第10話 学校に行こう②
とりあえず私は悠里と別れて職員室に向かうことにする。
道のりは覚えているので、迷うことなく目的の職員室に辿りついた。
ここまでもそこまで長い道のりというわけではなかったので疲れたということはないけれど、少し珍しい視線をよく浴びた。
それは制服がここのものとは違うからだろうと思う。
みんなが着ているのは紺色を基準にしたブレザーなのに対して私のはクリーム色をしているので、誰?という視線を向けられるのは仕方がないことだった。
職員室をノックして入る。
一番手前の先生に自分の担任の先生を紹介されてそちらに向かう。
そこにはタバコ……
ってここ禁煙だからって、よく見るとシガレットか。
そんな咥えタバコならぬ、咥えシガレットをしている女の先生が座っていた。
ちなみによく見ると机の上にシガレットの箱が四箱置いてあるので好きで食べてるのであろうと思う。
「おはようございます」
その先生に挨拶をすると、先生はこちらに向き直りながら咥えていたシガレットをもごもごと食べるという器用な真似をして。
「おう、おはよう」
ざっくばらんな挨拶を返した。
そしてすぐに立ち上がると出席簿と思われるものを引き出しから取り出して前を歩き出す。
「ついてきなよ」
かなりざっくばらんな先生だとこのとき確信した。
職員室から教室までの道のりを覚えながら歩いていると先生が横に並んでくる。
「ほい、これ。サービスだよ」
そして先ほどのシガレット一箱を手に握らせてくれた。
それもニカッと笑う笑顔つきで。
その表情がなんとも子供っぽくて、可愛くて…
何この先生シガレット好きなの?
そんなに咥えるのが好きなら自主規制…
頭の中で妄想が爆発していた。
だ、大丈夫だよ。
相手は一八歳以上なんだから。
学校だということも忘れて、かなりまずい妄想をしながらも一緒に進んで行くと、不意にまた先生が横に並ぶ。
「そういえば転校生、名前なんていうんだ?」
「ほえ?」
「だから名前?」
何か聞かれるだろうと自分でも思っていたけれど、まさかのことを質問されて思わず戸惑う。
え、もしかしてこの先生、私の名前知らないの?
担任のくせに?
え?
頭の中でパニックを起こしている私に対して、先生はすぐに何かに気づいたような表情になってこちらに向き直る。
「やっぱり、いいや」
「そ、そうですか……」
「うん、やっぱり生徒と同じタイミングで聞かないとダメだよね。転校生が来るっている話も今日始めて知ったことだったし、やっぱり学生と同じ気持ちになるのには同じようにしないとダメだよね。」
そしてそんなことを言ったのだけど。
私の頭の中は煩悩で溢れていた。
何この先生、可愛い。
たぶん二五歳くらいで美人さんなのに考えとか仕草とかがちょっと子供っぽくてそれが逆に可愛さになっているなんてもう反則じゃない?
あー、抱きしめたい。
ちょっと嫌がられた顔とか見てみたいなー。
あ、でも照れた顔もいいかもねー。
大丈夫だよ、ほら相手先生だし、その年上の余裕とかでね…
許されるはずだよね。
そんな煩悩を働かせて黙っている私を先ほどの意味をわかってくれたものとして解釈した先生はまた何かを言いたそうだったけど一緒に歩いて行った。
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