっと、手が滑っちゃうねぇ」
「ひぃいいい」
「卑怯すぎない?」
「うるせぇ」
軽口を喋っているように思うが、リーファは俺が気を抜けば一瞬で俺らを制圧する気満々だろう。
まぁ
「俺がリーファ相手にそんな隙見せるはずないけど」
少しずつ後ろに下がる。
「バイバイ、愛しの彼女」
「あなたの彼女になった記憶はないけど?」
「俺もだ」
分かりやすく男の首に闇魔法を仕掛ける。
ここで俺を追えばこの男達は死ぬが、時間が経てば解除されるものだ。
死ぬなら死ぬでリーファは感情を捨てて俺らを捕らえるだろうからな。
「おい」
「は、はい」
男達の耳元で喋る。
「次お前らが何かすれば」
俺はチョキを作る。
「切る」
そして俺らは撤退した。
◇◆◇◆
「あれは邪神教に仇なす者だ。さっきそれを事前に防いだ」
「さすがグレイム様です」
適当に嘘をつき、あの場の行動を正当化する。
「いやー、邪神教に入ると自由でいいな」
これまで自分を押し殺してきたが、今の俺はアクトではなくグレイム。
「さて、お遊びもそろそろ終わりだな」
切り替える。
「ナナ、ラト。お前らに命令する」
「「は」」
「俺はこれから名前をデカくする。そのために多くの部下が必要だ。お前らに人を集めて欲しい」
「それは誘拐するということですか」
「ラト!!」
「その通りだ」
「ッ!!」
「ですが、俺達二人では力不足かと」
「分かってる。だから、ここに向かへ」
「ここは」
「金ならある」
俺は大きな袋を取り出す。
「特に、銀髪の少女がいたら確実に捕らえろ」
「理由は?」
「必ず役に立つ」
「承知しました」
二人は消える。
「さて、忙しくなるな」
ここから正念場。
邪神教として嵐のように世界を混乱させよう。
「見せてやるぜ、ラスボスの力を」
ニヤリと笑う。
「君、何してるの」
「ふぇ?」
赤い髪
「あら、何だか彼に似てるわ」
「ひぇ〜」
ラスボスは最強に遭遇した。
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