第6話 夏希は姉と買い物の約束をする

妖魔対策局で退魔師のライセンスと支給品を受け取った翌日、夏希は姉の美咲の着せ替え人形にされていた。とはいっても過激なものを着せられるのではなく、支給品の衣服を着てみせろという事である。


「下着は少しは可愛いのもあったけど。服は落ち着いた色とデザインばっかりだね。最初のうちはそれのほうがいいのかな。

夏希は下着もスカートも普通に着けてたけど、その辺は抵抗あったりしないの?」


「大丈夫だよ。その辺をいつまでも俺が気にしていたら母さんも気にしちゃうでしょ?それにオシャレとかまだ興味ないけど、似合う服があったら意外と楽しめるかもしれないしさ、挑戦してみるよ。」


「ごめん、夏希は母さんのことまで考えてたんだね。でもオシャレに挑戦する気はあるんだ。それなら今度いっしょに服を買いに行こう。」


「うん、頼りにさせてもらうね。」


「任せなさい。そういえば夏希、あんたにあげるものがあったんだったわ。待ってなさい。」


そう言って台所に向かった美咲だったが、しばらくして紙パックの飲料とコップを持って戻ってきた。


「どうぞ。無調整豆乳よ。毎日、コップ1杯半、300ミリリットルくらい飲んでね。

豆乳に含まれる大豆イソフラボンって物質が、女性ホルモンと構造が似てて美容にいいのよ。

こういった事を毎日続けてたら夏希もすぐに可愛くなれるわ。」


「あ、ありがとう。とりあえず、普通の女の子に見えるようにはなりたいな。」


「ダメよ夏希!ダメだからね。

あんたは私が女の子にしちゃったんだから、

あんたに女の子としての幸せを掴ませてあげる責任が私にはあるの。

絶対に可愛くしてあげるんだから。

ステキな!

彼氏が!

あんたに出来るようにね!」


「わかったよ、美咲姉ちゃん。頑張るからいろいろ教えてよ。」


夏希は苦笑い8割、家族が自分を想ってくれてる嬉しさ2割の笑みを浮かべた。

そして、ホントにわかってんの?と見つめてくる姉の前で豆乳を飲み干した。


(自分の意思で魔法少女になったんだし、美咲姉ちゃんは気にしなくてもいいのに。

双子で同い年だけど、昔からこういうところでお姉ちゃんなんだよなぁ。)


「ありがとう、お姉ちゃん。」


「どういたしまして。」


少しだけ、妹である事を意識した俺の感謝の言葉に美咲姉ちゃんは満面の笑みで答えたのだった。

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