第406話 マジカ夜ミキサー
夜空の下、ダイラとクワヤマダくんは草原に座り、最近話題の「マジカ夜ミキサー」について語り合っていた。その装置は、人生そのものをシャッフルし、コストや地球への影響だけでなく、自分に関係した人々の未来まで割り出すという。
クワヤマダくん:
「ダイラ先輩、あのマジカ夜ミキサーの話、本当だと思います? 自分が生きてるだけでどれだけの負担をかけてるか計算されるのも怖いけど…」
ダイラ:
「そう、それだけじゃない。君がこれまで関わった人たちが、この先どう生きるかも予測されるって話だ。」
クワヤマダくん:
「うわ、マジカヨ!それは…ちょっと重すぎませんか? 昔、僕がいじわるしちゃったクラスメイトとか、どうなるか分かっちゃうんですかね。」
ダイラ:
「そういうことだ。例えば、君のちょっとした言葉が、ある人の人生を変えてるかもしれない。そしてその結果が数字になって見える。恩も、迷惑も、全部だ。」
クワヤマダくんはごくりと唾を飲み込み、足元の草を握りしめた。
クワヤマダくん:
「でも…それって見たら後悔しかない気がします。『あの時、もっと優しくしていれば』とか…。」
ダイラ:
「そうだな。でも、見方を変えれば、感謝の連鎖を確認できる装置でもあるんだ。君が誰かを助けたことで、その人がまた別の誰かを助ける。その未来を知れるなら、少し希望が持てると思わないか?」
クワヤマダくん:
「うーん…でも先輩、もし僕が誰かの未来を悪い方向に押しちゃったって分かったら、どうしたらいいんですか?」
ダイラは夜空を見上げ、静かに答えた。
ダイラ:
「それが分かるなら、今から修正すればいい。関係が切れてしまった相手でも、新しい形でつなぎ直すことはできる。『明日』がある限り、どんな未来も変えられるんだ。」
クワヤマダくんは一瞬ほっとしたように笑ったが、また不安げに問いかけた。
クワヤマダくん:
「でも、自分に関わった人が未来で失敗しちゃったら、責任感じますよね。僕がその原因だったら…。」
ダイラは少し笑いながら肩をすくめた。
ダイラ:
「そもそも全ての原因が君にあるわけじゃないさ。人間関係ってのは複雑で、互いに影響を与え合うものだからね。マジカ夜ミキサーはその複雑さを教えてくれるけど、それは君が全てを背負えって意味じゃない。むしろ、『一人では生きていない』ってことを教えてくれるんだよ。」
クワヤマダくん:
「一人じゃない、か…。そう考えたら、ちょっと勇気が出ますね。」
二人はしばらく黙り込んだが、クワヤマダくんがぽつりと呟いた。
クワヤマダくん:
「でも、やっぱりちょっと怖い装置ですね。自分の未来だけじゃなく、関わった人たちの未来まで見えるなんて…。」
ダイラ:
「そうだな。恐怖もあるけど、それが人間らしさだ。未来のコストが分かったからといって、必ずしも過去を否定する必要はない。そこに意味を見つければいいんだよ。」
夜空を見上げる二人の背中に、マジカ夜ミキサーの光がぼんやりと差し込んでいる気がした。恐怖と希望が入り混じる装置の存在を思いながら、二人は今日という一日のありがたみを改めて噛みしめた。
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