第3章 既視感
自分に素直になる。その言葉が脳裏に焼き付けられて離れなかった。
夜、お風呂に入り布団に入ってゴロゴロしていると、夢香からラインが来た。図書館に行った日に連絡先を交換していたのだ。
「ねね、来週の花火大会一緒に行かない?」
その文章を見た瞬間、私は心臓が跳ね上がるように喜んだ。
真っ先に「行く!」と返し、日程と時間を決めた後、私は眠りについた。
真っ暗な闇の中、苦しんでいる女の子がいる。
泣き喚き、叫んでいる。いや、これは私だ。これが私のありのままの姿なのか?
するとどこからか声がした。
「あなたの居場所はここじゃない。早く戻らないと。あなたは死ぬ。しかし戻りたいのならもう一度死ななければならない。」
朝目を覚ますと、とんでもない不快感に襲われた。なんだあの夢は。あの声は誰だ?とにかくもう二度と見たくない夢だ。その日は驚くほど体が重たく、瞬きすら億劫だった。
一花火大会前日一
気晴らしに公園に散歩に行くことにした。幼い頃よく遊んでいたブランコに乗り、空を眺めてリラックスしようと思っていた。
しかし、そこにはまた遠山くんがいた。
「...何でいるの」
そう言い放つと、遠山くんがこっちを向いた。
「ああ、俺の家こっから近いんだよねー。山口さんは何でいるの?」
「私の家もここから近いから。」
「あーそうなんだー」
実は、図書館の帰り道に遠山くんと私の家が近いのではないかということは思っていた。私の家は街路樹を抜けた通りから徒歩五分くらいで着くし、街路樹を抜けるまでは遠山くんも同じ道を通っているからだ。だからなのか、以前から遠山くんに会う度、見知らぬクラスメイトというよりかは、むしろどこか懐かしい感情が蘇ってくるかのような感覚がしていた。
「最近はどう?まだ性格作ってんの?」
また出た。この手の話は嫌いだ。しかし最近、夢香や遠山くんに会って話をしていくうちに、段々自分を取り繕う事が少なくなっていた。
「最近は自分に素直になれてるよ」
「そっか、よかったね。それが一番だよ」
「うん、てか明日、夢香と花火大会行くことになったんだ。すっごい楽しみなの」
「おおー、成長したね。てか今すんげー自然に笑えてる」
あ、ほんとだ。気付いたら口角が緩んでいた。
「遠山くんってなんか、よくわかんないけど凄いね」
「いやよくわかんないって何だよ笑てか、俺の名前たけるだから。名前で呼んでいいよ」
そう言われた瞬間、その名前に既視感を覚えた。
随分と前に同じ名前の人を見た気がする。
そういえば、いつも通ってる街路樹も、なぜか懐かしい感じがする。
いや、偶然か。
私はたけるに
「もうそろそろ帰るね」
と言い、家に帰った。
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