第425話 世にも奇妙な噺①死神とあたま山
ダイラ: クワヤマダ、この前またタイムワープ先で奇妙なやつに会ったんだよ。
クワヤマダ: またかよ。で、今度はどんなやつだ?
ダイラ: 今回は「死神」だ。
クワヤマダ: おい、死神ってあの死神か?妙に人間臭いやつだろ?
ダイラ: ああ、その死神が「最近の人間、寿命を延ばすのに必死で俺の仕事が減って困ってる」ってぼやいてたんだ。
クワヤマダ: 確かに。現代じゃ健康食品だの、抗老化クリームだの、延命術だのと大忙しだもんな。それで、お前は何をしでかした?
ダイラ: 試しに「寿命をちょっと延ばせないか」って頼んでみたら、俺の昼寝時間を30分持っていきやがったんだよ。
クワヤマダ: お前の昼寝時間ってそんなに貴重だったのか?
ダイラ: 次の日の疲れ具合を考えると、思ったより重要だったみたいだな。
クワヤマダ: それで、その死神は何て言って去ったんだ?
ダイラ: 「命の帳尻は自分で合わせろ」だとさ。ほんと不親切なやつだよ。
クワヤマダ: 死神に親切を期待するなよ。まあ、俺も最近変なやつに会ったんだけどな。
ダイラ: 今度はどんなやつだ?
クワヤマダ: 「あたま山」の現代版だよ。
ダイラ: あたま山?頭に桜が咲くってやつか?
クワヤマダ: ああ。でもそいつ、普通の桜じゃなくて、特殊照明ライトで24時間365日ライトアップされる桜だぞ。観光地化されてて、夜桜クルーズまで出てたんだ。
ダイラ: 観光地って…。そいつ、大丈夫だったのか?
クワヤマダ: 全然ダメだ。「人が多すぎて疲れるし、頭が重くて肩こりがひどい」ってぼやいてたな。
ダイラ: お前、何か言ったのか?
クワヤマダ: 「俺みたいにシンプルな構造になればいい」ってアドバイスしたけど、そいつ「それはもっと困る」って真顔で返してきた。
ダイラ: まあ、そうだろうな。それで結局どうなったんだ?
クワヤマダ: そいつ、最後には「桜は散ることで美しい。それでいいんだ」って言って自分の池に飛び込んだんだ。
ダイラ: 池に飛び込んだ?まさか…。どうやって?
クワヤマダ: その池のほとりに看板が立っててさ。「私の頭があまりにもうるさいので水に飛び込みました」って書かれてたんだ。
ダイラ: それ、完全に落語のサゲだな。
クワヤマダ: だろ?でも、そいつらも結局、花の美しさに敬意を表して、池の周りで静かに花見を始めたんだってさ。
ダイラ: 池のほとりで静かに花見か…。それもまた風流な終わり方だな。
二人でそんな話をしていると、ダイラが急に思い出したように言った。
ダイラ: あ、そうそう。死神の話、もう一つ面白いことがあったんだ。
クワヤマダ: 何だ?
ダイラ: その死神、俺と話している途中で、持っていたろうそくをくしゃみで消しちまったんだ。
クワヤマダ: え?死神がくしゃみ?
ダイラ: そう。で、慌てて火をつけようとしたんだけど、何度やっても火がつかないんだ。
クワヤマダ: それはおかしいな。死神のろうそくが消えるなんて聞いたことないぞ。
ダイラ: そうだろう?俺もそう思ったんだけど、その死神、顔色が真っ青になって「しまった!これじゃオイラ消えちゃう!」って言い出したんだ。
クワヤマダ: え?死神なのに?
ダイラ: そう。どうやら、そのろうそくには特別な力があって、それを消してしまうと、自分の寿命も管理できなくなるらしい。
クワヤマダ: それは困ったな。
ダイラ: そうなんだ。結局、その死神は「もう寿命なんて気にせず、好きなだけ生きろ」って言って、どこかへ消えていった。
クワヤマダ: え?消えた?
ダイラ: ああ。多分、寿命ろうそくの管理人がいなくなったから、人間には寿命がなくなったんじゃないか?
クワヤマダ: まさか、死神がろうそくを消すなんて!
ダイラ: 世の中何が起こるかわからないもんだな。
二人は夜空を見上げながら、死神のおっちょこちょいさと頭に花を咲かせた男の不思議な運命の話に大笑いした。それぞれの奇妙な出会いを楽しみつつ、二人の噺はさらに深まっていく。きっと次の奇妙なやつに出会うのも、そう遠くはないだろう。
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