第2話

「え?」



 涙をぬぐい、見た先には、浅谷あさや課長の背中だった。



「部長、それは私の検査をも、通っています、つまり私にも非があります。彼女だけを攻めるのは少し」


「あ? お前、ミスしたのはこいつだ、だからこいつが悪いんだよ、でないと俺が――――」


「怒られれば、いいんじゃないですか?」



 遮るように、浅谷課長は言う



「何だと?」


「その為の役職なのではないのでしょうか?」


「なっ! 貴様、課長の分際で!」


「彼女はちゃんと学校出てます、私の後輩ですからね。それにこのデザイン、ミスではなくあえて、こうしたデザインにしているのです、そのクライアントの方こそ勉強不足なのでは? それに気づかない部長も」



「き、貴様っ……」



 気が付けば社員全員が私達を見ていた、いや、その目線は部長に向けられている。



「次は赤ちゃんでも分かるような分かりやすいデザインにすればいいんですね、すぐにやり直します。あと、彼女の監督は引き続き私が勤めます、彼女はこの企画から抜けさせませんから」



 毅然とした態度の課長と、オフィスの社員全員の圧力に、部長は渋々退散した「納期は明日だ」と、無茶な事を言い残して。



「俺、クビかな……ハハハ」



 課長は、苦笑いをしながら、座り込む私に手を差し伸べた。



「そんなこと、私が絶対させません!」



 私はその手をとり、立ち上がった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある会社での何気ないことだけど OFF=SET @getset

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ