第5話
「ふーん、怪しいけど嘘はついてないみたいね。私も散歩ついでに来ただけよ……いい場所ね、ここも、この街も」
「だろ!ここは結構穴場なんだよな!」
先ほどまで疑いの目を向けていた彼方から街並みに視線を変えて、警戒により固くなっていた少女の表情は少し柔らかくなっていた。
それから数十秒後、無言の時間が経ちそろそろ気まずさが漂い始める。
「……私の名前は不知火聖(シラヌイヒジリ)。あなたは?」
なぜ今日初めて会った人に名前を教えたのか不思議に思いつつ、条件反射のように口を開く。
「俺は……」
名乗ろうとした刹那のことだった。
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