第447話 器の穴

ダイラ:「なあ、クワヤマダくん。人間の器ってなんだと思う?」


クワヤマダくん:「器?それってなんすか、心が広いとかそういうやつっすか?」


ダイラ:「まあ、それもあるけど、単純に“その人間が何を受け入れられるか”って話だよ。許容できる範囲とか、持ってる懐の深さとか。」


クワヤマダくん:「そういうことっすか。でも、大きい器の人って、なんかあんまり出会ったことない気がするんすよね。」


ダイラ:「お前、器が大きい人が何してるか知ってるか?」


クワヤマダくん:「何してるんすか?」


ダイラ:「何もしないんだよ。」


クワヤマダくん:「何もしない?」


ダイラ:「そう。余計なことをしない。器が小さいやつほど、いちいち人のことを気にして文句言ったり、目の前の問題にすぐ動揺したりする。大きい器の人は、どっしり構えてて、何が起きても焦らない。」


クワヤマダくん:「それ、めちゃくちゃ難しくないっすか?なんか、現代社会だと特に。」


ダイラ:「その通りだ。今の社会は、みんな器を磨く時間がないんだよ。しかも、磨くどころか、器が割れないように必死に守ってる状態だ。」


クワヤマダくん:「あー、確かに。SNSとかでちょっと傷ついたらすぐ壊れる感じっすよね。」


ダイラ:「そうそう。だから、器が大きいかどうかは、まず割れないこと、そして中身をちゃんと受け止められるかだよ。」


クワヤマダくん:「でも先輩、このダイラ物語の作者、器大きいように見えて穴だらけじゃないっすか?」


ダイラ:「そこなんだよ。俺が言いたいのは、器が大きいだけじゃダメってことだ。穴だらけじゃ、何も受け止められない。」


クワヤマダくん:「でも、小さくてもピッカピカに磨いてたら、逆に何かいいものが入るんじゃないっすか?」


ダイラ:「その通り。大きい器である必要はない。小さくても、中に入れるものをちゃんと選んで、丁寧に扱う。それが本当の器の使い方なんだよ。」


クワヤマダくん:「でも、エリートとかインテリとかって、器大きそうに見えても意外と狭かったりするっすよね。」


ダイラ:「それはな、人間の進化の話に繋がるんだよ。人間は社会的な動物だから、知識や権力があると、つい自分を中心に据えちゃう。でも、本当に器が大きい人は、周りの人間を尊重して、必要以上に自分を広げない。」


クワヤマダくん:「文化的な背景もありそうっすね。日本だと“謙虚”が美徳だけど、器を大きく見せようとするのは嫌われる。」


ダイラ:「そうだな。でも欧米では“堂々とした姿勢”が評価されることもある。結局、文化によって器の大きさの見え方が違うんだよ。」


クワヤマダくん:「じゃあ、俺たちはどうすればいいんすか?」


ダイラ:「まずは自分の器の大きさを見極めることだ。そして、磨く。で、穴が空いてたら、そこから一回外を見てみろ。風が吹き抜ける感じがするはずだ。」


クワヤマダくん:「風通しのいい器かあ…。なんか、深い話になってきたっすね。」


ダイラ:「人生なんてそんなもんだよ。穴だらけでもいいけど、ちゃんと風を受け入れる器でありたいな。」

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