第383話 鬼滅のお祓いブーム
バブル期の日本。街中では「紅葉狩り饅頭!」というネタが流行し、お祓い芸人たちがそれを叫んで観客を沸かせていた。空前のお祓いブーム!
クワヤマダくん:「なあ、ダイラ、なんでこんなにウケてんだ?」
ダイラ:「あの紅葉のことを思うと、ちょっと複雑だな……。」
そうつぶやくダイラの脳裏に、ある記憶がよみがえった。それは、三人が平安時代にタイムワークしたときの出来事だった。
ダイラ、クワヤマダくんとクボタがタイムワークで平安時代に飛んだとき、彼らは美しき女性・紅葉と出会った。彼女は源氏の側室として宮中に仕えていたが、その立場は安定したものではなく、周囲の嫉妬と策略に苦しんでいた。
紅葉は三人に微笑み、三枚の起請文を差し出していた。。
紅葉:「この誓いを結んだら、私は永遠にあなたたちのものよ。と別々に渡していた。」
三人は戸惑いながらも、それぞれ起請文を受け取った。しかし後で見せ合うと、同じ文言で貼り付けコピーされていることに気づく。
クボタ:「くっそー騙された!紅葉ちゃんを待っていたのに!」
ダイラ:「お前ももらったのか……?まさか、宮中の連中みんなに同じことしてるのか?」
クワヤマダくん:「嘘をついたら、熊野のカラスが3羽死ぬどころか、世の中のカラス全滅するぞ。」
三人は紅葉を問いただすため、彼女のもとを再び訪ねた。
紅葉はあっさりと嘘を認め、挑発的にこう言った。
紅葉:「むしろ私は、世界中のカラスを殺してやりたいわ。」
驚く二人に、彼女はため息混じりに理由を明かした。
紅葉:「ただ、ゆっくり朝寝がしてみたいだけよ。」
紅葉の言葉に、三人は言葉を失った。彼女は源氏の寵愛を受けながらも、周囲に監視され、自由も休息もない日々を送っていたのだ。カラスの鳴き声で目覚める朝は、彼女にとって逃げ場のない現実を突きつける象徴だった。
やがて紅葉は源氏の宮中から追われ、信濃の山奥へ流される。彼女はその地で「鬼女」として恐れられる存在になったが、生まれ子どもを源氏に見せに行く途中、鬼女として上洛を企む紅葉に危機を感じた平氏に滅ぼされ、ひっそりと姿を消した。
彼女が消えたその地は「鬼がいなくなった里」、つまり「鬼無里(きなさ)」と呼ばれるようになり、彼女にまつわる伝説が「紅葉狩り」の由来となった。山々は紅葉の血で赤く染まったと言い伝えられた。
再びバブル時代に戻ったダイラとクワヤマダくんは、「紅葉狩り饅頭!」と叫ぶ芸人たちの姿を見つめた。
クワヤマダくん:「なあ、紅葉のこと、こんなネタにされちゃって……怒るかな?」
ダイラ:「いや、彼女は落語好きだったから、案外、こういうの好きかもな。」
紅葉の悲劇が、お菓子と笑いへと姿を変え、時を超えて人々を楽しませている。そのことに二人は不思議な感慨を覚えた。
ダイラとクワヤマダくんは、手元に残った紅葉の起請文を見つめながら笑った。
ダイラ:「誓いなんて、その瞬間の気まぐれだな。」
クワヤマダくん:「でも、気まぐれのおかげで夢も見させて貰った。」
彼らは朝寝坊ができない日々も、紅葉との思い出とともに乗り越えていくのだと心に決め、新たな時代へのタイムワークを続けていくのだった。
そして、どの時代でも、紅葉のような自由を求める心が消えることはない――。
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