第8話 封印解除
「大丈夫ですか!」
叫び声の主であろう桃色短髪の女の子が俺を心配している。
召喚以前にも危ない目には会ってきたが、死を予感したのは久しぶりだ。
「あんまり大丈夫じゃない、でも君襲われてたんだろ? 早く逃げな」
「しかし! 傷が……」
「オイオイ、おしゃべりの時間は無いぜ!」
「おっと、俺様とはおしゃべりしてくれないの?」
姿を現した片目男の短剣をレイルが受け止めている。
「あんちゃん、人のこと言える立場じゃないよ、嬢ちゃんと逃げな!」
「なんだてめぇ、おしゃべりはモテねぇぞ──細男!」
「筋肉だるまに言われたくないねぇ、くっ」
レイルが押されている。突然の攻撃をかろうじて受け止めているが、体制が悪い。体格差もあいまって力負けしている。
「いや、加勢する。レイル結構負けそうだし」
「言ってくれるねぇ、──背中は任せたよ」
買い出し前にレイルから借りた短剣を抜き。片目男に熱い視線を送ると、またも消える。
女の子を連れ、レイルと背中を合わせ死角を減らす。
「あんちゃん良く聞きな、強力なスキルは発動条件なんかの制限があることが多い」
「わかった、観察力はある方だ。君、名前は?」
「アリシアです。」
「アリシア、俺たちから離れないでね」
突如。レイルの正面に姿を現し縦に一線。レイルは受けようと小刀を寝かせ動線上に配置する。完璧に受けきれると確信した。
「甘いぜ」
「がっ!」
片目男の短剣が一瞬消え、小刀とふれ合うこと無くレイルの肉を裂いた。
カバーに入ろうと振り向いた瞬間、背後から声がする。
「仲間の悲鳴は心配だよなぁ」
またも背の肉をかき分け冷たい鉄が通る。気を振り絞り、レイルとアリシアを掴み壁際へ避難する。
「いっってぇぇ──万事休すってやつか」
「っ! あの! それ!」
アリシアの細い指が指したのは緑色の腕輪だった。
「あなたは召喚者だったのですね! 腕輪を外します!」
「さあ、仕舞いだ」
片目男が現れ舌舐めずりをする。
アリシアが腕輪に手を添えると、切れ目すら無かった腕輪が二つに割れた。
スキルが使える。でもどんなスキルなんだ。
俺の疑問に答えるかのように、頭のなかでひとつの言葉が浮かぶ。
『転移』
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