第396話 変わっていいとも!

伝説のテレビ番組、変わっていいとも「テレホンショッキング」に鎌倉時代の随筆家、吉田兼好が登場し、タモさんとの徒然話でスタジオが盛り上がった。次のお友達紹介で兼好が電話をかけたのは、なんと『方丈記』の著者、鴨長明。長明は電話越しに「めんどくせー」とぼやきつつも、昭和のアルタのスタジオに現れた。


もちろん連れてきたのはダイラとクワヤマダくん。鴨長明の癖の強さにクタクタになっていた。


アルタ前の人ごみを眺める長明は、現代の雑踏の中でしばし立ち止まり、思わず有名な一節をつぶやく。


長明:「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……」


その言葉を聞いたタモリは、長明に茶化し気味に問いをぶつけた。


タモリ:「長明さん、ところで“流れる川”って、実は『絶えず変わっている』からこそ美しいものなんですよね。もしも川が止まって動かなくなったら、単なる池に過ぎないわけで……。じゃあ、私たちもこの“流れ”に乗るためには、毎日どれだけ変わっていかないといけないんでしょうね?」


長明は少し驚いた様子でタモリを見つめ、答えた。


長明:「なるほど……現代にあっても、無常の理(ことわり)は人々の中に生きておるのじゃな。確かに、己もまた、川と同じく常に流れゆく存在。この“変わり続けること”が、我々の存在そのものなのじゃ。」


タモリ:「そうですよね。でも一つ不思議なのは、結局“変わり続ける”っていうことが、この世の唯一の“変わらない真実”だったりするわけで。いやー、無常も意外にしぶといですよね!」


長明はその言葉に頷きつつも、どこか楽しそうに笑みを浮かべる。


長明:「たしかに、無常は実にしぶとい! 現代の君らはそれを“持続可能な変化”とでも言うのかもしれぬな。流れが尽きぬ限り、我々もまた、泡沫のようにあり続けるものなのじゃ。」


そのやりとりを、観客席の片隅で聞いていた数学者フクオカは、失恋の痛みを胸に抱きつつ、ふと「動的平衡」の解釈のアイデアを思いついた。


フクオカ:「生命とは、絶えず崩壊と再構成を繰り返しながらも、全体としてバランスを保つ……。私たちもまた、変わりながらも、その中で新たなバランスを見つけ続けているのかもしれない。」


こうしてタモリと長明の哲学的な徒然トークは、無常をテーマにしつつ、川の流れのように尽きることなく続いていった。


そして、長明の紹介したお友達は、川の流れでヒットした美空ひ…


「クワヤマダくん、今日はもうばっくれよう。長明さんは、そのまま、アルタの前に置いていこう。」ダイラとクワヤマダくんはタクシーに乗って帰ってしまった川の流れのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る