第17話
武闘大会とは
読んで字が如く、己が武力を競い合い、誰が強いかを競う場である。Waki参照
武闘大会は年に3回行われ、その度にクラスが変わるという、担任が名前を覚えるのに泡を吹くシステムとなっている。
と言っても入学してから卒業までに変化するクラスはせいぜい二つ程度。
魔力は生まれつき決まっており、戦い方は皆学園に入ってからも必死に覚える。
皆の努力が同じくらいであれば、追い抜くことは至難なことである。
だが逆に言えば少しでも手を抜けば簡単に転げ落ちてしまうことも指している。
学園中の生徒が必死に明日のための準備を行わう中
「フハハハハ、上強上強上強!!」
「や、やめろー!!それだけで60%も稼ぐなんてチートだぞ!!」
ゲームをしていた。
「これもまた戦いの一つ」
「一方的な虐殺ではないか」
膝の上に座るルシフェルが後頭部で攻撃してくる。
「しゃあねぇ、遊び百般でもするか」
「我はあのオセロなるものをやってみたいぞ」
「いいぜ、ボコボコにしてやるよ」
俺がこんなにグダグダしている理由は単純。
明日、俺は速攻で負ける。
ここで俺の原作ブレイクを説明しよう。
まず、この武闘大会では歴史的にも類をみない伝説の人物が現れる。
そう、真である。
Sクラスであるにも関わらず、決勝まで進んだ真は、飛び級も飛び級、Aクラスにのし上がることとなる。
そしてそんな快挙とは裏腹に、一人の少女が悲惨なことが起きる。
ペンドラゴ家は代々この武闘大会において優勝を総なめにしてきた。
そのため、奴らにとって優勝は当たり前、ましてやベスト4にすら入れないことは一族にとっての恥と切り捨てるほどである。
そんな状況でユーリは、準々決勝にて真に負けてしまう。
そりゃ神の加護マシマシに、邪神を止めるための抑止力と才能モリモリの主人公に勝てと言う方が無理な話である。
だがペンドラゴ家はそんなのお構い無しとばかりに家を追い出される。
ここでユーリルートに入った主人公は、ユーリと共にペンドラゴ家にカチコミに行き、当主を打ち負かす。
武を尊ぶペンドラゴ家にとって、真は喉から手が出るほど欲しい人間であり、ユーリも成長しているため、見事ユーリは真と共にペンドラゴ家当主となる。
が
「まだ会ったことすらない真が、ユーリを選ぶはずないよな」
選ばれなかったユーリは、追い出されたまま路頭に迷う。
それからどうなったかゲームでは語られなかったが、君LOVEは砂糖と釘バットで出来ているため、良い人生にはならなかっただろう。
「そこで俺の計画はこうだ」
毒を盛る。
……。
まぁ話を聞け。
準々決勝に進む真に毒を盛り、ユーリには不戦勝で勝ってもらう。
そうなればユーリはベスト4は確実。
これでペンドラゴ家から追放されることもない。
真には悪いが、Sクラスの人間がベスト8でも十分Aクラスに入れるほどの快挙だ。
原作ブレイクと言いわしたが、あまり原作から乖離せず、綺麗にヒロインを救う。
まさしく完璧な作戦。
「はぁ、天才である自分に惚れ惚れしちまうぜ」
「あ!!角取れたぞ」
「なにぃいいいいいいいいいい!!!!!」
◇◆◇◆
「寝坊した」
寝坊した。
「ルシフェル、今何時」
「もうお昼だぞ」
昨日ルシフェルと遅くまでゲームし過ぎたな。
「結局俺は不戦勝になってるだろうし、計画に支障は出ないな」
髪もボサボサのまま家を出る。
「そういえば今日はリアが起こしに来なかったな」
リアもまた、この大会に真剣に挑んでいる。
そのため、設備がアホみたいに充実している学園で泊まり込みで魔法の練習をしたのだろう。
「変わったな」
今までのリアは家の呪縛に囚われ、休日ですら家で勉強をしていたが、今では俺を外に連れ出そうとする始末である。
本来ならグレイス家をぶっ潰してからこの傾向が現れるものなんだけどな。
まぁどちらにせよグレイス家は粉砕するけどな。
「そう考えるとこうやって静かに登校するのは久しぶりだな」
「ならいつも通り騒がしい人が来ましたよ」
いつの間にか隣でエリカが立っていた。
「私、アクトさんにそんな風に思われていたなんてショックです」
「嘘つくな」
「ふふ、いつもと立場が逆転ですね」
嬉しそうに笑う。
「こんな時間まで俺様を待つとは、余程俺様にゾッコンなようだな」
「まぁ!!バレてしまいましたか!!」
「それで?」
「それでとは?」
俺がどんだけエリカのこと見てきた分かってんのか?
「お前がいちいち面白くもないネタを挟む時は、大体何かある時だ」
「アクトさんの方が私にゾッコンなのでは?」
「……」
それ反応しちゃうと嘘発見器にバレちゃうから。
「近くで強力な闇魔法を感知しました」
「邪神教か?」
「はい、ですが見逃してしまいました」
「なに!!」
エリカの感知から逃げきれる奴だと!!
「幹部クラスか……」
おいおい、まだ5月が始まってすぐだぞ。
幹部なんて9、10月くらいから出るくらいなのにもう二人目とか聞いてないんですけど!!
「どうかお気をつけて」
「俺様が気をつけることなどない」
「ふふ、そうですか」
嘘がバレるのはやりづらいな、ホント。
そして俺は一抹の不安を抱えたまま学園に入った。
だが、俺が全く予想だにしない方向で事件は起きた。
◇◆◇◆
「何で俺がこんなに勝ち進んでるんだ」
多くのブロックの優勝者が、更に新しいトーナメントに進んでいく。
そして最後のトーナメント表には、決しているはずのないアクトの名前が載っていた。
「おいお前」
「ア、アクトさーー」
「黙れ。俺様の質問にだけ答えろ」
男が無言でヘドバンみたいに首を振る。
「どうして俺様がこんな順位にいる」
「や、やはりこの順位ではご不満ですか?」
「あ?」
「す、すみません!!」
ヒロインさえいなければ俺も意外とそれっぽいことできるもんだ。
「説明しろ」
「は、はい!!ア、アクト様の対戦相手は皆、アクト様に怪我を負わせてしまうにはあまりに不敬と考え、皆辞退してきました」
「ちっ、なるほど」
ん?
理由は理解できた。
だがゲームではアクトは一回戦で負けたはず。
「おい、一回戦の相手も棄権したのか」
「い、いえ!!そいつはZクラスのくせに無駄に正義感の強い奴でして、アクト様を凶弾していたところ、リア様がそれを聞きつけ、口喧嘩の末にその男吹き飛ばし、病院送りとなりました」
リアよ。
いつの間にかヤンチャな子になっちゃって……
「もういい、どっか行け、目障りだ」
「は、はい〜」
すると
『次の試合の方は、控え室でお待ち下さい』
アナウンスがなる。
正直俺はこのまま出ずに勝手に不戦勝になるのもいいが
「アクトに赤っ恥をかかせないのはいかがなものかと」
やはり俺が消えた後、歴史の教科書にアクトが載る時、アクトがどれだけ惨めな人間かの出来事を残しておいた方がいいだろう。
それに、真の控え室の水に毒を盛るにはちょうどいい機会だ。
「行くぞルシフェル」
「む?大丈夫なのか?」
「軽く半殺しにされるだけだ」
「それは大丈夫ではないと思うが」
◇◆◇◆
控え室S
ここに真が来る手筈となっている(原作知識)。
俺は扉を開ける。
そして下着姿の女の子と目が合う。
「……」
「……」
俺は静かに扉を閉めた。
そしてあろうことか、俺はもう一度扉を開く。
まさかもう一度来るとは思ってなかった少女が目を見開いて驚く。
「……」
「……」
「どうして……」
少女は口を開く。
「もう一度扉を開けたんですか?」
問う。
だから俺は
「男はみんなエッチなんだよ」
俺の場合はヒロイン限定なんだけどな。
「あの、普通に出て行って下さい」
俺は素直に扉を閉める。
「どういうことだ?ルシフェル」
「それはお前の奇行に対してか?」
奇行?
人類の半分が行うことは普通のことだろう。
「勝手に全ての男を一括りにするな」
「まぁその話は置いといて」
何故あそこに彼女が?
「クソ、もう試合か」
とりあえず一旦ボコボコにされてから考えるか。
◇◆◇◆
舞台の中心で対戦相手を待つ。
全く、時間にルーズなやつが俺は一番嫌いなんだ。
フィールドは直径100メートルほどの円の形をしており、その上には障害物が一切存在しない。
そして周りは強力な結界で囲まれており、安全に試合を見ることが出来る。
まるで壊されて皆に驚かれるような設定だなとしみじみ思う。
「対戦相手って誰だろうな」
ポロリと溢す。
「知らないのか?」
ルシフェルが疑問を言う。
「確かに俺は未来的なのを知ってると言ったが、決して全知とは限らないからな」
「そうだったのか!!」
やはりバカか。
「じゃあ先に言ってた方がいいな」
「何をだ?」
そして放たれる衝撃の一言。
「相手は邪神教だぞ」
ん?
「今なんて?」
「そうだっtーー」
「そういうのいいから」
邪神教?
ありえないだろ。
確かに邪神教は強力な組織だ。
だがいくら奴らでも警備が強化された学園に忍びこむことは不可能だろ。
まさか!!
一人の男子生徒が歩いて来る。
「ア、アクト様がご相手とはあまりに恐ーー」
「サム」
「……人間に見破られたのは初めてだよ」
不敵に笑う。
「俺様を狙いに来たのか?」
「今のミーカールではさすがに不可能だね。今回は違う目的だよ」
「違う目的?」
「ああ。今回はーー」
ユーリペンドラゴを殺しに来た
俺は静かに剣を抜いた。
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