番外編
このお話はシリアスシーンに疲れてしまった作者の駄作です。
是非とも生暖かい目でご唱和、ご清聴の程よろしくお願い致します。
「嘘はいけないと思うぞ」
「どした急に」
俺はパチンコモンスター、略してパチモンでルシフェルに子供が暗い場所で『ワー!!』と驚くことから名前がついた、ワークライというパチモンの捕獲方法を教えていた。
仕事で得たお金をパチンコで溶かすことで有名なパチモンだ。
「我もうここから抜け出せないぞ」
「あー、失敗しちゃったかー」
「グスン、ゲット出来るなんて話は嘘だったんだ」
「俺は実際捕まえたんだけどなぁ」
自分が失敗しただけなのに、八つ当たりのように殴りつけてくるルシフェル。
「アクトとは絶交だ!!嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ!!」
「ところでルシフェル、俺が取っておいたプリンが無くなってたんだが、俺のプリンをどこにやった」
俺の言葉に一気に勢いが弱まるルシフェル。
「わ、我は知らないぞ!!甘くてプルンプルンで、プッチンしたら服に飛び散っちゃって、こっそり服を洗ったものなんて知らないぞ!!」
「嘘だな!!」
「ぬー、アクトのような勘のいい奴とはやっぱり絶交だ!!」
ドアを蹴破り、ついでにお菓子とジュースを持ってルシフェルが飛び出して行った。
「あ、お兄様」
リアが開いたドアからひょっこり顔を出す。
「もうすぐテストですが、お勉強は順調ですか?」
「俺様は天才だから勉強なんてしなくていいんだよ」
「さすがですお兄様。一応先生が来ると伝えようとしたのですが、余計なお世話でした」
「ちょっと待って話変わるよー」
◇◆◇◆
ミーカール学園は実力主義の世界だ。
実力が有ればバカでも許され、実力が有ればより高い地位を得ることになる。
だけどその実力は武力と学力を足したものだ。
前にも話した通り、魔法は科学と密接している。
つまり結局当然勿論、頭がいい奴が強い。
その中でもグレイス家はその勉強と実力の両方を兼ね備えたことで有名だ。
だからアクトの父親はわざわざ先生なるものをつける。
そいつらには俺らに対して強い権限があり、グレイスという庇護下では太刀打ち出来ない人間となっている。
つまり今まで通りの点数を取れば夏休みが潰れるのは必須。
だから俺は勉強しなければならないのだが
「分からん」
俺は分からなかった。
「な、なんだよ。メタンと魔力を混ぜたらなんで鉄が出来るんだ。原理が一切分からん」
ゲームでは『ファイアー』なんて初期魔法を気軽に使っていたが、まさかあの裏でみんなはこれ程までの勉強していたのか。
「これは赤点も赤点だな」
夏休みは先生によって潰れてしまうかもしれない。
憂鬱の気分のまま、最後の方にあった高難易度の問題を無謀にも挑戦してみる。
「なになに、人差し指と中指を合わせ、それを額に当てながら魔力を溜め、叫びながら放つ技を何というか」
頭の中に緑の生き物が浮かぶと同時に、この問題を解くことができた。
「おや?アクト」
勉強しているとユーリが現れる。
「ふむ」
ユーリは周りをキョロキョロ観察し、誰もいないことを確かめる。
「どうしたの?お勉強中?」
凛々しい声が一変
アイドル顔負けの可愛らしい声に大変身する。
そのまま自然に俺の横に座ってくる。
正直グッと来すぎて心臓が煩いので止めておく。
「あ、あぁそうだ(震え声)」
「そっか、なら一緒にしてもいいかな?」
「ダm」
「いいかな?(上目遣い+猫撫で声=)」
「いいよ」
俺は……弱い……
「と言ってもお前なら勉強しなくていいだろ」
ユーリ、というよりヒロイン、ましてや三代貴族の一人となればその知能は群を抜いている。
正直ユーリは勉強しなくても上位には食い込むことが出来るであろう。
「お父様の顔に泥は塗られないよ。それに、私はペンドラゴだからそこまでだけど、きっとリアはもっと大変だよ」
「今日も朝から勉強してたしな」
何故リアがここまで頑張れるのか。
リアの顔が頭に浮かぶ。
家族によって泣いてるリア
大切な人を失い悲しんでるリア
こっそりプリンを食べたら少し怒ったリア
お風呂で下着姿のリアとバッタリ遭遇し、頬を染めていたリア
「(責任取って)結婚するかぁ」
「え!!(それって私と!!)」
リアが頑張っているのにも関わらず、怠惰に過ごすのは勝手ながらリアに対して失礼な気がした。
「よし、(勉強)するか!!」
「うん!!(結婚)しよう!!」
◇◆◇◆
「あれ?アクトが勉強なんて珍しー」
後ろから声がする。
横を見ると、距離感のバクった桜の顔が近くにあった。
「あ、可愛……何のようだ」
「それで修正きくと思ってるのが凄いよ」
桜は俺の肩から手を離し、正面に立つ。
「いやいやアクトさん。私とアクトの仲じゃん?」
分かってるでしょ?とばかりに目配せしてくる。
「何が言いたい」
「一緒に勉強しよ?」
「ふん、断ーー」
「あ、そこ間違ってるよ」
「何?どこだ」
「ほらここ。あ、それとここも」
「何が間違いなんだ」
「えっとねー」
◇◆◇◆
閑古鳥が鳴く。
「そういうことか!!確かにこれならメタンから鉄が生み出されるな!!」
勉強は嫌いも嫌い、大嫌いであるが、これが君LOVEのことだと思うと自然と熱が入った。
「桜、それならこれとこれを合わせたら」
「そうだね」
ピタリと俺はペンを止める。
顔を上げると
そこにはニッコリ顔の桜。
「な、何だよ」
「ううん。アクトが楽しそうでよかった」
「俺様が楽しんでる?どこをどう見たらそうなるんだ」
「そうだなぁ、こうやって私と二人きりでもいつもみたいに逃げださないところとか?」
周りを見てみれば、既に生徒の影はなく、夕日に照らされた俺と桜の姿だけがあった。
「……」
「にひひ、顔真っ赤だよ」
「夕日のせいだ」
「そ」
桜は静かに笑う。
「帰る」
居た堪れない気持ちになった俺は荷物をまとめる。
「じゃあ私も帰ろっかな」
桜が立ち上がり、うーんと体を伸ばす。
「ぱぁ」
「速く準備しろ」
「送ってくれるの?」
「違う。俺様の寄り道に偶々お前が着いてくるんだ」
「ふふ、バーカ」
◇◆◇◆
今日の学園はいつもよりも静かだ。
それもそうだろう。
本日はテスト本番。
この結果によってクラスが変更されることはないが、それでも後々響いてくる可能性が大いにある。
だから皆が本気で取り掛かる。
そして鐘の合図と共に
「それではテストを始めて下さい」
教師の言葉によってテストが始まる。
問題を見て確信した
(分かる!!これも、これも、神経セミでやったところだ!!)
スラスラとペンが動く。
俺の隣を通った教師が俺の解答を見て腰を抜かすほどだ。
「あわわわわわわわ」
皆も気になって仕方がないのに、カンニングと見なされないように必死に我慢している。
そろそろうちの担任はクビになるかもしれない。
魔法の知識や剣の魔力の密接性、歴史などの問題を問題なく解く。
「これならもしかしたら」
多分成績自体は高いものではないのだろう。
それでも、努力の成果が実った気がした。
皆がどんよりした空気の中、俺は非常に晴れやかな気持ちで次に備える。
「次のテストは……心理学?」
何だこれ?
「あ、これはアンケートのようなものですので、深く考えないで下さい」
なるほど。
テストに関しての情報を、解いた生徒直々の感想をもらい改善する。
そういうチャレンジ精神は嫌いではない。
「それでは始めて下さい」
質問を見てみる。
Qあなたに好きな人はいますか?
1.いる
2.告白するつもり
3.告っちゃいなよー
4.ちなみに私はCクラスの諭吉君が推しです
……
「なるほど」
※上の回答で1を選んだ人
1.具体的な名前をあげて下さい
※上の回答で2を選んだ人
1.具体的な名前をあげろ
※上の回答で3を選んだ人
1.告っちゃう相手誰?
※上の回答で4を選んだ人
1.私は同担拒否です
「知らねぇよ!!!!!」
なにこれ!?
アンケートで何聞いてんの?
てか私欲だよねこれ。
絶対恋愛好きな奴が書いたよねこれ?
「はぁ……飛ばすか」
どうせ点数に関係ないしな。
ペラペラとめくる。
Qストーカー被害に遭ったことがありますか?
1.ある
2.ない
3.絶賛されている
4.犯人です
「4を選ぶ奴がいたらダメだろ」
Q襲われたことはありますか?
1.ある
2.ない
3.男はみんな狼だ
4.実は私が狼だった
「人狼ゲームか?」
Q神ですか?
1.はい
2.いいえ
3.どちらかといえばはい
4.邪神である
「1と4同じじゃね?」
Qこの世界は誰によって作られた?
1.人間
2.神
3.高次元存在
4.お前
「なんか急に哲学的だな。一応君LOVE作ったのは人間だから、でもそれだと向こうは高次元存在?」
よく分からないので飛ばす。
Q選択せよ
1.自分が犠牲となり、大切な人を守る
2.大切な人を見捨て、自分だけが助かる
「そんなの」
俺は迷わず1を選ぶ。
Q本当に?
1.はい
2.いいえ
「はい」
Qそれが君の心から望んだ結末か?
1.はい
2.いいえ
「……はい」
Q君は3つ目の選択肢を見たくないのか?
1.はい
2.いいえ
「……」
Q何が見たい?
1.HAPPY END
2.BAD END
◇◆◇◆
テストの結果は明日返される。
俺がグッタリと横たわっていると
「あ、開けてくれー」
扉の向こう側から声がする。
扉を開くと、空っぽになったお菓子とジュースを持ったルシフェルが現れる。
「……」
「そ、そんな子供を見るような目で我を見るな!!わ、我はこの世界の邪神、ルシフェルだぞ!!」
「うちはペット禁止なのでお帰り下さい」
「アクト〜、我が悪かったから、仲直りしてくれ〜」
「はぁ」
結局お前は何がしたかったんだよ。
「次はプリン食べるなよ」
「安心しろ。我は約束を守るタイプの神様だぞ」
「ほら、出所祝いだ」
「やったー」
俺は用意したプリンを食べさせた。
◇◆◇◆
テスト結果が張り出される。
漫画やゲームの世界でよく見る光景だが、前世でこんなことすればクレーム待ったなしである。
だがそれが現実となっている。
だってこの世界はゲームだから。
「真も桜もかなり上位だな。ユーリは10位以内か」
忘れがちだがこの学年はA〜Zの26クラス。
その中でのこの順位はとてつもないものである。
そんな中で
「あった」
今まで一番下に乗っていたはずのアクトという名前。
それがほんの少しだが上に進んでいる。
「さすがにこれで原作が変わるなんてないよな」
少し考えなしだったかもだが、それでも
「気持ちいいな」
それ以上の満足感があった。
「うん?」
そして俺の順位の真下に目をやる
「マークは全部合ってた」
そこには堂々と
『アルスノート』
そう書かれていた。
「合ってたから」
俺は隣から聞こえる涙声を聞かなかったことにした。
「お兄様!!」
すると、一年の棟からわざわざここまで来たリア。
「このリアグレイス、主席を維持しました!!」
後ろには褒めてと尻尾を振る犬の姿が見えた。
「そうか」
だから褒めなかった。
「はい!!」
だけど嬉しそうに返事をするリア。
俺は罪悪感と頭を撫でたいという欲望を抑えるために舌を噛み切った。
「ひはがひひいはとひたら(リアが一位だとしたら」
二年の名前の一番上を見る。
そこには堂々と
「つまらない」
自身の順位を確認した茶髪の少女が民衆の中に消えていった。
「それにしてもお兄様がこのような順位を取るのは初めて見ました」
リアが嬉しげに言う。
「まぁ天才の俺様なら余裕だな」(底辺)
「さすがお兄様です!!」(頂点)
二人のグレイスの笑い声が響き渡った。
「それにしてもあの心理学のアンケートだけは未だに謎だったな」
「え?」
リアが不思議そうにする。
「そんなもの聞いたこともありませんよ?」
このお話の半分は嘘で出来ています。
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