第3話

最初は軽くジョギングをして、眠っている身体を揺らし起こす。足の先から温まりだしたら次はお決まりのコースを駆ける。

彼方の脚力は常人並みだが、習慣化されたランニングや肉体改造のおかげで少しは早くなった。しかし、その成長した速力でもあの部隊の中では平均だろう。中には50m三秒なんて化け物も存在する。

「はぁ……はぁ……、一応タイムは速くなってるな」

目的地までの時間を測っていた腕時計を止めて確認する。

そこは見渡せば街を一望できる高台にある無名の公園。あまり知られていない穴場で、彼方のお気に入りの場所である。特にこの早朝の時間帯には人気がほとんどなく、朝特有の街並みの音、香りが堪能できるのだが……

「珍しいな、こんな朝から人がいるなんて」

思わず声を出してしまったことに我ながら恥ずかしくなるも、それはこれまで数百日と欠かさず走ってきたが、初めてのことだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る