第5話


 右手にブラックジャック、左手に齧歯の短刀を持つ事にした僕は、二匹目、三匹目の突撃兎は綺麗に倒す事に成功した。

 具体的な手順としては、回避後、ブラックジャックで攻撃、怯んだ所を短刀で刺して止めを刺すといった具合にだ。

 その結果、二匹目と三匹目からは毛皮と肉も文句なしの状態で剥ぎ取れたので、武器防具の錬成と、ついでにレベルアップの処理を行おうと思う。

 そう、三匹目を倒した僕は、また一つ強くなっている。


 まあそれはさて置き、先ずは錬成だ。

 突撃兎の角で地面にガリガリと陣を描き、三匹分の角と骨を陣の中に並べた。


―武器錬成・槍―


 地に手を突き、光と共に生まれ出でるは、三匹分の角が圧縮された穂先と骨の柄を持つ槍。

 兎角槍(とかくそう)、適正レベル5。

 良い出来だと思う。

 ただ少し、今の僕では適正レベルが足りないから、そこは後で戦闘スキルを取って何とかしよう。


 次に陣の中に並べるのは、二匹分の突撃兎の毛皮だ。


―防具錬成・足―


 武器錬成とは少し色の違う光を発し、毛皮は膝までを覆うレガースへと変じる。

 兎のレガース、適正レベル3。特殊効果、DEX+1。

 此方も中々良い出来だった。

 特にこのレベルでの特殊効果は有り難い。


 僕が最初に足防具を作成したのは、草むらに踏み込む準備である。

 草むらでは穴ネズミの潜む穴を発見し辛いが、きっちりと防具で足を覆っておけば穴ネズミの奇襲も大きな脅威にはならないだろう。

 つまり、これで草むらに踏み込む準備が出来たという訳だ。

 まあもう直ぐ日も暮れる事だし、草むらに踏み込むのは明日になるが。

 兎に角今日は、レベルアップの処理だけでも終わらせてしまおう。



STR:2→3

INT:1

DEX:1→2+1

VIT:2/2

MND:1/1



 STRを伸ばして物理攻撃力を上げ、DEXを上昇させて敵の攻撃を回避し易くする。

 足防具の特殊効果もある事だし、もう余程油断しなければ平原の敵から攻撃を喰らう事はない筈だった。


 次はスキルの習得だ。

 槍を手に入れたのだから槍術スキル……、と行きたい所だが、実はそれは余り良い手では無い。

 僕が目指すのが単なる一流の戦士であるなら、槍術を選ぶのはありだろう。

 けれども僕の目的はこの世界からの脱出で、そこまでの道のりを単独で戦い抜く必要があった。

 この世界では、どんなに一芸を極めようとも、相性の悪い敵には苦戦を強いられる羽目になる。


 複数の戦闘スキルを習得するのも一つの手だが、残念ながらスキルポイントは有限だ。

 他にも必要なスキルは多いし、特に魔法に関しては無ければ突破できない壁が幾つも存在する為、そちらに多くスキルポイントを割り振る羽目になるだろう。

 だから僕が選ぶのは、武器全般取り扱いという、特定武器に特化したスキルに比べれば8割の効果しかないが、その代わりに全ての武器を取り扱えるというスキルを選ぶ。

 そう、また8割効果のスキルなのだ。


 そしてもう一つのスキルだが、インベントリという名前のスキルを選択する。

 このスキルは1レベルに付き50kgまで、異なる空間に荷物を収納し、必要な時は瞬時に取り出せるというスキルだった。

 僕は錬成武器を使用する段階で鍛冶スキルに比べれば八割、更に武器全般取り扱いを習得しているので特定武器に特化したスキルに比べれば8割、つまり総合的に6割四分の性能しか発揮できない事が今の段階で確定だろう。

 だが強みとして、様々な種類の武器を容易に揃え、その全てを使用する事が出来る。

 だからこそ、その揃えた武器を収納し、任意のタイミングで取り出せるインベントリスキルは必須だった。

 純粋に荷物を運べる量だけでいうなら、所持重量増加スキルの方が効率は良かったけれども。



戦闘スキル

武器全般取り扱い1レベル(new)


魔法スキル

なし


他スキル

武器錬成1レベル 防具錬成1レベル インベントリ1レベル(new)



 ……さて、帰ろうか。

 レベルアップも終わった事だし、僕は修得したばかりのインベントリに、突撃兎の肉を放り込み、弱者の町を目指して歩き出す。

 肉を売れば、衣類の替えを手に入れて、一晩の宿を求めれる位の金銭にはなる筈である。

 残念ながら此処まで頑張ってくれたブラックジャックは、既に靴下の繊維がボロボロになり、後数度振れば壊れてしまう有様だ。

 元より間に合わせの武器だったのだから、此処は素直に諦めて、兎角槍を武器に狩りをするのが良いだろう。


 弱者の町に戻る道中、遠目に神官戦士によるパワーレベリングを行っている連中を再び見掛けた。

 数匹の敵を一度に相手に出来る辺りは、わざわざ単独の敵を探さなくて良いので少し羨ましいが、連中の顔には色濃い疲労が貼り付いている。

 もう直ぐ日が暮れるというのに、神官戦士は叱咤激励し、少しでもレベルを上げさせようとしている様だった。

 まあこの世界でまともに生活しようと思うなら、ある程度のレベルは必要となるので、別にあの神官戦士が間違いという訳じゃない。

 ただ単に、その行き付く先が神の食卓であるというだけの話なのだ。

 もちろんそれだって寿命を迎えた後の話なのだし、受け入れられる者には大したデメリットじゃないのだろう。


 僕は真っ平ごめんだが!



 兎に角帰ろう。

 戦いで気持ちは高揚してるが、身体はそれなりに疲労している。

 疲労したまま無理をすれば、思わぬ不覚を取りかねない。

 明日に備え、宿でしっかりと心と身体から疲れを抜くのも、これからの長い戦いを勝ち抜く為には必要なのだ。




名称:ノア・グロード

種族:人間

年齢:15歳

髪色・瞳色:黒・黒


レベル:3


STR:3

INT:1

DEX:2+1

VIT:2/2

MND:1/1


戦闘スキル

武器全般取り扱い1レベル


魔法スキル

なし


他スキル

武器錬成1レベル 防具錬成1レベル インベントリ1レベル


称号

異端者


ステータスポイント:0

スキルポイント:0



所持品

兎角槍

兎のレガース(DEX+1)

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