第428話 リバース・チャイルド法

舞台は未来の地球。少子化問題が深刻化し、大人たちが「成人」という概念そのものに息苦しさを感じ始めた。そんな社会を変えるべく、「誰でもいつでも子供に戻れる法律」が施行された。


プロローグ

ニュースアナウンサー(声だけ):

「本日、少子化問題解決のための画期的な法律『リバース・チャイルド法』が可決されました。この法律により、成人の概念が廃止され、希望者は年齢に関係なく子供に戻ることが可能となります。ランドセル姿の40代、50代の新しい小学生が全国各地で見られるようになりました。」


ダイラとクワヤマダくんは、この奇妙な未来を見にタイムマシンでやってきた。


クワヤマダくん:

「ダイラ、見ろよ!あの公園、40代の『小学生』が鬼ごっこしてるぞ!」


ダイラ:

「すごいな……。あの白髪の男の子、全速力で走りながらランドセル揺らしてる。楽しそうだ。」


クワヤマダくん:

「これ、冗談かと思ったけど、マジなんだな。元大人たちが子供に戻って、社会がこんなに変わるなんて。」


公園のベンチで

ダイラとクワヤマダくんは、公園で「元大人」の小学生・田中さん(52歳)と話をしてみることにした。


クワヤマダくん:

「田中さん、どうして子供に戻ることにしたんですか?」


田中さん:

「いやぁ、会社勤めに疲れてね。毎日満員電車で押しつぶされて、上司に怒られて、家では妻に文句を言われて。気づいたら『もう一度ランドセル背負ってみたい』って思ってたんだよ。」


ダイラ:

「で、実際に戻ってみてどうですか?」


田中さん:

「最高だよ!里親のお金持ち夫婦が僕を養子にしてくれてね。衣食住はもちろん、クリスマスプレゼントやお年玉までくれるんだ。毎日が楽しい!」


クワヤマダくん:

「でも、選挙権とか運転免許とか、失うものも多いんじゃないですか?」


田中さん:

「最初は不安だったけど、失うものより得られるものの方が多いよ。あと、選挙権なんて考えなくても、今の大人たちがなんとかしてくれるでしょ?」


ダイラとクワヤマダくんは、公園を離れて街を歩いた。かつて「大人」と呼ばれた人々が子供として新しい生活を楽しむ姿がそこかしこに見られた。


クワヤマダくん:

「ダイラ、これって大人が現実逃避してるだけじゃないのか?」


ダイラ:

「そうかもしれない。でも、少子化問題を解決するために、固定観念をぶち壊すことが必要だったんだろう。この法律は、社会に新しい視点を提供してる。」


クワヤマダくん:

「固定観念か……。確かに、『大人は責任を持つもの』『子供は未熟なもの』って考えが強すぎたのかもしれないな。」


ダイラ:

「そうだ。そして、この世界では誰もが新しい人生をやり直すことができる。これは単なる政策じゃなくて、人間の自由に対する新しい挑戦だ。」


2人が歩いていると、ある学校の教室が目に入った。教室の中では、元大人たちが楽しそうに算数の授業を受けている。黒板には「6+4=?」という簡単な計算問題が書かれている。簡単な問題について哲学的なディスカッションを楽しむ元大人たち。


クワヤマダくん:

「これ、最高のリセットボタンだな。」


ダイラ:

「でも、面白いのはここからだ。もし人類が年齢の概念を捨てたら、未来の可能性は無限大だろう?」


クワヤマダくん:

「たしかに。『何歳になってもやり直せる』って、すごい発想だよな。」


2人は再びタイムマシンに乗り込み、現代へ帰る準備をする。


ダイラ:

「見方を変えれば、どんな問題も解決の糸口が見つかる。この法律が教えてくれるのは、それだ。」


クワヤマダくん:

「うん。未来が少しだけ希望に満ちたものに見えたよ。」


タイムマシンが静かに動き出し、2人を元の世界へ連れ戻していった。

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