第392話 かずおの裁き

ダイラ:「なあ、クワヤマダくん、おれ夢なんか見てないってば!」


クワヤマダくん:「いやいや、そんな汗だくで言い訳してるやつが、夢見てないわけないだろ?面白そうだから、教えてくれよ!」


ダイラは仕方なくそっぽを向いたが、その時、どこからか不気味な音が暗闇の中に響いた。カサカサ、ゴソゴソ、まるで何かが這い寄ってくるような音だ。そして、ぼんやりと現れたのは、漂流教室(楳図かずお作)の切れ者キャラ、“がもうくん”だった。


がもうくん:「やあ、ダイラくん。君、夢を見たんだろう?僕にも教えてくれないか?」


ダイラは背筋が凍る思いだった。このがもうくんに深く関わるとろくなことがない。『漂流教室』で彼が登場するたびに、次々と恐ろしい事件が起こることをダイラは知っていたからだ。


ダイラ:「いや、だからさ、俺、ほんとに夢なんか見てないんだよ。それに、がもうくんとは…その、あんまり関わりたくないんだよね…」


クワヤマダくん:「えー?がもうくんって頭脳明晰だし、頼りになるじゃん?」


ダイラ:「いやいや、そういうことじゃなくて…」


その時、再び暗闇の奥から、妙に大きなゴソゴソ音がした。次の瞬間、巨大なサソリが現れ、ゆっくり二人に近づいてきた。そのサソリはドスの効いた声でこう言った。


サソリ:「ダイラ、オマエの夢を聞かせろ。さもなくば、バラバラにしてやる!」


ダイラは一瞬でパニックに陥った。夢なんて見ていなかったが、そう答えたらやられてしまう気がした。慌てて口から出まかせを言うことにした。


ダイラ:「わ、わかった!言うよ!ええっと、夢の中で懐中電灯を口に入れて灯したら、骸骨が浮かび上がってきた…そんな夢だったんだ!」


サソリは少し考え込んだあと、冷たい目でダイラを見下ろした。


サソリ:「…つまんない。」


その一言を残し、サソリは今度はクワヤマダくんの方へじりじりと近づいていく。


クワヤマダくん:「おい、ダイラ!それじゃ足りないぞ!もっと面白い夢だったって言えよ!このままじゃ俺がやられる!」


ダイラは顔面蒼白になりながら、言い訳を続けたが、サソリは満足しないままクワヤマダくんの方にハサミを向けた。


二人は一瞬にしてサソリに皮を剥がされ骸骨になった。


その時、突然辺りがぼんやりと明るくなり、サソリの姿がふっと消えた。ダイラは息を切らしながら、ベッドの上で目を覚ました。どうやら夢だったらしい。ダイラは、急いでクワヤマダくんに話しかけた。


ダイラ:「いやー、クワヤマダくん、聞いてくれ!夢でさ、骸骨とかサソリが出てきて、そいつらが夢を聞かせろって…」


クワヤマダくんは、じっとダイラを見つめている。


クワヤマダくん:「さっきまで“夢なんか見てない”って言ってたのに、今になってそんな話するなんてさ…ほんとに夢見たのか?」


ダイラはしばらく言い逃れをしようとしたが、クワヤマダくんの目はまるでヘビの目のように鋭く光っている。もう逃げられないと観念したダイラは、顔を真っ赤にして言い返した。


ダイラ:「ああ、悪かったよ!夢見たさ!それも最悪な夢だったんだ!がもうくんとかサソリとか、二人とも骸骨とかさ!ほんっとに怖かったんだよ!」


クワヤマダくんは肩をすくめ、ケタケタと笑った。クワヤマダくんは楳図かずおの漂流教室を読んでいた。そして、その笑顔に見送られながら、ダイラは心の中で叫んだ。


ダイラ:「だから楳図かずおの漫画は怖いんだ!いつも読んだ後、夢に出てくるんだまん!」

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