大当たりダイラ
第461話 玄関に置かれた当選品
アトリエの中、ダイラとクワヤマダは珍しく静かだった。机の上には手のひらサイズの金色のオブジェが、存在感を放っている。その奇妙な物体を前に、二人の表情は硬かった。
クワヤマダ:「ダイラ、これ…マジで玄関にあったのか?」
ダイラ:「ああ、今朝メールが来たんだ。『おめでとうございます!当選しました!』ってな。それ見て嫌な予感がして玄関を見たら、これが置いてあった。」
クワヤマダ:「…手のひらサイズ?ちょっと小さくないか?」
ダイラ:「俺もそう思った。世界中で問題になってるやつって、もっとデカいんだろ?でもこれがいつ大きくなるかわからない。」
クワヤマダ:「は?大きくなる?」
ダイラ:「ロシアではさ、最初は1メートルくらいだったオブジェが一晩で10メートルに膨らんだらしい。そのせいでモスクワの地下鉄が全部止まったってよ。どうやらオブジェの数が核兵器の総数を超えたらしい」
クワヤマダ:「10メートルのオブジェがわんさか立ち並ぶって…完全に都市機能麻痺じゃん!」
ダイラ:「そうだ。それだけじゃない。どっかの国じゃ、オブジェが街を埋め尽くして人々が移住を余儀なくされたって話もある。どんどん増えるんだよ、埋めても、壊そうとしても。」
クワヤマダ:「なんだよそれ、ホラー映画かよ…。で、お前んとこに来たのは手のひらサイズか。なんでサイズが違うんだ?」
ダイラ:「それがわからないんだ。大きさの基準が全く不明。アメリカじゃ大統領官邸の前にいきなり3メートル級が置かれて、対応に追われたらしい。」
クワヤマダ:「で、送り主もわからない。防犯カメラにも何も映らない…。目的も謎って、完全に終わってるな。」
ダイラ:「しかも、このオブジェがただ置かれてるだけならまだマシだが、処理できないから問題が深刻なんだ。廃棄するにも増えるし、埋めても復活する。日本でも地方都市が埋め立て処分しようとして、次の日には埋めた分の倍が増えたって話だ。」
クワヤマダ:「…これさ、もしかしてアート?とか言いながら、何かもっとやばい意図があるんじゃないか?」
ダイラ:「それもあるかもしれないが、誰にもわからない。ただ一つ言えるのは、これが世界中で同時に起きてるってことだ。アートの可能性も否定できないが、これほど人々を困らせるのは前代未聞だ。ただ、人々が争いをやめて、この謎のオブジェの原因を究明している。」
クワヤマダ:「迷惑オブジェにより一時的に世界平和かぁ。皮肉なもんだな。俺んとこに来たらどうしようかな。玄関じゃなくて冷蔵庫に置かれてたりしてな。」
ダイラ:「笑えないよ、クワヤマダくん。何が起きてもおかしくないんだ、このオブジェには。」
その時、ダイラのスマホが震えた。メールの通知音。
ダイラ:「……またメールだ。」
クワヤマダ:「まさか…『当選しました』じゃないだろうな?」
ダイラは恐る恐るメールを開いた。そこには短い文だけが書かれていた。
『おめでとうございます!これは何かの始まりです!』
二人は凍りついた。部屋の中の小さなオブジェが、どこか光を放ち始めているように見えた。
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