第387話 チーム・ボラの優しさ

ダイラとクワヤマダくんは、2035年の未来にある「チーム・ボラ」の展示を訪れた。


ダイラ:「おい、これが噂のチーム・ボラか?なんか紛らわしい名前だな。あの世界のチーム・ラボのパクリか?」


クワヤマダくん:「そうだな。でも、内容が全然違うみたいだぜ。チーム・ラボのような自然をモチーフにした光のアートじゃなくて、世界各地の神々が戦うって…そんなの誰が幸せになるんだよ?」


二人は不思議そうに展示を見回す。光のアートが世界各地の神々の戦いを再現しているが、その光景はどう見てもダークで混沌としているし、皆不幸にしかならない。


ダイラ:「うーん、これはアートっていうより、むしろ神々の争いを観察するサバイバルゲームみたいだな。」


クワヤマダくん:「ほんとだ。しかも、どの神も満足そうじゃない。なんでこんなに不幸な光景を作ったんだ?」


その時、チーム・ボラの代表、熊子氏が近づいてきた。彼は大きなサングラスをかけ、カラフルな衣装で目立っていた。


熊子氏:「ようこそ、チーム・ボラへ!私たちのアートは、神々の争いを通じて人間の内面的な葛藤を表現しています。このようなダメな比較対象があるからこそ、チーム・ラボの素晴らしさを引き立てるんです!」


ダイラ:「え、ダメな比較?それってどういう意味だ?」


熊子氏:「チーム・ラボは素晴らしいでしょう?でも、彼らが創り出す自然の美しさと平和とは対照的に、私たちはあえて争いを選んでいます。それが、よりチーム・ラボを好感的で、強い印象を与えるための戦略なんです!」


クワヤマダくん:「なるほど、チーム・ラボが一人勝ちし、人々が幸せを感じるためには、チーム・ボラが潰れ役に徹するってことか。そんなことしなくても、チーム・ラボはダントツで世界一のアーティスト集団だけどね。まずチーム・ボラで不幸を体験してから、ラボで口直しするということか?」


ダイラ:「なんか哲学的だな。でも、やっぱりこの展示は不気味で意味不明だ。誰も幸せにならない戦いなんて、見ていても楽しくないぜ。」


熊子氏は得意げに続けた。「それこそがこの展示の本質なんです!私たちは観客に疑問を投げかけ、アートが持つ力を再認識させることを目指しているのです。」


クワヤマダくんは目を細めながら言った。「じゃあ、チーム・ラボの光の作品を見た時はどう感じるんだ?それもまた、ダメな比較になるのか?」


熊子氏はにやりと笑い、「もちろん!私たちのアートを通じて、他者の美しさをより深く感じてもらえれば、それが成功なんです。」


ダイラとクワヤマダくんは顔を見合わせ、思わず首を傾げた。。


クワヤマダくん:「要するに、俺たちの楽しみは、あくまで他と比べることで見つけるってことか。なんだか皮肉なアートだな。意味は分かるけど、人間の感性の限界も突きつけられた感じがする。」


ダイラ:「まあ、人間なんぞそこが限界だわ。しかし、人間として生きる以上、捨てることのできない本能でもある。仕方ないのかな。」


こうして、二人はチーム・ボラの奇妙な展示を後にし、チーム・ラボの自然の美しさを思い出しながら、より幸せなアートの世界を求めて歩き出した。

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