第7話 暗殺者
────
──
地下通路を進むと、城の小部屋に出た。
「買い出しとはいったが、ものの売り買いなんてないからね、国の食糧庫からちょうだいするよ」
「異世界にきてやることが泥棒だとは思わなかったよ、でもワクワクしてきたっ」
レイルは慣れた様子で月明かりが照らす広い廊下を進む。
「あんちゃん、ついたぜ」
召喚前にアメリカで見た大型倉庫の倍はありそうな広さに、数える気力も湧いてこないほどの棚の数、その全てにみっちり食品が並んでいる。国民全員の食料を賄うだけの食料なのだろう凄まじい量だ。手際よくそれを布で包んでいくレイル。
俺も包もうと布切れを広げたその時。女性の叫び声が聞こえた。
瞬間。俺はまたも駆け出していた。
「ちょ、あんちゃん!」
恐怖に怯える声だった。戦場となった町で死を予感した人たちの声とおなじだ。
光が漏れている部屋からまたも声がする。
「ち、近付かないでください! 今の管理は間違っています」
「あんた王族だろ? 甘い汁をすすっておけばいいものを、こりゃ貴族方から煙たがられるわけだ。悪いが死んでもらうぜ」
「ちょっと待ったあ! とうっ!」
昼間と同じく、勢いよく脚を振ったが空を切った。
片目に古傷を持つガタイのいい男に一瞥される。
「誰だお前は、なんでもいいか、嬢ちゃんと一緒に消してやるよ」
片目男がそう言った瞬間、消えた。確かに目の前にいた男が消えた。目に写るのは豪華に飾り付けられた壁面とソファがひとつ。
「背中ががら空きだぜ」
声が聞こえると同時に、背中の肉の中を冷たい鉄が無理やり通って行った。少し遅れて、鉄の通り道が赤く染まっていく。
一瞬、姿を現したが片目男はまたも消える。これが──スキルか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます