第436話 レジデンスってなんだ?

台北の夜、ダイラとクワヤマダくんは芸術祭「落山風藝術季」に参加するため、台北のとあるホテルに滞在していた。ホテルは地獄のようなピンク一色。壁も天井もフロアカーペットも、すべてタヌキとも猫ともつかない謎のピンクキャラクターで埋め尽くされている。


クワヤマダくん:

「おい、ダイラ!この部屋、目が痛ぇよ!なんでピンクばっかなんだよ!?俺、夢でピンクパンサーに襲われそうなんだけど!」


ダイラ:

「落ち着けよ。これは非日常を体感するための空間設計なんだってさ。主催者の配慮だ。」


クワヤマダくん:

「設計とか配慮とかどうでもいいわ!あと壁のキャラクター、絶対こっち見てる!」


そのとき、壁のキャラクターが不気味に動き出した。


ピンクのキャラクター:

「やあ、いらっしゃい。ここは僕たちの“ピンクの楽園”だよ。さあ、もっと自由になって!」


突如、ピンクのキャラクターが壁から飛び出し、クワヤマダくんに猛スピードで飛びかかる。


クワヤマダくん:

「うわああ!なんだこいつ!?俺にくっつくな!」


だが遅かった。ピンクのキャラクターはクワヤマダくんに融合し、光の爆発とともに“ピンクヤマダくん”という謎のモンスターが誕生した。


ダイラ:

「えっ!?お前、大丈夫か!?なんか……ピンクが増してるぞ!」


ピンクヤマダくん:

「ギャアアアア!俺、どうなってんだ!?手がピンクの触手みたいになってる!これ、意外と動きやすいけど!」


ピンクのキャラクター(クワヤマダの声と混ざりながら):

「僕らは一つになった!さあ、エネルギーを解放しよう!」


二人が投げ込まれたのは、エメラルドグリーンの光が降り注ぐ「バオバブプランテーション」と呼ばれる空間だった。そこでは巨大なバオバブの木々が生き物のように動き、空間全体が脈動している。


ピンクヤマダくん:

「なんだここ!?木が動いてる!触手の俺でも勝てそうにない!」


ダイラ:

「すごい…これが芸術祭の目玉か。いや、俺の頭の中で構想していた作品が、ここでは生命を持っている…。」


だがその時、ピンクヤマダくんの触手が暴走を始めた。彼が走り回るたびに、光の波紋がバオバブの木々を刺激し、空間全体がカオス状態に突入する。


ダイラ:

「おい、やめろ!お前が動くたびに、この空間が崩壊しそうなんだ!」


ピンクヤマダくん:

「俺だって止めたいよ!でも触手が勝手に踊るんだ!」


バオバブの木々がピンクヤマダくんを追いかけ始め、光の渦が空間全体に広がった。


突然、空間が爆発したかのように変化し、二人は台北の街並みに投げ出された。エネルギッシュな夜のネオン、屋台から漂うスパイシーな香り、スクーターのクラクション音が混ざり合う。


ピンクヤマダくんはなおも暴れ回りながら夜市を駆け抜け、ついには焼き餅屋台をひっくり返した。


焼き餅屋のおばさん:

「こら!何してんのよ!怪物だって許さないからね!」


ダイラ:

「すみません!後で弁償します!」


ダイラは追いかけながらも、ふと自分が感じているものに気づいた。混沌とした台北の街と、暴れ回るピンクヤマダくんが織りなす光景。それはまるでアートそのものだった。


ダイラ(独り言):

「これがレジデンスの力か…。非日常の刺激が、自分の中の固定概念を壊していく。この経験が、次の作品に絶対必要なんだ。」


ダイラは意を決し、ピンクヤマダくんの前に立ちはだかった。


ダイラ:

「クワヤマダ!お前はピンクキャラクターに飲み込まれてなんかいない。お前自身がアートなんだ!」


ピンクヤマダくん:

「俺が…アート!?それで触手がこうなってんのかよ!?」


ダイラ:

「そうだ!お前の動きがバオバブプランテーションの一部になるんだ。もっと自由に踊れ!」


その言葉を聞いたピンクヤマダくんは触手を最大限に広げ、台北の街並みをバックに奇妙なダンスを始めた。バオバブプランテーションから放たれたエメラルドグリーンの光が再び現れ、街と彼を包み込む。


そして次の瞬間、すべてが静まり返った。ピンクキャラクターは消え、クワヤマダくんは元の姿に戻っていた。


クワヤマダくん:

「はぁ…俺、もう二度とピンクには近づかない。」


ダイラ:

「でも、お前のおかげで俺は新しいインスピレーションを得たよ。台北の街も、お前の暴走も、すべてが作品の一部になったんだ。」


クワヤマダくん:

「先輩、ところでレジデンスってなんですか?」


二人は台北の夜景を眺めながら、明日からのレジデンスを想像して静かに笑った。

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