第14話 ひかりは夏希と達也をくっつける事を決意した

 朝露の魔法少女こと水面 ひかりは今が絶好の好機だと思った。

夏希と同じ学校にいる友達に、先日の夏希の失恋の様子を聞いたのだ。

夏希に悪いところがあったのかはわからない。しかし彼女に手酷く振られた傷心の友達の心を救いたいと思う。

そしてあわよくばTS魔法少女の夏希が男の子を好きになって、目の前で幸せそうにいちゃついてるところを見たい。

 前回は夏希にイケメン退魔師の写真を見せても反応が悪かった。

夏希の側にいる異性として、

話しに聞いていた命の恩人枠の達也は恋愛対象になりえるのか気になる。

夏希が達也を恋愛対象として見れそうなら、達也が夏希に相応しいかを見定める必要がある。


(というわけで、本日は夏希ちゃんと達也くんと沙雪ちゃんを呼んでいます。)


 家族連れもたくさん訪れるゲームセンターで遊ぼうと誘っている。

大きくて明るい店内にさまざまなゲームが揃っていて、辰江市で遊ぶ場所の定番のひとつだった。

腐女子の魔法少女は行動が早い。


今は沙雪と一緒に目的地の最寄りの駅で2人を待っているところである。


「ひかり、私のこの格好変じゃないかな?」


しかし幼馴染の沙雪から5回目の同じ問いかけをされて、さすがに光はちょっとキレ気味で返答する。


「似合ってるって何度も説明してるでしょう⁉︎

そのくらいカジュアルなほうが同年代の友達と遊びに行くのに合ってますよ。」


 沙雪は黙っていればクールビューティな13歳である。クルーネックのサマーニットに膝丈のスカートがよく似合っていて需要しかないとひかりは思うが、自信が持てない面倒臭い幼馴染であった。

 約束の時間まであと20分も相手をするのは大変だとひかりが考えていた時、夏希と達也がやってきた。


「沙雪ちゃん、ひかりちゃんおはよう。

私たちも早めに来たつもりだったんだけど、

お待たせしてごめんね。」


「私たちが早く来すぎたんだから、

夏希達が気にする必要はないわよ。」


「ええ、楽しみすぎて待ちきれない沙雪ちゃんが

早めに行こうと言って聞かなかったので、

夏希ちゃんが気にする必要は全くないですよ。

それより夏希ちゃん、自分の事を私って言ってましたっけ?

以前は俺、だったような?」


早く着いていた理由をバラされた沙雪から恨みがましい視線を向けられたが、

沙雪の可愛い部分を新しい友達に伝えてあげた事を感謝してほしいくらいだと思っている光は知らんぷりした。

それより夏希の一人称が変わったことが不思議で興味をひかれた。

聞かれた夏希は達也と目を合わせて、ふふっと笑うと言った。


「そろそろ女の子らしくしないといけないなって思って。まずは口調から、です。」


 そう言って微笑む夏希にひかりは衝撃を受けた。


(待って、これ夏希ちゃんと達也くんに何か素敵イベントがあったやつでは?

目の合わせ方が2人だけの世界を感じる。

そういえば今日の夏希ちゃんの服装も前の時よりフェミニンな印象だし、もしかして達也くんを意識してる?くっつけるしかないのでは⁉︎)


 夏希の服装は、袖がレースになっている白のTシャツに紺のカプリパンツを合わせ、スニーカーとキャスケット帽で動きやすそうな印象を受けるが、レース部分が健康的な色気を感じさせる。

そして達也はその夏希に時々チラチラ目がいってしまっている。


(達也くん、意識しまくり⁉︎

もう結婚すればいいんじゃないかしら。

でも放っておいてもくっつくかもだけど、仲の良い姉と弟みたいな感じで終わる可能性もある。

私が絶対に結ばれるように導いてあげないと。)


光がそんな風に思考している間に達也と沙雪が挨拶をしていた。


「はじめまして、富川 達也です。今日はよろしくお願いします。」


「はじめまして、神山 沙雪です。夏希の友達よ。あなたとも仲良くできたら嬉しいわ。」


光も挨拶をしておく事にする。


「はじめまして、達也くん。私は水面ひかりです。

早く仲良くなりたいので、今日一日だけでも私たちを名前にお姉ちゃんを付けて呼んでくれませんか?

沙雪お姉ちゃん、ひかりお姉ちゃん、夏希お姉ちゃんっていうふうに。」


「えっ、お姉ちゃんですか?恥ずかしいな。で、でもせっかく仲良くなろうと考えてくださったのですし、今日一日だけなら頑張ってみます。

よろしくお願いします、ひかりお姉ちゃん。

……あの夏希さん、夏希お姉ちゃんって呼んでいいですか?」


「うん、大丈夫だよ。」


「ありがとう、な……夏希お姉ちゃん。」


 実際にお姉ちゃんと呼ばれると少し恥ずかしかった夏希だが、弟みたいに思っていた少年から本当の姉弟のように呼ばれるのは嬉しかった。


「沙雪お姉ちゃんも改めてよろしくお願いします。」


「沙雪お姉ちゃん……悪くないわね。」


そう、悪くない、とひかりは思った。


(じっくりと2人を意識させあいましょう。)


その後、ひかりはみんなでプリクラやクレーンゲームやリズムゲームで遊ぶ時に、さりげなく夏希と達也をペアにしたり隣あうようにして反応を楽しんだ。

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