第22話 夏希は達也とずっと仲良しの約束する
達也の退魔師ランクが上がってから何日かたった頃に、夏希は達也と共に近所のタツエスーパーにやって来ていた。今まで食材の買い出しは夏希だけで行っていたのだが、昨晩に達也が荷物持ちをしますと言って譲らなかったためだ。
最初夏希は遠慮したが、今の夏希に食材が重いのは事実だった。魔法少女に変身すれば上がった身体能力で楽々と運べるが、あのフリフリしたヒラヒラの衣装で大勢の人目に触れるのは抵抗がある。
そういった訳で日常生活では普通の女の子の筋力しか出せない夏希は、最終的に達也の申し出に甘える事にして食材を買い込んだ。
「達也くん、そっちの袋の方が重いけど大丈夫?」
「身体能力強化の術を使ってるので平気です。そっちの袋も僕が持ちますよ。」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、達也くんに全部持たせて手ぶらで帰る訳にはいかないよ。それよりも身体能力強化の術まで使えるんだね。すごいよ。」
「まだ練習中ですけどね。まだ上のランクを目指すなら覚えておいたほうがいいって言われたんです。」
実は達也に身体能力強化の術を覚えるよう助言したのは、朝露の魔法少女の水面ひかりだった。上のランクだと速い妖魔も出るし、日常生活で頼りになるところを夏希に見せることもできると言われた。
それと恋愛では強引にいかなければいけないことがあり、いざとなったら押し倒して既成事実を作るように助言されている。既成事実ってなんだろうと達也は疑問に思ったが、ひかりから感じる圧力が凄くてその場はうなずいておいた。
「達也くん、やっぱり重い?
こっちの袋と取り替える?」
夏希から心配そうな声で聞かれて達也は我に返った。
「ごめんなさい考え事をしてました。重くないですよ、平気ですからいきましょう。」
夏希は達也を心配そうに見ていたが、達也がニコニコと笑顔のままなのを見て表情を緩めた。
「練習中って言ってたけど、ちゃんと身体能力の強化ができてるんだね。私の退魔師ランクなんかすぐ抜かされそう。達也くんが上のランクになっても、私と仲良くしてね?」
「もちろんです。ずっと仲良くしたいです!」
「やったぁ、約束だよ!」
夏希は達也に空いている方の手の小指を差し出し、ずっと仲良しでいようねと約束の指切りをして帰り道を歩き出した。
達也は竜ヶ崎家に帰ってからも夏希の力になろうとしてくれた。
「料理で何かお手伝いできる事はありますか?」
「料理もお手伝いしてくれるの?
うーん、今日は切って焼くだけだからなぁ。また今度お願いしようかな。」
「そうですか……。」
何だかしょんぼりしてしまった達也を見て、夏希は少し吹き出してしまった。
「そんなに落ち込んじゃうとは思わなかったな。じゃあ明日は餃子パーティでもしよっか。餃子包むのを手伝ってくれる?」
「はい、是非!」
夏希のお願いに、達也は表情をぱああっと明るくさせる。夏希は達也の反応が可愛いくて顔を綻ばせた。
夏希は料理を作りに台所へ戻ろうとしたが、その時に家の電話が鳴った。
「もしもし、竜ヶ崎です。」
「宮園です。夏希ちゃん、こんにちは。」
電話は退魔師の仕事で何かとお世話になっている、宮園梅子からだった。
「梅子さん、母さんなら居ませんよ?
今は父さんの赴任先へ行ってまして、しばらく一緒にいるつもりらしいので。」
「今回は夏希ちゃんに相談があって電話したの。武器の魔法少女として紹介したコルバーンさんを覚えてる?」
「ええ、覚えてますよ。コルバーンさんがどうしたんですか?」
「夏希ちゃんに相談したい事があるそうよ。明日にコルバーンさんにそっちに行ってもらうから、会ってあげる事はできるかしら。30分ほどで終わると思うわ。」
「30分だけですか?
それなら大丈夫ですよ。お待ちしてますね。」
夏希が電話を終えると、達也が話しかけてきた。
「あの、コルバーンさんが来るんですか?
餃子パーティはまた今度ですか……?」
少ししょんぼりした達也に、夏希は笑いかける。
「ううん、明日は予定通りに餃子パーティをします。私も達也くんとの餃子パーティを楽しみにしてるんだから、予定通りに開催です。安心してね。」
TS魔法少女ナツキ 退魔師の能力を受け継ぎTS魔法少女になった少年が、落ちこぼれ退魔師の美少年と想像もしなかったショタおね関係になる話 ぽよひこ @palzou
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