木刀高校生外伝(二刀流)

★前回までのあらすじ(笑)

 木刀高校生の京介くんは、異界化した新宿へと向かった。異界化の元凶である天帝ガイアドゥームを成敗すべく、歌舞伎町を目指す。だが、こともあろうに、天帝の手先である精霊使いらの策略によって、まんまと新宿駅南口へ来てしまった。そこには、京介くんを宿敵扱いする厄介者、金属バット使いの喧嘩屋、ジミ・ハディーが待ち構えていた……。


「ぐはぁっ!」

 京介くん、とっても痛そう、辛そうな声。戦いを見守るしかないヒロイン、キクリンもまた悲痛な叫びとともに、その名を呼ぶ。

 ジミのバット喧嘩術、必殺の一撃だった。京介くんは木刀で受け止めたものの、強烈な金属的波動は、やすやすと痛みを与えた。

 やはり木行。金行と相性が悪かったのか。

 キクリンを背後に、京介くんはかろうじて片膝でも切っ先構えたまま、

「あんなパツキン高校生に手こずってる暇なんか無いってのによぉ、ったく、情けねぇ」

 キクリンはジミの異様なパワーに、疑問を感じていた。幾度か戦った相手、だが今宵のジミは何か違うっ!

「京介くん、もしかしてジミは……」

「言わなくてもわかってらぁっ!」

 精霊使いと手を結び、何か新たな力を得たことは、すでに太刀筋から理解る。問題は、それにどう対処するか、だ。

 そのとき!

 黒い球体が飛んできた、やってきた!

 京介くんの頭上、

「京介くんっ、これを使いたまえっ!」

「ったく、余計なことを……」

 京介くん、肩で息をしながら言うか。

 キクリンは期待した。スペシャル・ウェポンの投下、これで勝つる!

 だが、京介くんの目の前に落ちてきたのは『泡立て器』だった。

 キクリンも京介くんも、バトルを忘れたかのように啞然とした。黒い球体のほうは、そんな二人を見下ろし、疑問に思った。

「え? なに、その態度」

 だが、ジミひとりだけ、その泡立て器に驚愕していた。ジミは知っている、あの泡立て器こそ、伝説の調理器具として名高い、メレンゲドラゴンの泡立て器だということを!

「何をしてるんだ、京介くん! 泡立て器と木刀の二刀流ならば、勝てるっ! 早くそれを拾っーー」


 がんっ!


 泡立て器を拾ったのはキクリンだったし、黒い球体めがけてブン投げてのもキクリン、彼女の仕業であった。

 黒い球体は耳障りな音を立てて、泡立て器とともに落下。地面の上、もう動かない。動けない。

「何が二刀流よ! バカっ!」

 キクリンの悪態。ぷんすかぽん。

 だが、京介くんはそうでもない。

「二刀流かぁ、そうか……なるほどっ!」

 新たな闘気をまとい、彼は立ち上がる。

 対するジミもまた、別色の殺気。

「京介くん、茶番は終わったかい? さっきまではウォーミングアップだ。ここからは本気でいかせてもら……!?」

 余裕こいてたジミの顔が焦りと迷い、コンフュージョン!

「きょ、京介くん!」とキクリンも声をあげたのだった。

 木刀、だがもう一方の手にはシャーペン!?

「これが俺の二刀流。どうだい? 高校生らしいだろ?」


 がんっ!


 さっきの泡立て器を音速で拾ったのはキクリンだったし、京介くんめがけてブン投げてのもキクリン、彼女の仕業であった。

「何が二刀流よ……バカ」

 呆気にとられたジミだが。


 がんっ!


 黒い球体を拾ったのはキクリンだったし、ジミめがけてブン投げてのもキクリン、彼女の仕業であった。

「あたし、帰る」

 新宿駅南口付近。

 因縁の対決、その結末は意外なものとなった。

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