第8話 夏希は魔法少女の講習を受ける
魔法少女の3人のうち2人は、新しい友達との連絡先の交換を終えるとスマホを仕舞った。
スノーウィーマウンテンこと神山 沙雪は連絡先が増えたスマホを見ながらニッコニコだった。
そんな沙雪に幼馴染の朝露の魔法少女、水面 ひかりが声をかける。
「沙雪ちゃん、友達ができてよかったですね。」
「人聞きの悪いこと言わないで!
まるで私が友達いないみたいじゃない。
万が一にも一般人を戦いに巻き込まないように、 少し距離をとっているだけなんだからね。」
「夏希ちゃんを合わせても連絡先の登録10人に届いてないのに?」
「ホントに失礼ね⁉︎
夏希…じゃなくてサンダーストームと連絡先を交換したから丁度10人になってるし‼︎」
念願の連絡先2桁を達成した沙雪はひかりの言葉を強く訂正した。
2桁かそうでないかは譲れないポイントだった。
そこへ夏希の講習の進行をするために宮園梅子がやってきた。
「あら、あなたたちもう自己紹介は済んでるようね。それじゃあ講習を始めましょうか。」
「「梅子さん、お疲れ様です」」
沙雪とひかりが梅子に挨拶をした。
「ほら、夏希も挨拶して。
同じ所属で目上の人にはお疲れ様ですって言うのよ。似た言葉でご苦労様ってあるけど、
目上の人から目下の人に使う言葉だから使わないようにね。」
沙雪が社会人の先輩風を吹かす。
「お疲れ様です、梅子さん」
夏希の挨拶を見届けた沙雪はサムズアップで夏希を称えた。
「ふふっ、もう仲良しなのね。
夏希ちゃんその2人はベテランの魔法少女よ。
何かあったら相談しなさい。
2人は夏希ちゃんを助けてあげてね。」
「「「はいっ」」」
そして魔法少女の講習が始まった。
「まずは強化されている身体能力の把握からね。
夏希ちゃん、走ったり飛んだりしてもらえる?」
「わかりました。うわっ!」
梅子に促されて身体を動かすと、夏希が思っても見なかった速度と高さが出た。
「100メートルを2秒で走れて、軽くジャンプして5メートル飛び上がれるなんて……。」
「かなり強化されてるわね。お母さんの由紀恵より凄いわ。次は力の使い方ね。沙雪ちゃん、説明をお願いできるかしら。」
「わかりました。夏希、自分の中に魔力があるのは分かるかしら?わかった?
なら、まず攻撃に必要だと思われる分の魔力を汲み上げる。その方法だと制御しやすいわ。」
「なるほど、やってみます。」
夏希は予め用意されていた的に向かって、周囲に被害を及ばさない程度に掬い上げた力を放つ。
雷光が迸り的が粉々になる。軽い気持ちで使った力が引き起こした惨状に冷や汗が出る夏希。
「思っていたより高い威力が出ました…
街中では使えないですね。」
「自然のものとは違って、サンダーストームの雷を操る力は指向性が高いわ。だからある程度は平気だと思う。」
魔法少女の先輩である沙雪が助言をしてくれる。
「もしくは全力を出すために周囲を保護する方法もあるわ。魔法少女の魔力を集めた結晶を使うの。
高い威力の攻撃を出しても周囲の被害を完璧に抑えられるはずよ。」
沙雪の説明にひかりが捕捉を加える。
「夏希ちゃん、魔力結晶には他の使い途もあって、回復や自身の強化、妖魔の弱体化にも使えるから、結界を使わずに済む場合は温存も必要ですよ。」
「魔力結晶ですか。それもこの後の訓練で教えてもらえるんですか?」
「魔力結晶は教えたからすぐに作れるというものではないわ。
日々の生活の中で余った魔力から使い魔が作ってくれたり、魔法少女の力の源と同じ存在から取り出した力で作ることもできる。
夏希ちゃんの場合だと雷雨から作るということね。」
「ニョロナちゃん、俺の魔力結晶っていくつくらいある?」
夏希はリュックを胸にかかえると、中のニョロナ
ちゃんに聞いた。
「夏希は魔法少女になって日が浅いから、まだ一つしかないぞ。何となく感じ取れないかのう?」
「困ったな、雷雨なんて頻繁には無いし。」
「ワシと雷雨の魔法少女の力は繋がっておる。
夏希が外出中に雷雨に出会っても結晶を作ってやれるから、例えば隣町に雷雨が発生していて夏希がその場に行ってくれれば作れるぞ」
「魔力結晶は有ったほうが良さそうだからなぁ。
ニョロナちゃん、何か他に方法はないかな?」
「あんまり言いたくないが、ワシは使い魔として聞かれた事には答えなければならん。
雷雨の魔法少女にはもう一つ魔力結晶の補充方法がある。
男の体液を注がれることじゃな。キスでもいいぞ。
こちらの方法でも遠隔で作れるし、作ったものをすぐ使うこともできる。
ただ、たくさんの魔力結晶が欲しければ精液が一番なんじゃがな。つまり魔法少女の姿でエッチな事をすればいい。」
「ええっ、無理無理、無理だって。なんでなのさ。」
「雷雨の魔法少女の力は1000年前に竜神から賜ったものである。
竜神は精力にあふれ、子宝の神とする地方もある。そういう理由じゃよ。
今すぐどうしろってことじゃない。
女として生きていくうちに、自然とそういうことになるまで待てばいいさ。」
「男とそんなことになるなんて想像したくないな。
ニョロナちゃん、魔力結晶って次はいつできそう?」
「2、3日に1個くらいじゃなぁ。まあ節約しつつ気長にいくしかないわい。」
夏希は男とキスする自分を想像したが、すぐにその想像を振り払った。
沙雪はショックを受けている夏希の気持ちを切り替えさせるように次の指示を出す。
「何はともあれ次のステップね!サンダーストームは必殺魔法を習得してもらわないと。」
「……必殺魔法ですか?」
心惹かれるその言葉に、夏希のやる気がちょっと復活する。
梅子が壁のパネルを操作すると、先程破壊した的の代わりの新たなる的が間隔を開けて複数設置される。
「そう、必殺魔法。夏希にはまず範囲攻撃を覚えてもらうわ。妖魔が群れで出てくることもあるからね。
普通の攻撃の数回分の魔力を一気に汲み上げて放てばいい。あの5個の的があの範囲であの間隔だとやっぱり5回分くらいがいいかな。技のイメージはできてる?例えばパーっと拡散して弾ける雷とか。イメージができてるなら後は魔法の名前を叫んで完成ね。」
「えっ、魔法の名前ですか?……ちょっと恥ずかしいですね。」
魔法の名前を叫ぶのを恥ずかしがっている夏希に、もうひとりの講師役のひかりが説明する。
「夏希ちゃん、私も魔法の名前を口にするのは恥ずかしいんです。ですが魔法の名前を言った方が威力、制御ともに高いレベルで安定するんです。
すごく恥ずかしいのは最初のほうだけですから安心してください。一般人には聞かれる事がほぼないので大丈夫です。」
それは大丈夫なのか、と夏希は思った。
「えーっと、技の名前ってどうすればいいですか?」
「うーん、実際に見たら名前を思いつくかしら?」
「じゃあ技名抜きで1回使ってみますね。」
夏希は5つの汲み上げた力がぐるぐると範囲を廻るイメージをした。力を解き放つ。
雷がぐるぐる廻って的を
破壊しつくす。
「な、なんかさっきより威力が出たような……。」
夏希の頬に汗がつつつっと伝う。
「……雷がぐるぐる廻っているように見えたわ。
単発の攻撃は、周囲に威力がある程度流れてしまっているのかも。威力が逃げないから高威力になったみたいね。魔法の名前は、
「廻雷ですね、かっこいい魔法名ですね。是非使わせていただきます。」
「夏希、最後に強力な単体攻撃の技も考えておきましょ。実際に強敵と戦っているのならありったけを御見舞いしてもいいけど、今は訓練だから通常攻撃10回分で試してみて。」
梅子の出した新たな的に目掛けて力を放つ夏希。
的は完全に粉々になりサラサラと崩れていった。
「さすがね、サンダーストーム。
今の魔法名は
「ありがとう沙雪。魔法名が思いつかなかったので助かります。」
夏希の必殺魔法が完成したため、力の使い方の講習は終わった。
しかしいきなり妖魔との戦いに単独で投入することはできない。次は危険を伴う実戦訓練が行われる。
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