第67話
<sideソフィア>
「マーリン家ではその頭脳が絶対。研究のためならいくらでも金も人も出そう。だが、真理の追求だけは諦めるな」
「はい」
齢3歳の子供に与えられる価値観としては大きく間違ってると思います。
ですが、それは血か、はたまた環境によるものか、私にその考えはどうやら合っていたようで
「声のように、人にはそれぞれ魔力の波長があります。なら、それを記憶し、適合すれば犯罪者の取り締まりは一気に楽になる」
私が6歳の頃に見つけた新事実。
これは世界に大きな激震を走らせました。
「これは、マーリン家総出で生み出したものとする」
だがその結果はすぐに揉み消された。
だけど私はそのことに対してそこまでの感情は持ち合わせていませんでした。
ただしたいことをし、その過程で生まれた結果に過ぎないものでしたから。
だけど
「そんなものですか」
同じ志と思ってた連中は、真理よりも利益を求めている。
「はぁ」
次の年
「仮説ですが、もしかしたら人にはそれぞれ器のようなものをがあり、それによって属性や魔力量は決まっているのではと考えています」
「根拠は?」
「まだ……見つかっていません。ですが!!研究して見る価値はーー」
「確証もないものを研究する時間などない。お前は我々の出す課題に努めろ」
「……分かりました」
廊下を歩く。
「あ!!ソフィア様!!」
「どうも」
名前すら覚えてない使用人
「皆様酷いですね。ソフィア様の考案されたものであれば必ず合ってるというのに」
「いえ、あの人達の言う通りこの案は穴だらけ。ああ言われてしまうのも無理はありません」
「何を言ってるんですか?」
「え?」
「世間には知られていませんが、ソフィア様は天才。ソフィア様の言うことは正しいんですよ」
崇拝、という言葉が正しいのでしょうか
きっと彼女には本来の私が見えていない。
「誰も真実を見ようとしてない」
その真実に気付いた時、私は
「つまんない」
世界が色褪せた。
◇◆◇◆
「ソフィア様また100点なんですか!!さすがマーリン家です」
「そんなことありません。皆さんにいつ抜かれるのかとヒヤヒヤしていますよ」
当たり障りのない会話。
一体ここに何の意味があるのでしょうか。
きっと学生らしい会話なのだろうと理解はできる。
最近なんのドラマを見たかだとか、どのような物を買っただとか、聞く分には共感できる場所も多々ありました。
だけど
「魔法について話さない?」
「いやー、ちょっとー」
「マーリン様と意見を交える程私達はー」
努力は天才を凌駕すると言う言葉があります。
それならきっと私は天才の方に分類されるのでしょう。
その天才が努力した時、同じ舞台に立てる人間はいるのでしょうか?
「神様となら気が合うのかもですね」
そんなお伽噺のような話に縋るまでとは
「そういえば、今日はお客さんが来るんでした」
◇◆◇◆
「有名な学者のロン博士だ」
「初めまして。ワタシ、ロンと申します」
「よろしくお願いします」
爽やかな優男、だがどこか胡散臭い。
「その包帯が例の?」
「ええ。体から放出される魔力の波長を狂わせる液体が染み込まれています。これを使えば簡易的な魔法であれば波長が狂い、簡単に打ち消せます」
「素晴らしいアイデアですね」
「いえいえ、これもあなたの魔力の波長の研究故ですよ」
「よくご存知で」
すぐに気付いた。
この男、おそらく私に嫉妬してるな。
「あなたは真実を求めていますか?」
私が尋ねると
「もちろんです」
その答えに少し安心した後
「だってワタシはこの世で最も賢いですから」
この男とは気が合わないと分かった。
◇◆◇◆
「人から人に魔力を与える。これが成功すれば人類は大きな一歩を踏み出すでしょう」
「そうですね」
このロンとかいう男と少し話せば分かった。
性格は気に食わないけど、その頭脳だけは本物であると。
だからこそ
「それは確証のない議題では?」
「ですが、可能性としてはーー」
「可能性なんて無限ですよ?時間の無駄です」
「そう……ですか」
私も結局は同じですか。
無駄なものに固執してしまう。
もしかしたらに憧れてしまう。
けど
「この世界に夢や希望なんてありません。全ては何かしらの要因あってこそ」
目の前の男と、私の知能が同じ結論を導き出す。
自分の感情と考えが一致しない。
それが本当に気持ち悪かった。
「すみません、体調が」
「そうですか」
その言葉を最後に、私と彼が会うことはなかった。
◇◆◇◆
ミーカール学園に在籍して二年目。
入試で私と同じ点数を叩き出した人がいると聞いたが、その人物は一年経っても見つからなかった。
「Zクラスでいいです」
「ですが、ソフィア様の実力ならAクラスが妥当ですが」
「この学園には私に授業を教えることが出来る人間がいるのですか?」
「……」
「失礼します」
教頭を置き去りにし、部屋を出る。
「いいのかい?」
「学園長ですか」
「今年のAクラスは面白くなると私は踏んでるが」
「そうですか」
私は歩みを続ける。
「退屈かい?」
「……」
「安心しな。あんたのサングラスはもうすぐ取れるよ」
「学園長は煙で前が見えなさそうですが」
「これがないとやってられないんだよ、全く」
本当に私をこの世界から救う、否、私の世界を変えてくれる人がいるなら
「悪魔にだって魂を売ってやりますよ」
神がいるなら、天国や地獄だってあるかもですから。
◇◆◇◆
邪神教襲撃の後、私はある疑問に襲われる。
「どうやってあれだけの数の魔獣を」
人が誘導したにしてはあまりにも不可解。
三代魔獣を使役する力が人にあるのか?
「三代魔獣に見せかけた何か?」
ハリボテの三代魔獣を作った?
「考えても答えは出ませんか」
後に、私はある事件によって正解を導くことになる。
◇◆◇◆
「この
ここでもまた三代魔獣。
「おそらくこれは人為的なもの」
ここ数百年は魔獣暴走は起きていません。
理由は定期的にダンジョンを破壊し、あたりの魔獣を駆除しているから。
私の持ちうるデータでも、魔獣が増えたというものはない
ならば、人為的なものと考える方が妥当。
そして以前にも同じようなものを見ました。
「邪神教ですか」
一体どれほどの規模を持つ団体なのでしょうか。
「一体どのようにして魔獣を……」
疑問は募りますが、まずはこれを止める必要があります。
「やりますか」
◇◆◇◆
「ほう」
あの日から少しずつ邪神教についての情報を集めていました。
その結果分かったことがいくつかあります。
ですが、それを説明する前に
「話を聞きに行きますか」
ある程度調べると、現場に居合わせ、問題を解決した人がリストアップされていた。
私は三人の人物に話を聞くことにした。
◇◆◇◆
「そろそろ吐いたらどうなんですか?」
「ムッフッフー、私の情報は安くないですよー」
「クッ!!カツ丼をもう一つお願いします!!」
容疑者1 桃井桜
話を聞かせてくれると言うのでお招きすると、急に謎の寸劇を始めた。
私も友人……と呼ばれる存在から聞いたドラマの真似をし、その小芝居に付き合う。
「ふー、お腹いっぱい」
「初めてですよ。三大貴族にこれだけの態度を取る人は」
「そこは慣れですね。これでソフィア様を攻略すれば、私は実質三大貴族を束ねる者になりますから」
「打首になっても知りませんよ?」
愉快な人だと思った。
目の前の女性はペロリと艶美に唇を舐めた後
「それで、何を聞きたいんです?」
「あ、敬語は結構ですよ」
「そう?じゃあソフィアも敬語はなしで」
いきなりフランクですね。
「いえ、私の場合は癖みたいなもので」
「そう?まぁ喋りやすい話し方が一番だね」
物分かりもいい。
かなり好印象な人だ。
「それでは質問させて下さい」
私は一言も逃さないように耳を傾ける。
「当時の状況を語って下さい」
桃井さんは真剣な顔で
「分かったよ」
そして衝撃の言葉が放たれる。
「まずは私の彼氏について話すね」
「は?」
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