回答




 そもそも結婚報告を何故しなければならないんだろう。




 絶望の真っただ中を漂っていた女性と男性は思ったのでした。




 仕事上の相棒であって、私事上の相棒ではないのだ。

 些事な私事の報告などしなくてもいいのではないのか。

 休日に会って団欒を楽しむ仲でもあるまいし。

 そも、職場で出会って十年経つが約束して休日に会った事も遭遇した事すらも一度もないのだ。

 私事での交流がないのに、どうして結婚報告をしなければと責任感に駆られて、休日に会わないかなどと誘ってしまったのか。

 そんな慣れない、初めての事をしてしまったが為に、こんな事態に陥ってしまったのではないか。

 今まで通り、私事は詳しい事は告げずに、役立たずだと笑い合っていればいいのではないか。


 結婚報告とは一体誰が為に在る?

 結婚する事によって、仕事に支障が生じるからか。

 まあ、育児休暇や家族サービス、家族の病気などなど予定外の休日を申請する場合も生じて、迷惑をかける。

 迷惑か?

 休日は休日。

 仕事は仕事だ。

 仕事日に解決すればいい話だろう。

 うん、そうだ。

 相棒に別段迷惑をかけない。

 とすれば、相棒に結婚報告は必要ない、というわけで。

 そうだ。相棒には必要ないだろうが、休日を申請する上司には一応伝えるべきではないだろうか。




 結論を導き出し、勢いよく瞼を、上半身を起こしては、見当たらないスマホに眉尻を下げつつ、見知らぬ隣人に今は何日何時何分かと問えば、相棒を誘った休日から脱しておらず、しかも午後五時五分だと言うではないか。


 確か。上司は休日の夕刻には一人飲みにお勧めのバー『リイブト』に居るはず。


 ふっかふかの寝台から身体を下ろして靴を捜索、するまでもなく、視界の右先にある小さな玄関に発見。

 身体もざっと見て異変がないのを確認(少し服装が違うような気がしたが気のせいだろうだって財布がズボンの右前ポケット入っていた。スマホはポケットになかったが見知らぬ隣人が渡してくれた)。

 部屋から飛び出しては階段を駆け下り、一階に常設されているカウンターの店員にここの店名と、ここから目的地までの道順を尋ねて、答えをもらってはひた走る。









(2022.3.25)





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