第5話 夏希は魔法少女を始めるための手続きをする。
魔法少女になった翌日、夏希は宮園梅子に指定されたビルに来ていた。
ちなみに魔法少女の衣装は変身を解除した時に消えて、いつのまにか元の服を着ていた。
だが他の服も含めてブカブカになり、早いうちに普段着を買い揃えないといけない。
たた、昨日の今日なので今は変わった体型に比較的合う服を間に合わせで着ている。
夏希は待ち合わせている梅子のオフィスに案内されると、梅子が電話をしているところだった。
「ええ、そういった特殊な事情で魔法少女になった子なの。ひかりちゃんと沙雪ちゃんに講師をお願いできたらなって。ええ、ありがとう。では日曜日によろしくお願いね。」
「お忙しいところ失礼します、今日はよろしくお願いします。」
「夏希ちゃん、よく来てくれたわね。さっそく手続きをするわね。」
梅子のテキパキとした作業で、退魔師としての登録はすぐに終わった。魔法少女の時の姿で写した写真付きの、カード型の退魔師ライセンス証が発行されている。
このあと退魔師の待遇についての説明と、支給品の受け取りがあるらしい。
まず退魔師のランクと妖魔の種類について説明を受けた。退魔師には下からE〜Aのランクがあり、それぞれに月給が設定されている。今は誰も到達していないがその上にSランクがある。
ゲームや小説やマンガみたいだが、人間の組織が円滑に回るためには分かり易さが重要だからだ。
妖魔の種類は欠片の獣<妖獣<妖魔兵<騎士<領主
<王の順で強くなると言われている。欠片の獣を倒せるならEランク相当になり、領主以上はAランクの退魔師が必要になる。とはいえ騎士以上はほぼ出てこない。
夏希のランクはとりあえずCランクだった。ただ、夏希が受け継いだ雷雨の魔法少女の力は高い攻撃力を持ち、それ以上の活躍がみこまれている。これからの実績でランクが上がるはずだ。
Cランクの夏希の月給は手取りで100万円で、倒した妖魔ごとに討伐報酬も出る。
しかも退魔師として登録した瞬間に日割りで最初の月給が振り込まれているらしい。
俺みたいな子供が100万円とかいいのかな、とも思っていた夏希だったが、実際には命を掛けているためけっして高くない。
支給品の受け取りは武器がもらえるのかと思っていたが、衣服と下着と通っている中学校の女子の制服のブレザーだった。
下着や女子の制服はともかく衣服は大人しめのデザインで、女の子初心者の夏希にもありがたい。
衣服の支給の担当者の上村さんという女性が更衣室へ案内してくれた。
「サイズがあっているか、着て確かめてみてね。下着も合っているものを付けないと、擦れて痛かったりケガするかもしれないからちゃんと着けて。」
恥ずかしかったが、上村さんに手伝ってもらいながら衣服を身につける夏希。
「うん、サイズはあってるわね。可愛いわよ。」
「ありがとうございます。」
可愛いと言われてもまだ嬉しくはないが、とりあえず夏希はお礼を言っておいた。
そして今日の手続きが終わると宮園梅子から話があった。
「昨日お願いされていた、彼女さんへの説明の内容を考えてきたわ。仮性半陰陽って知っているかしら?」
「いえ、わかりません。」
「大雑把にいうと実際の性別と性器の形状が違う事なんだけど、つまり男の子に見えていたけど、実は女の子でしたってことにするの。ごく稀にだけど実際にある事だから説明がつくと思うわ。学校を休んでいる事の説明にもなるし、医師の診断書も用意してあるわ。この内容で問題ないかしら。」
夏希が聞いた限りではこの説明が一番良さそうだった。詳しい人はまずいないと思われ、多少の不自然さも誤魔化せると思った。例えば声は既に女性の声で、いきなり胸も少し膨らんでいるけど、今回の症例そういうものだと言えば、そうなのかと思ってもらえそうだった。
「はい、この内容で彼女に話してみます。ありがとうございました。」
「明後日の日曜日に、魔法少女の力の使い方講習があるから、またこのビルに来てね。」
「わかりました、また土曜日によろしくお願いします。」
家に着くと、恋人の葵から休んだ事を心配するメールがあった。返信は後回しにしたいところだけど、時間を開けると説明しづらくなりそうなので、すぐに返信した。
嘘を交えたメールの返信内容は、今まで自分は男だと思っていたけど、検査して女の子だったとわかった事、可能ならまた友達として仲良くしてほしい事、声も女の子に変わったから今は電話はしたくない事、検査に1週間はかかるので学校に出られるようになったらそこでキチンと説明して謝りたいことを伝えた。
葵はビックリしていたが、やはり実際に会ってみないと納得はできないようで、学校に行けるようになってから改めて話すことになった。
今日はいろいろあって疲れているが、そろそろ達也がくる時間なので夕食の準備をしないといけないため、台所に向かうと姉の美咲が料理をしているところだった。
「夏希、今日は私が作るから部屋で休んでていいよ。」
どうやら姉は気を遣ってくれたようだ。しかし動いていたほうが気が紛れると思った夏希は一緒に料理を作ることにした。
「手伝うよ、一緒に作ろ。」
黙々と料理を作り、そうしているうちに達也が訪ねてきた。
「えっ、夏希さんですか?でも女の人…?」
「竜ヶ崎家ってさ退魔師の家系なんだけど、先祖代々の能力を引き継いだら、昨日女の子になった。そういう事でよろしく。」
「ええっ、いったい何が?女の子になるなんてそんな事があるんですか!?うわぁ大変な時に来ちゃってごめんなさい、今日は帰ります。」
「待って待って、大丈夫だから。むしろ達也くんは俺の作ったご飯を美味しそうに食べてくれる癒し枠だから。帰られたら泣くかもしれない。」
達也をなんとか引き留めて夕食を囲んだ。その席で改めて魔法少女の力を受け継いで退魔師になったことを説明し、学校に対する説明として、自分が仮性半陰陽だった事にするという事を姉と達也に説明した。
「知らない人に説明する場合そういう事になってるんで、何かあったら口裏合わせよろしくね。」
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