第384話 お前はもう詰んでいる!
ダイラとクワヤマダくんが公園で休んでいると、選挙帰りのお爺さんがベンチに座り、愚痴をこぼしていた。
お爺さん:「民主党に投票するつもりが、立憲民主党だか国民民主党だか、わけが分からんくなっての。結局立憲に入れたが、あとで気づいたら間違えてた。」
クワヤマダくんはうなずきながら慰める。
クワヤマダくん:「わかりますよ。こういう間違いって人生でよくあります。車のナビでも指は右を指しているのに、口では左と叫んでいたり。右か左かで迷うこと、誰でもありますから。」
ダイラ:「裏金問題を暴いたのは共産党なのに、その共産党が議席を減らすっていうのは、正に右と左を間違われたな。」
お爺さんはそれを聞いて笑い、言った。
お爺さん:「婆さんに『お大事に!』って言おうと思ったら、『菩提寺に!』って言ってしまったこともあるしの。
ダイラ:「おれは最近、村上隆と秋山竜次の区別がもうつかない。あれは似てるどころの話ではなく、同じである。正三角形の証明条件より似てる。」
クワヤマダくん:「世界には三人似た人がいるとか?もう一人どこかにいて、出てきたら面白い。」
その時、ダイラが急に話を切り出した。
ダイラ:「でも、最近の物理学者はこう言ってますよ。自由意思なんてないって。僕たちが“決めた”と思ってることは、実はもう行動の前から決まっているみたい。」
クワヤマダくん:「つまり、お爺さんがどの党に投票するかも、最初から決まってたってこと?」
ダイラ:「その通り。脳は行動の後で都合よく解釈して、『自分が選んだ』って思い込むだけなんだって。」
お爺さんはしばらく考え込んだあと、ぽつりと言った。
お爺さん:「わしが投票を間違えたことも、最初からそうなる運命じゃったんか…。国民民主の玉木さんのドヤ顔もすでに決まっていたのか。」
ダイラ:「ええ。未来はすでに決まってるんです。僕たちがこうして話してることも、実はこの瞬間を迎えるのが決まってた。」
クワヤマダくん:「ってことは、俺がさっき自販機で選んだメロンソーダも、最初から決まってたんだな…」
お爺さんは深くため息をつきながら呟いた。
お爺さん:「じゃあ、人生ってのはただのトリックか?脳が勝手に行動して、後で理由をでっち上げるだけなら、わしらは誰かの作った幻の中を歩いとるんじゃな。」
クワヤマダくんは肩をすくめながら言う。
クワヤマダくん:「そうかもしれないです。僕たちは、誰かが投影したフォログラムの中を歩いてるのかも。しかも、それはアカシックレコードっていう宇宙の全記憶が映し出す幻なんですよ。」
ダイラ:「つまり、この世界は僕たちの意思なんか関係なく進んでる。どう転んでも、未来はもう決まってるんです。」
お爺さんは一瞬考え込み、やがて大きな声で笑い出した。
お爺さん:「つまり、わしが立憲に入れようが国民に入れようが、どうせ決まってたってことじゃな。なら、そんなに深刻になる必要もないのう。」
クワヤマダくんもそれに合わせて笑う。
クワヤマダくん:「そうですよ。どんな選択肢でも、どうせ僕たちは最適な未来に運ばれていくんですから。」
ダイラは空を見上げながら言った。
ダイラ:「重要なのは、トリックだと分かっても笑いながら進むことです。どんな幻でも、楽しんだもん勝ち。」
秋の風が木々を揺らし、紅葉の葉が舞い散る中、三人は笑い合った。脳が作り上げた最適な幻か、宇宙の記憶を映し出したフォログラムか――それがどちらであれ、彼らにとって重要なのは、目の前の瞬間を楽しむことだけだった。
そして、誰も気づかないうちに、時間は静かに流れ、未来という名の既定の道を、三人は笑いながら歩き続けた。
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