第4章 事件
一花火大会当日一
今にも鼻歌を歌いそうなテンションで待ち合わせ場所に向かった。私が着いた五分後くらいに夢香が来た。
「夢香〜!浴衣可愛い!今日はめっちゃ楽しもうね〜!」
「遥も浴衣可愛い!今日めっちゃ楽しみにしてたんだよ〜楽しも!とりあえず何か食べよっか!」
焼きそば、かき氷、わたあめ、いちご飴、とにかくたくさん食べた。
「なんか遥といると超楽しいし、すっごい懐かしい感覚になるんだよね〜謎だけど笑」
懐かしい感覚?そういえば私も、夢香といるとまるで以前から友達だったかのような感覚になる。
まあ偶然なのだろうけど。
「えーたまたまだよ〜笑でも夢香といると心の底から楽しめるんだよね」
「ねー嬉しいこと言ってくれるじゃーん!ねね!本題の花火見に行こう!」
そう言われて、花火がよく見える場所に移動した。ここならよく見えるだろう。人もにぎわい、段々皆集まってきた。
パーン!!!
花火が打ち上がった。
おぉー!と歓声を上げる人、音に驚き泣いてしまう子供、私はあまりの迫力に開いた口が塞がらないまま立っていた。
すると、突然どこからか女の人の叫び声がした。
「通り魔だー!!!みんな逃げろ!!!!」
え?え?何が起こってるの?意味がわからない。何で?通り魔?え?どういう事?
混乱状態になり、夢香も状況があまり判断出来ないまま立ち尽くしていた。
ふと見ると、今にも小さい子供が刺されそうになっているのを見た。
私は馬鹿なのか、お人好しなのか、優しいのか、気付いたら子供の方に走っていた。
無我夢中で。そして何よりまだ小さい子供を殺されてしまう親の気持ちになってみると、助けざるを得なかった。
犯人が、ナイフが、目の前にある。
よくよく思い返せば、私の人生はなんてこと無かった。他人の前で取り繕って、無理やり笑って、つまらない人生だった。
でもやっと、こうして心から楽しめる友達が出来た。遠山くんのことはまだよくわからないけど、それでも遠山くんと出会えてから私は自分に正直になれた。
あの懐かしい感情は何だったんだろう。この真実を知らないまま私は死ぬんだな。
その瞬間、ナイフが突き刺さる音が痛いほど脳内に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます