第390話 ダイラー&ドラゴン

ダイラとクワヤマダくんは、寄席にタイムスリップした。二人で掛け合いながら落語をすることは本来あり得ないが、タイムワークし過ぎて時空が歪み、奇妙な落語形態となっていた。


「いやぁ、みなさん。最近、文化ってなんだろうなって考えてましてね。あっしは昔っから“文化”っていう言葉に引っかかってて、なんか立派なもんだと思うんですよ。でも実際、文化って見えないもんでしょ?なぁ、クワヤマダくんよ、文化って何だと思う?」


ダイラがそう尋ねると、クワヤマダくんは考え込む。


「どうした急に?お前の文化といえば、宇宙だのアートだの、ちょっと風変わりなもんばかりじゃねぇか?まぁ食いもんじゃねえことは分かっとるさ。」


「いやいや、今日は特別なんだよ。クワヤマダくんもアトリエを引越したとかでめでたいが、今日は文化の日だからな。まぁ、食ってみなさんな。」


「文化の日って、毎年何だかんだで休みになるあの日か?」


「ただの休みじゃないぜ。この日は“自由と平和”を願って、文化を讃えようって日なんだ。」


「自由と平和ねぇ…でもさ、なんで“文化の日”なんていうんだ?“文化”ってやつは、どうして“自由”と“平和”と繋がるんだ?」


「それを今、俺たちで考えてみようってわけさ。文化って、形があるもんだと思うか?」


「形がなきゃ目に見えないだろ?」


「でもな、実は形なんてないんだよ。文化ってのは、俺たちが築き上げるもので、誰もその本当の姿を見たことがないんだ。」


「へぇ。じゃあ、形がないのに“文化”って言葉で表せるもんなのか?」


「たとえば江戸時代に黒船が来たとき、最初は船だって分からなかったって話があるだろ?あれが何なのか、みんな見たことねぇもんは分からなかったんだ。」


「ふむふむ、見えても何だか分からないものか。で、それがどう文化に関係してくるんだ?」


「文化も同じさ。自由や平和だって形はないけど、俺たちが“これが大切だ”って信じて行動することで初めてそこに見えてくるんだよ。」


「なるほどね。じゃあ、今こうやって俺たちが語り合ってるのも見えなかった文化ってわけか?」


「その通り。芝浜のオヤジだって、最初はただの飲んだくれに見えたかもしれないけど、財布拾ってからが人生の分岐点になっただろ?些細な出来事が、人の心に残る文化になることだってあるんだよ。」


「まぁ、こんなダイラ話を“文化”っていうのも不思議な感じだけどな。」


「不思議なものほど、実は人を動かして自由にさせる力を持つもんだ。だからこそ、文化の日ってのは、そんな不思議さや自由を思い出すための日でもあるんだよ。」


「なるほど、よく分かったよ。俺たちのこのダイラ物語も、未来に“自由な思考の文化”として残るかもな!」


「あぁ、俺たちはその“自由な文化”の担い手ってわけさ!」


「おい、そこの旦那!そう焦って帰らず、オレのオレの話を聞けーって!」


こうして二人は、自分たちの“ダイラ物語的な思考”を大切にしながら、未来への文化を思い描いて話を続けた。それがいつの日か、何かを築く“文化”として認識されることを願いながら。

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