第382話 バブル崩壊後のミツグくん
ダイラとクワヤマダくんは、バブル期の象徴的な現象であった「アッシー」「メッシー」「ミツグくん」の行動に注目することにした。
「この時代の人間たちは、他人に尽くすことに夢中だな。」ダイラは冷静に分析した。
「そうだな。でも、自分を使い捨てられるとわかってても、やってんだよな。それって、なんかカッコよくねぇ?」とクワヤマダくんは感心した様子。
街を歩くと、しょうゆ顔よりもソース顔が流行り、男たちは高級車を転がし、札束をばら撒いていた。豪奢なレストランで恋人たちに振る舞い、深夜のバーで「お前のためなら全財産使える」と笑う彼ら。その姿は一見、愚かにも見えたが、二人にはどこか奇妙な気高さを感じさせた。
「彼らがやっていることは、贈与と自己犠牲だ。」ダイラは言った。
「なんかさ、これってアートだよな。自分の存在そのものを誰かのために使うってさ。」とクワヤマダくんが興奮気味に続ける。
男たちの生き様とアートの共鳴
二人は、ある若者グループの一人を観察することにした。彼は恋人のために毎夜、車で送り迎えをし、ブランド品を貢ぎ続けていた。「俺はいつか彼女に捨てられるかもしれない。でも、それが何だ?」と、彼は笑顔で言う。
ダイラは眉をひそめた。「普通なら、失うことが怖くてそんなことできないはずだ。」
クワヤマダくんはその若者の横顔を見つめながら、「たぶん、こいつらは今この瞬間を楽しむことに全力なんだ。未来のことなんて、気にしちゃいねぇ。生粋のアーティストだからな。」
そのとき、二人の目に映ったのは、喧騒の中でもどこか達観した表情の男たちの姿だった。彼らはまるで、世俗に身を置きながらも、すでにバブル崩壊を見通しているかのようだった。
修行僧と化すバブルの民
時が経ち、バブルの崩壊が間近に迫ると、かつて高級車を乗り回し、札束を投げていた男たちは、次第に静かに姿を消していった。彼らは、まるで修行僧のように身なりを改め、簡素な服に身を包み、街角で托鉢を始めた。
「まるでバブル時代そのものが、一つの修行だったかのようだな。」ダイラは呟いた。
「彼らは失うことを知っていたんだな。だから、最後まで全力で生きたんだ。」クワヤマダくんも深く頷いた。
その姿は、目先の欲望に溺れるだけの人間には見えなかった。彼らは、自らのイキガイを見つけ、それに従って生きた。そしてそのイキガイが終わりを迎えると、静かに手放す術をも知っていたのだ。
イキガイの本質に触れる
ダイラとクワヤマダくんは、バブルの民たちの変貌を見て、自分たちの学びを深めた。
「イキガイってのは、ただ夢中になって生きることじゃない。失うことすらも受け入れ、その瞬間を楽しむ覚悟なんだ。」ダイラはそう結論づけた。
「うん。使い捨てられるのを恐れずに、全力で自分を出せるやつが一番強いんだな。」クワヤマダくんは満足げに微笑んだ。
未来への道しるべ
その後、ダイラとクワヤマダくんは、未来の2050年の世界に再び向かう決心をする。バブル期の男たちの精神――全てを出し尽くし、執着せずに手放すイキガイの本質――を、彼らもまた自分の道として選んだのだ。
「よし、俺たちも托鉢用の鉢を用意するか?」と冗談を言うクワヤマダくんに、ダイラは笑いながら答えた。「それも悪くないな。どうせアートとして昇華される。」
こうして二人は、自らの存在をアートとして捧げる覚悟を決め、未来の混沌に再び飛び込んでいくのだった。
未来もまた、彼らアートサバイバーによって再構築され、夢と現実が交差する世界で、新たな伝説が紡がれていく――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます