第420話 欽ちゃんの仮想大賞
ある秋の日、電車の中でダイラとクワヤマダくんは未来からの帰り道。駅からハロウィン帰りのゾンビ仮装をした女子高生たちが乗り込んできた。
ダイラ: 「ヒャッ!」
(突然の驚きに声をあげるダイラ。女子高生たちがゾンビ風の仮装で笑いながらスマホをいじっている。)
女子高生: 「仮装だし……」
(ボソッとつぶやく女子高生に、ダイラは思わず言ってしまう。)
ダイラ: 「ゾンビは土葬だし。」
クワヤマダくん: 「何すかそれ。土葬とか火葬とか、語感だけで笑わせようとしてます?」
(しらけた空気にため息をつく。)
電車を降りた二人は、近くのカフェに入り、話題を変えようとするも、先ほどのゾンビ女子高生のインパクトが忘れられない。
クワヤマダくん: 「そもそもゾンビって土葬文化の象徴なんですかね?未来の長人たちって、火葬派と土葬派で対立してたじゃないですか。」
ダイラ: 「あれな。未来じゃ『欽ちゃんの仮装大賞』が『火葬大賞』とか『土葬大賞』に変わっててさ、文化論争が激化してたよな。」
クワヤマダくん: 「欽ちゃんのミイラ化は衝撃でしたけどね。長人たちが前方後円墳型の墓を推奨するデモをやって、欽ちゃんの火葬か土葬かで20点満点を狙う仮装大賞が盛り上がってた。」
未来の仮装大賞の様子を思い返す二人。会場では、ミイラ化した欽ちゃん(AIで再現されたホログラム)を審査員に迎え、長人たちが火葬と土葬をテーマにした壮大なコスプレを披露していた。
ダイラ: 「火葬派のチームは見事だったな。スモークマシンとレーザーライトで、亡き人の魂が天に昇る演出。あれは神々しい。」
クワヤマダくん: 「でも土葬派も負けてませんでしたよ。土を盛るパフォーマンスの途中で、前方後円墳を一瞬で組み立てたの、あれは歴史と技術の融合って感じでスゴかった。」
ダイラ: 「欽ちゃんが笑いながら“火葬と土葬は人類の根本的な問いだ!”とか言ってたな。」
クワヤマダくん: 「欽ちゃんミイラがまさか喋るとは思いませんでしたけどね。“私もいっそ前方後円墳にしてくれ!”とか叫んでたの、シュールすぎました。」
二人は未来の仮装大賞の哲学的な側面を考え始める。
ダイラ: 「そもそも火葬と土葬って、単なる埋葬法じゃないよな。火葬は肉体から解放されて魂を天に返す感覚、土葬は土に還ることで自然の一部になるって考え方だ。どちらも仮想世界だ。」
クワヤマダくん: 「だから未来の長人たちは、どっちも捨てがたくて、半分火葬で半分土葬のミディアムで!って言い出したんでしょうね。」
ダイラ: 「ハンバーグじゃないんだから。前方後円墳か……あれ、丸と四角が融合してるだろ?宇宙と地上、人間と神をつなぐ形でもあるって言われてたよな。でも、見方によっては結局、丸と四角の折衷案とも言えるよな。昔から、揉めたんだよ。墓は丸派と四角派で。」
クワヤマダくん: 「じゃあ、欽ちゃんの仮装大賞って、未来では人類が生と死をどう捉えるかを問う場になってるんですね。」
ダイラ: 「そう。だからあれだけ真剣なんだよ。欽ちゃんの審査も、見た目だけじゃなく、哲学的な深さを評価してた。」
ふと、クワヤマダくんが笑い出す。
クワヤマダくん: 「でも、ゾンビ女子高生にはあの深さ、たぶん伝わらないっすよね。」
ダイラ: 「まあな。でも、こうやって仮装の背景にある文化や哲学を考えるきっかけになるんだから、それでいいんだよ。」
二人はコーヒーを飲み干し、カフェを後にした。未来の長人たちの熱気と欽ちゃん走りをするミイラの光景が、いつまでも頭に残っていた。
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