第423話 遺産相続の話
ダイラ: なあ、クワヤマダ。さっき『ザ・ノンフィクション』観たか?
クワヤマダ: ああ、例のテレビディレクターさんの話な。落合陽介ギフレさん…人生波乱万丈すぎだろ。
ダイラ: ほんとだよな。火事で亡くなったお父さん、落合皎児さんって画家だったってのも驚いたけど、あの生き方がまた壮絶すぎた。皎児さんは1980年代、スペインで脚光を浴びた画家だった。ピカソやミロと並び、「スペインの現代作家150人」に選ばれるほど高く評価されていたという。
クワヤマダ: スペインで絶賛されてた時代から、一転して生活困窮って……芸術家の世界はシビアだよな。でもそれ以上に家族のことが切なすぎる。
ダイラ: 皎児さん、創作に夢中になりすぎて家庭を顧みなかったって話だったよな。母親と別居してたっていうし、ギフレさんが『父と一緒にご飯を食べた記憶がほとんどない』って言ったのが胸にきたわ。
クワヤマダ: うちは父親も昔、仕事ばっかだったけど、ここまでじゃなかった。ギフレさん、寮生活から新聞奨学生になって大学進んだり、相当な努力家だな。
ダイラ: しかも弟さんが施設に行って、その後精神を病んで……。20歳で命を絶ったって聞いたとき、正直言葉を失ったよ。
クワヤマダ: お母さんも孤独死して、見つかったのが1か月後って話だったよな。ギフレさん、よくその後立ち直れたよ。
ダイラ: そうだな。でも立ち直ったっていうより、ギリギリで走り続けてる感じがした。父親と完全に連絡を絶ったのも2年前って言ってたし……。
クワヤマダ: その矢先に火事。警察から電話があったときのインスタの投稿、読みながら泣きそうになったよ。「眠れなくなって、公園で桜見てる」って、どんだけつらかったんだろうな。
ダイラ: 火事の原因、タバコの不始末じゃないかって話だったけど、それ以上に気になったのが、あの家に残されてた絵だ。
クワヤマダ:落合皎児さんの絵が1000点以上無傷で残ってたって話か。あと借金1500万円もあったとか。アートギャラリーの投稿にもあったけど、「新しい魂の誕生」って言葉が印象的だったな。
ダイラ: 皮肉だよな。命は失われたけど、作品は残る。しかもギフレさん、あの更地になった場所で父親の絵を撮影してたじゃないか。「親父がやらかして燃えた家」っていう言葉に、苦笑いしつつも覚悟を感じた。
クワヤマダ: ギフレさんにとって相続って、お金とか土地だけの話じゃなかったよな。家族の軋轢と、芸術の記憶と、未来への責任。全部が絡み合ってる感じだった。
ダイラ: 本当にな。相続放棄の件数が増えてるって番組で言ってたけど、ギフレさんみたいなケースだと、単に放棄すれば終わる問題じゃない。相続するか放棄するかは12月に決めるらしい。その前に長野市松代町でお父さんの回顧展を開いてから考えるそうだ。
クワヤマダ: 「家族とは何か」か……。あのテーマ、俺たちの時代にも重い問いだな。
ダイラ: だな。結局、残ったものをどう受け取るか。それがその人の生き方なんだろうな。
クワヤマダ: 深い話だ。でもダイラ、お前も親父さんと連絡取ってるか?
ダイラ: ……まあな。でも今日の話を聞いて、ちょっと考え直すわ。とりあえず、今度電話してみるかな。
クワヤマダ: おお、いいじゃん。俺も久しぶりに実家に電話してみようかな。
ダイラ: そうだな。親父、元気にしてるかな?
クワヤマダ: まあ、元気にしてるんじゃない?
(二人は、夜空を見上げながら、それぞれの思いを巡らせた。)
ダイラ: あのさ、クワヤマダくん。もし、俺が将来、ギフレさんみたいな状況になったら、お前はどうしてくれる?
クワヤマダ: え? 俺が? まあ、俺にできることなら何でもするよ。
ダイラ: お前が?
クワヤマダ: うん。だって、家族だろ。
ダイラ: ……家族?あっありがとう。
(二人は静かに夜空を見上げ、互いの存在に感謝の気持ちを抱いた。)
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