あの日から人類は特殊能力(スキル)を使えるようになった。

るるかチャンネル

あの日、人類は特殊能力(スキル)を手に入れた!!

私の名前は『山田太郎』同姓同名の人には悪いが、必ずネタと勘違いされるが本名だ。


そして職業は【ヒーローなんでも屋


あの日以前であれば、子供達が思い描くのは悪い奴をバッタバッタと倒すカッコいい存在だったと思うけど、【あの日】から人類は変わってしまった。


まずは【あの日】に関して説明しよう。


あの日とは『人類が突然特殊能力に目覚めた日』のことだ。


3年前…。突如全ての人類の頭の中に謎の男の声が響いた。


「新世界の始まりだぁ〜〜!!全人類に特殊能力を与えよう」

「この特殊能力を正義の為に使うもよし、悪用するのもよし」

「次の変化まで10年楽しんでね」

「そして、私を楽しませてくれ」


能力をくれた人公認で、正義の為に使っても、悪の為に使ってもいいと宣言された特殊能力。


コレには宗教関係者が色々な解釈を出していた。


そして次の変化まで10年に関しても、色々な憶測がSNSで飛び交っていた。陰謀論が多いこと。


ただ…。今までの陰謀論などと違った事はただ一つ。


この日を境に、人類は本当に未知の特殊能力を手に入れた。


今回全人類が手に入れた特殊能力だが、凄く役に立つ特殊能力から…。


何の役に立つのか意味不明の特殊能力まであった。


つまり、この日ハッキリと人類は『勝ち組』と『負け組』に特殊能力で分けられてしまった。


人類は、この日を【始まりの日】と呼んだ。


そして私もこの日、特殊能力を得た。


【特殊能力】


3分の願いごと


誰かに助けを求められた時にのみ発動する。

能力発動中は全ての能力が3分だけ3倍になる。

この能力は1日3回まで使える。


特殊能力によって、人類はハッキリと『勝ち組』と『負け組』に別れた、なんて言ってみたが。


俺の特殊能力は正直微妙なんだよな。


この能力を手に入れて最初は、誰かに助けを求められたら最強になって悪い奴を倒せる!!


そんな凄いヒーローになれる能力だと思ったが…。


現実は甘くなかった。


全ての能力が3倍になる部分は凄く強かった。


何かだけ数倍シリーズの特殊能力も多く確認されているが、何か一部分の能力だけが数倍になるのは大はずれと世間から認識されている!!


例えば跳躍力10倍の能力は悲惨だった。


この能力を発動させると、本当に跳躍力だけ10倍になる!!


本気で飛んだその特殊能力者は10M近い高さまで垂直に飛んだ。


周りは凄い跳躍力に驚いたが…。数秒後に悲劇が起きた。


跳躍で最高点まで辿り着いた後に、その能力者に待っていたのは重力によって地面に叩き付けられる現実。


10M近い高さから道路に叩きつけられた能力者は即死だった。


未知の能力を手に入れたのだから、その他のバランスはご都合主義な感じの調整をしてくれてるとばかり思っていたが、特殊能力以外に関しては【始まりの日】以前と何も変わっていないのだ。


普通の人間が一部能力だけ10倍になっても、使いこなせないのが現実だった。


その点、私の能力は全ての能力が3倍になるので、バランス良く使いこなす事が出来てシンプルに強かった。


但し…。もう一つの条件がね。


誰かに助けを求められないと発動出来ない能力への縛り。


それこそ一人でパトロールして、犯罪者と戦闘になった場合。


助ける人がいれば、全ての能力が3倍になるので、正直負ける気がしないレベルの強さになれる。


ただ、誰もいない時に戦闘になれば、何の特殊能力も発動しないので、自力で何とかしなければならず。


いちお格闘技をやってるので、一般人には負けないつもりだけど、武器なんて持たれたら普通に負ける可能性も高い。


能力を得たのが高校3年生の時。


進学しないで自分の特殊能力で何とかして生計が立てられないか?考えた末辿りついたのが【ヒーローなんでも屋


なんでも屋であれば、何かを頼まれる事が基本だから、発動条件を達成するのはカンタンなはず。


そして、高校卒業と同時に【ヒーローなんでも屋】になって2年ちょい!!今月の収入は20万ちょい。


ここから税金や家賃などを引くとほぼお金が残らないのが、悲しい現実なんですよね。


家賃5万でそれなりに広くて綺麗な事務所を気に入って速攻契約したはいいが、田舎過ぎて仕事が全然無い。


収入の殆どは、田舎の人出が足りない農家さんに頼まれて3分超人状態で作業+残りの時間は普通に働いてバイト代を貰ってるだけ。


コレって只のバイトだよね。


そんな本物のヒーローとは程遠い、農家のバイトばかりしていた毎日だったが。


遂にこの時がやって来たぞ!!


俺の前にいるのは、農家の作業手伝いの依頼主ではなく。


初めてのヒーロー業での依頼希望者様だ。


「今回はご依頼頂きありがとうございます。山田太郎です」


「今回は警護のご依頼希望との事ですが、詳しく依頼内容をお聞かせ頂けますか?」


営業スマイルで、目の前のちょっと暗い雰囲気の女性依頼主に話しかけた。


「私の名前は山田花子です」


「お願いしたいのは…。少し前からストーカー被害に遭っているのですが、最近そのストーカーの行動がかなり過激になってきて…。身の危険を感じるレベルになってしまって。」


「警察には相談したのですが、実際の被害が無いとパトロール強化位しか出来ないと…。」


「お願いしたい依頼は、ストーカから守って頂きたいのと出来ればストーカーをしている方の特定です。」


初のご依頼内容はストーカーから護衛+犯人の特定。


俺の特殊能力的にはかなり相性が良い依頼な気がする。


依頼者の花子さんとある程度一緒に行動できれば、ストーカーが現れたタイミングで助けを求めて貰い、特殊能力を発動させる。


全能力3倍を使えば3分も掛からずに対処可能なはず。


後は依頼主の花子さんに確認を取る。


「内容的には可能ですが、少しだけ条件があります」


「私の能力は今回のご依頼にぴったりな能力だと思うのですが、発動条件があります」


「その発動条件が誰かに助けを求められる事です」


「その為、ストーカーが出た際に助けを求めて貰う為に一緒に行動する必要がありますが大丈夫でしょうか?」


「その点が大丈夫であればご依頼を受けさせて頂きます」


悪い条件では無いと思うが、花子さんは依頼をしてくれるのか?緊張しながら返事を待っていると。


「その程度のことであれば大丈夫です」


「ある程度一緒に行動して、ストーカーを発見したら助けを求めれば良いだけですよね?」


「はい。それで大丈夫です」


いよいよ初のヒーロー業の依頼がスタート。


まずは花子さんの家まで、このまま一緒に向かうことになった。


運が良ければ、この帰り道にストーカーが現れるかも?


最低料金として1週間分の基本料金1日15000円を先払いで貰っている、1週間以内にストーカーを特定して事件を解決した場合でもこの料金は貰える契約になっている。


更に事件を解決した場合には、成果報酬10万円を設定しているので、出来ればストーカーを特定して捕獲まで出来れば完璧。


即ストーカーさんが出て来てくれれば最高だ。


そんな事を考えながら花子さんをお家へ送ってる最中に、何度か突然モノが飛んで来た。


誰もいない所から色んな物が飛んでくるところから、何らかの能力を使っているのは間違い無いのだが、どのような能力なのか?


まぁ〜正確な能力内容は分からないけど。


コレなら全能力3倍にすれば大丈夫そうだ。


「私の特殊能力を発動させて、速攻捕まえるので」

「花子さん私に助けを求めて下さい」


「太郎さん助けて下さい」


「承りました」


俺の特殊能力が発動!!俺の体を青色のオーラーが包む!!


このオーラが黄色になったら能力が使える残り時間が2分。


更に赤色になると能力が使える残り時間が1分。


3分しか無いので時間を無駄に出来ない。


【まずは音に集中する】

【全ての能力が3倍に上がるので、聴力も3倍になる】


【あれ?花子さんの横から心音がもう一人分聴こえる!!】


「花子さんしゃがんで下さい」


【花子さんの頭がさっきまであった場所に、廻し蹴りを喰らわす】


「グヘッ」


【姿は見えないが手応えあり!!このストーカーの能力は透明化?もしくはそれに近い能力のようだ】


【そのままの勢いでストーカーがいると思われる場所に裏廻し蹴り→前蹴りを入れる】


「グボっ…。ドスっ」


ストーカーにガードされた感覚が無いので、3倍増しの蹴りがモロに3発入って倒れたようだ。


オーラはまだ青色のままで1分も掛からずに解決。


気絶したのが理由か、ストーカーの透明状態が解除された。


ちなみにストーカーは全裸だ…。多分服まで透明になれないので裸なんだろうが、通常よりも更に犯罪者感が強い。


「花子さんこの人に見覚えありますか?」


全裸の犯罪者を見たくは無いと思うけど、我慢して貰うしかない。


「はい。見たことがあります」

「この方は私の住んでる近くのコンビニ店員さんです」


「微かに面識があるようですけど、警察呼んで大丈夫ですか?」


警察を呼ばないで欲しい場合には、それなりの対応も可能なので聞いてみると。


「ただ面識があるだけレベルなので、警察を呼んで頂いて大丈夫です」  


その後警察が来たので事情を説明したところ、犯人を連れて行ってくれた。


後ほど捕まった犯人が自供した内容的には、花子さんが相談に来た日に拉致する計画だったようだ!!


花子さんがいつもコンビニで挨拶してくれたから、自分の事が好きだと思ったんだって。怖いね。


本当にギリギリのタイミングでの依頼だったけど良かった。


結果的には契約した日に犯人確保まで出来て、かなり報酬的には美味しかった。


依頼者の花子さんからもお褒めの言葉を頂いた。


「本当依頼して良かった」

「ストーカーを撃退してくれた時、凄くカッコよかったです」


何か花子さんの呼吸が荒い…。


「もうこれは運命ですよね」

「私だけのヒーローになって下さい」


花子さんがヤバい。


何かヤバい雰囲気出て来たから、速攻逃げるか…。


「今回はご依頼ありがとうございました」


「またのご利用をお待ちしています」


ヒーローなんでも屋

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