第448話 ダンボール小屋のサンタ

クリスマス・イブの夜、ダイラとクワヤマダは、街から少し離れた場所で不思議な光景に出くわした。そこにはダンボールやビニールシートでできた幻想的な家々が立ち並び、柔らかいランプの光が溢れていた。まるでどこか別の世界に迷い込んだようだった。


「ここは何なんだ?」とクワヤマダが言う。


ダイラは答えず、目の前に積まれたお金の山を指差した。そこには数え切れないほどの札束が詰まれていた。しかし、その住人たちはそれに一切の興味を示さない。それどころか、一部のお金は焚き火の中で燃やされ、暖を取るのに使われていた。


「資本主義社会を拒絶しているのか?」とクワヤマダがさらに尋ねた。


すると、近くにいた一人の住人が話しかけてきた。

「私たちはお金を嫌っているわけではありません。ただ、人の幸せの量を適正にコントロールしたいのです。」


彼らは、手元に必要な分だけを残し、残りのお金を段ボール箱に詰めて、遠くの貧しい地域や生活に困る人々に送り届けるのだという。自分たちは贅沢を求めるわけでもなく、最低限の手当で生活している。だが、その生活はどこか穏やかで、美しい調和が感じられた。


「そんな自分の利益を放棄してまで、人のために尽くすなんて、なかなか真似できないぜ。」クワヤマダが呟くと、ダイラが答えた。

「彼らはたぶん、幸せは所有の中にではなく、分け合う中にあると考えているんだろうな。」


幻想的なハウスの前には、彼らの営みに賛同する人々が次々とお金を積んでいく。誰かが置いたお金は次の誰かに送られ、その連鎖は止まることを知らない。


「このシステムって経済学的にはどうなんだろうな?」クワヤマダが首を傾げる。

「経済学を超えてるんじゃないか?むしろ人類学や心理学の領域だろう。」ダイラは静かに言った。


彼らはしばらくその場で立ち尽くし、何か見えない力が生み出す静かな奇跡に魅入られていた。街中のクリスマスの浮かれ騒ぎとは全く異なる、深い温かさを感じたのだった。


やがてダイラが口を開いた。

「クワヤマダ、俺たちも、何か分け合えるものを持ってるんじゃないか?」

「例えば?」

「それはこれから探すんだよ。」


二人は星空を見上げながら、再び歩き出した。

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