第14話

「I’ve never seen this ceiling before(知らない天井だ)」



 Where am I(ここはどこだ)?



 I Love heroine(周りを見渡してみると、そこは古びた物でいっぱいである)



 マジで可愛いすぎてつらたん(どうやら倒れた俺を教会が保護してくれたようだ)



 結婚したい(切られたはずの腕もいつも間にか戻っている)



 まだ起きないなぁ(きっとエリカのおかげだろう。どうにかして感謝を伝えなければな)



 すると、俺の横で眠っていた彼女が目を覚ます。



「お兄……様」

「好き(好き)」

「ハッ!!」



 ガバッと起き上がる。



「お兄様大丈夫ですか!?」

「当たり前だ」

「それならよかったです」



 本当に嬉しそうである。



 てかなんかいつの間にか手握られてるんですけど。



 ……。



 いやマジで何でこんな好意的なの!?



 俺アクトだよ!!



 ゴミだよ!!



 もしかして俺が来たのは自分のためって勘違いしちゃったのかな!?



 いや勘違いじゃないんだけど!!



 俺は手を払い除ける(心臓が爆発する直前)。



「あっ……」

「……」



 やめて!!



 そんな悲しそうな顔しないで!!



「す、すみません。急にこんなこと」

「お、あ、え、う、うん」

「ですが、本当に……本当によかった」



 いや何さりげなくまた手握ってきてるの?



 え?馬鹿なの?馬鹿でしょ?可愛い好き。



 すると部屋の扉が開き、微かな風が頬を撫でる。



「二人とも起きていたんですね」



 エリカがトレイに料理を持って現れる。



「やはりエリカ様ですか。この度は私達の命をお救いいただき感謝致します」

「いえいえ、聖女として、人として当たり前のことをしたまでです。お二人とも体調の方は大丈夫ですか?」

「はい、エリカ様の力のおかげで大事はありません」

「問題ない」



 俺の言葉に二人が目を丸くするも、何故か納得したように二人で微笑みあう。



 何その通じ合ってますよ感!!



 写真に収めてぇ〜。



「それに謝るのは私の方です。この度は教会がご迷惑をおかけして誠にーー」

「テメェは関係ない」



 言葉を遮る。



「この件の主犯は司教と邪神教であり、お前は何も関係してない。だから全部俺様の手柄だ」



 またしてもエリカの目がビー玉みたいになる。



 そして



「そう……言ってくれるんですね」



 一粒の涙が落ちる。



 え!!



 そ、そんなに傷つけた!!



 結構軽いアクトムーブだった気がするんだけど……



「お兄様ァ」



 なんかリアの方はウットリしちゃってるし。



「まぁ司教を突き出さないでいてやる条件でも話してーー」

「いえ、今回の件は既に騎士団に報告致しました」



 えーーーーーーーーーーー



 エリカさんそれが嫌で手を出さなかったんじゃないんですか?



「私も考えが浅かったんです。まさかリアさんがここまで危険な状況だったとは……」

「気にしないで下さい……とは言えません。ですが、あれは私が決めたことです。それだけは、どうか心に」

「お気遣い、感謝します」

「それにーー」

「ふむ」



 何だかこんな状況で場違いかもしれんが



 ヒロイン同時の会話が目の前で見れるって最高だな。



 きっとこの光景を撮影して現代で売れば一瞬で億万長者であろう。



 ちなみに俺は同担拒否である。



「お兄様もそれでいいですか?」

「え?うん」



 何だ?



 なんかいつの間にか勝手に決まってるんだが。



「では明日からは三人で学園に行きましょうか」



 リアが元気いっぱい微笑む。



 ぐへへ、可愛いでちゅねぇ〜。



 俺は現実逃避した。



 ◇◆◇◆



「どうしよう」



 どうやら今回の件にかなり責任を感じたエリカは、どうにか恩返しがしたいという話になり、ならば俺とリアを守らせてもらうという話になったそう

だが



「エリカと一緒にいると色々動きにくいな」



 とりあえず後から思いっきり拒否した。



 拒否したが譲られなかった。



 特にリアの押しがすごい、てか怖い!!



 何だか目のハイライトも暗い気がしたもん!!



「なぁルシフェル。俺って何か間違えたかな?」

「ん?よく分からないが、我はいいことだと思うぞ」

「そうだったー、こいつ聖人(神)だったー」

「アクトよ!!それは聞き捨てならんぞ!!我は伝説の邪神ぞ!!」

「はいはい邪神(笑)邪神(馬鹿)」

「むふー、そうだ、敬え敬え」



 俺はヒロイン以外には萌えないが、何となく頭を撫でた。



「これ以上エリカと仲良くするのもいけないな」



 これは何かしら手を打つ必要があるな。



 ◇◆◇◆



 一応のため俺とリアは数日学園を休み、久方ぶりに学園に行く日が訪れる。



「やっぱり普通のベットが一番いいな」



 教会はくだんの件によって信用が落ちてしまい、ただでさえ厳しい状況がさらに悪化すると思われたが、どうやら謎の出費者によって大金が設けられたようだ。



「謎の部分はアクトじゃないか」

「そういうのはミステリアスにする方がカッコいんだよ」

「おお!!確かに!!」



 馬鹿で遊んでいると



 コンコン



「お兄様起きていますか?いや起きてますよね」



 いや起きてますけど。



 ますけど何で知ってるの?



「隣の部屋なので音が聞こえるんです」



 何で自然と心読んでくるの?



「妹だからです」



 怖いよぃ〜。



 確かにゲームでリアを選んだ時ちょっとだけヤンデレ気質があるなぁと思ってたけど、何だか原作よりも少しSっ気がある気がする。



 まぁそれはそれで愛されてる感じがして嬉しいけど……



 いやダメだよ!!



 愛されちゃダメだよ!!



「ふぐぅ(嬉しさと悲しさによる葛藤)」

「お兄様!!大丈夫ですか!!どこかお体の調子が」



 な、何とか突き放さなければ



「う、うるさい!!俺様が一人が好きなんだ!!お前みたいな可愛……うるさい妹と話すのも億劫なんだよ!!」

「そ、そんな!!」



 さすがに効いただろ(涙目)



「お兄様が億劫なんて難しい言葉を使えるなんて、しっかりとお勉強されてるんですね」

「馬鹿にするな!!」



 なんか全て良い方向に持って行かれるんだが!!



「それに普段お兄様お一人で喋っていますよね?本当は寂しいんですよね?」

「寂しくねぇよ!!」



 クソ!!



 これは諦める気配がないな。



 だけど学園には行かなきゃだし



「しょうがない」



 俺と一緒にいたくないと思わせればいいだけなん

だ。



「行きましょうか」

「俺様の横に立つな。目障りだ」

「はい!!」



 そう言ってリアは俺の横から動かなかった。



 ◇◆◇◆



「お兄様、どうして裏門から出るのですか?」

「俺はあのエリカとかいう女がめちゃくちゃ好……嫌いなんだ」

「そうなんですか(スキライ?)」

「だからあいつとは学園に行かない」

「それは私と二人きりの方がいいということですね?」

「違う」

「ではエリカ様を連れてきますね」

「そうだ」

「やはり!!」



 リアよ、それでいいのか?お父さん心配だよ?



「ですがやはり邪神教は危険です。エリカ様の護衛が無くては危険ですよ」

「ハッ!!俺様が襲われれば周りの人間が盾になってくれるだろうーー」

「嘘ですね」



 裏門にはエリカが立っていた。



「すーーーーーーーーー」

「お待たせしてすみません、エリカ様」

「いえ、私も先程着いたばかりですので」



 もう何だか俺ダメな気がしてきたよ。



「「それではお兄様(アクトさん)」」



 行きましょうか



「ラスボスって……難しいんだなぁ」



 俺は涙を流した。



 ◇◆◇◆



 俺は頑張った。



 頑張って嫌われようとした。



だけど嘘見破りさんに、全部ポジティブ変換さんが相手じゃ厳しいよぉ。



「おはようリアさ……アクト様に聖女様!!」



 この前リアに話かけていた男子生徒が現れる。



「ど、どうしてアクト様なんかと一緒に……」



 おいコイツ普通に馬鹿だろ。



 俺が本物のアクトなら今頃お前の首は吹っ飛んでたぞ?



 俺はあいつとは違うから聞かなかったふりするけど。



「何ですかその言い方、お兄様に失礼ですよ?」



 逆にリアが怒った。



「確かに今までのお兄様はゴミで馬鹿で弱くて人として最低な方でしたが、今のお兄様は変わったのです」



 あれれ?



 俺の妹の方が失礼だぞぉ?



「き、きっと脅されているんだ!!最近起きた教会が邪神教と繋がっていた話も、きっとアクト様が起こしたんですね!!」



 わぁ想像力豊かなことですわね。



 悪気がないとはいえ、エリカが悲しそうに俯く。



 うーん、やっぱりコイツ殺そうかな?



「殺しはいかんぞ」

「分かってる」



 う〜む、アクトらしく、そんでいてヘイトをどうにか俺に全部向けるには……



 俺はリアとエリカの肩を抱き



「グハハハ、気分がいいな。こういう俺様とギリギリ釣り合う目麗しい美少女を無理矢理侍らせるのは最高だなぁ」



 何だかアクトと俺が混じったようになったが、まぁどっちにしろキモいだろう。



 みるみる顔が真っ赤になっていく男子生徒。



 これで勝手に勘違いしたコイツが教会の件を俺と勝手に結びつけてくれる。



 これなら皆の勘違いの原因が俺となる。



 これでエリカが少しでも楽になるかは分からないが……まぁ自己満足かもな。



 エリカの顔を見る。



「……」



 アワアワしている。



 男子生徒と同じように顔は真っ赤だ。



 右を向いてリアを見る。



「そ、そんな、可愛いなんてーー」



 なんか舞い上がってる。



「お、覚えてろよーーーーーー」



 男子生徒は走り去った。



 何だよ、俺より悪役出来てるじゃん。



「あ、あの、アクトさん。そ、そろそろ離していただけると」

「あ、すみません(早口)」

「お兄様、もう少しこのまーー」



 素早く二人から手を離す。



 なんか反射的にやってしまったが、俺大胆過ぎひん?



 今夜ドキドキして眠れないかも……。



 ◇◆◇◆



 そして学園に着く。



「それでは私は教会に戻りますね」

「はい、ありがとうございました」



 エリカが教会に帰る。



 すると



「おはようリアちゃん」



 真と



「おはようリアちゃん。それと、アクト」



 ニヒル顔の桜がいた。



 もはや俺に対しての様呼びは消えてしまっている。



「お二人とも、おはようございます」

「それにしても二人で一緒に登校するなんて初めて見るね」

「俺様ーー」

「はい。私とお兄様は仲良しなので今日から一緒に!!登校することになりました」

「へぇ〜」



 な、なんかバチバチしてないっすか?



 二人の後ろに龍と虎の幻影が見える。



「ふ〜ん。いいんじゃない?兄妹同士!!仲良くて」

「そうですね。まぁ、私とお兄様の血は繋がっていませんが」

「「え?」」



 真と桜が驚嘆を露わにする。



「ですので!!兄妹同士でもあり、一人の男と一人の女でもありますね」

「二人の血が繋がっていないってどういーー」

「まぁそれが事実かどうかはさておき、アクトが好きなのは私!!それが事実何だよ」

「いや俺様はーー」

「それはLoveではなくただのLikeでは?それに、お兄様の気持ちが既に移ろいでいる可能性も考慮に入れてみては?」



 俺と真はただ黙ることしか出来なかった。



 ◇◆◇◆



「じゃあまたねぇ」

「はい、またお昼休みに一緒に」



 桜とリアは結局仲良く別れた。



「お兄様も一緒にーー」

「食わん」

「そうですか、ではまた後の機会に」



 俺は色々間違ったかもしれない。



「それではまた放課後」



 リアが笑顔で手を振る。



「でもまぁ、及第点だろ」



 さすがに甘すぎるな。



 これでリアの抱えている闇が全て消えたわけではない。



 まだ大きな壁



 グレイス家との闘いが残っている。



「アクトよ」

「何だ」

「頑張ろうな」

「お前には力を借りっぱなしだけどな」

「でも我はお前といると楽しいぞ」

「そっか」



 全員救う。



 全員だ。



 俺は再び歩み始めた。



 救済√2



 リア グレイス



 完



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