第4話

物珍しさから何も悪気がないが、彼方は足音をできるだけ立てないようにしそっと物陰からその者の姿を覗く。

赤いセミロングに赤いマフラーを首に巻いている可愛らしい顔の少女。

こんな早朝に一人の少女が公園のベンチで街並みを眺めていた。

彼女の独特な雰囲気に彼方は、一枚の美しい絵画を見ているのかと錯覚し見惚れていた。

「誰?そこに誰かいるの?」

少女の一声に我を取り戻し、彼方は物陰から姿を現した。

「ごめん、別に怪しいものじゃないんだ、まじで」

「不審者ってそういう自己紹介が流行ってるの?」

彼方に疑いの目を向ける少女に対して、自分の言動が確かに不審なものだと理解する。

「あなた、こんな時間に何してるのよ?まさか本当に不審者じゃないわよね?私のストーカーだったりして……」

少女はそう怯えて彼方から距離を取ろうとベンチから立つ。

それを見て、彼方は不審者疑いを晴らそうと焦り始める。

「俺は朝のランニングでいつもここに来ているんだけど。君こそこんな早朝に何をしているんだよ?」

彼方は自分の来ているランニングウェアを強調して見せ、証明する。

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