第385話 水銀灯の光の魅惑
ダイラとクワヤマダくんは2035年の未来から戻ってきたばかり。いつものカフェに座り、二人はアイスコーヒーをすすりながら、平さんの伝説的な展示について語り合っていた。
水銀灯と存在の境界を超える
ダイラ:「あの展示、ただのアートじゃなかったよな。平さんが頭に水銀灯を埋め込んだ瞬間、あれはもう『人間とは何か』を問う哲学そのものだった。平さんの目や鼻、耳から漏れる水銀灯の光は、奇跡的なものが感じられた。」
水銀灯に照らされると、観客は時間も存在も揺らぎ始め、今ここにいる自分ですら確かなものに思えなくなる。
クワヤマダくん:「世界中の水銀灯を買い占め水銀灯アートを独占した『株式会社ドームのないプラネタリウム』は、田園調布に巨大なコンタクトドーム(東京ドーム3個分)を設置して、平さんの遊び場として、ドーム内では日々無尽蔵な平アートが展開されていた。」
ダイラ:「俺たちなんて、ドーム内で迷走しててるだけかもな。」
旧人間のどんぐり理論、再び
未来の超人社会では、「人間同士のあれこれ」は、まるで「どんぐりの背比べ」扱い。感情に振り回されて争いばかりする旧人間として、超人から見れば取るに足らない存在だった。
クワヤマダくん:「でも、あいつらに平さんみたいな狂気は無理だろ?頭に水銀灯埋め込むとかさ。」
ダイラ:「合理性にばっか頼ってるから、芸術や狂気の世界には踏み込めないんだよな。」
人生は光に照らされた瞬間の錯覚
ダイラは天井を見上げながら、ふとつぶやいた。
ダイラ:「人生なんて、平さんの水銀灯の下で見える光景みたいだよな。眩しくて、リアルに見えるけど、実は幻だったりする。」
クワヤマダくん:「俺たちが自由だと思ってるのも、ただの錯覚なのかもな。全部、行動も未来も決まってるのに、眩しさに惑わされて『これが俺の選択だ』って思ってるだけなんだよ。」
サラリーマン川柳と未来の皮肉
カフェの静かな時間を破るように、クワヤマダくんが急に思い出したように笑い出した。
クワヤマダくん:「なあ、川柳やろうぜ!未来の皮肉でも込めてさ。」
ダイラ:「じゃあ、いくぜ――『光る頭 狂気の中で 神と呼ばれ』」
クワヤマダくん:「オレも――『合理性 狂気の前で 迷子なり』」
二人は肩を叩き合いながら笑い転げた。未来の超人たちには絶対に理解できない、このユーモアがたまらないのだ。
地下と光、分かれた世界の未来
未来では超人と旧人間の住処は完全に分けられ、地下に追いやられた旧人間たちは無限に争い続けている。それでも、超人たちには理解できない「アートを楽しむ才能」が地下には満ちていた。
ダイラ:「俺たちみたいな旧人間は、戦って笑って、光の下でも影の中でも楽しむ術を知ってるんだよな。」
クワヤマダくん:「地下送りだろうが、俺たちはずっと笑ってやるさ。」
光の先へ、そして未来へ
最後のコーヒーを飲み干しながら、二人は未来への再挑戦を決意した。
ダイラ:「次のタイムワークで2100年の超人どもに教えてやろうぜ。『狂気の光は、合理性の影を照らす』ってな!」
クワヤマダくん:「オレたちの背比べ、見せてやろうぜ――どんぐりでも勝てるってことをな!」
こうして、ダイラとクワヤマダくんは再びタイムワークの準備に取り掛かるのだった。地獄でも天国でも、笑いを忘れない彼らの冒険は続く。
光の向こう側には、どんな未来が待っているのだろうか?それを知るためには、眩しさを恐れず進むしかない――平さんの水銀灯のように。
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