第378話 モレヤのチンコン

諏訪湖近くの足湯で、クワヤマダくんとダイラはのんびりと湯に浸かりながら、ホイップアンパンを手に御柱祭の話に花を咲かせていた。湖面を撫でる風が心地よく、二人はリラックスした表情で語り合う。


諏訪の神はフォッサマグナ?


クワヤマダくんがふと思い出したように話を切り出した。


「なあ、ダイラ。御柱祭って、ただの奇祭だと思ってたけど、実はフォッサマグナを鎮めるための儀式だって話、知ってたか?」


ダイラはホイップアンパンを一口かじりながら頷く。

「ああ、聞いたことあるよ。諏訪の神様がフォッサマグナそのものって説だろ?御柱はそのエネルギーを封じる象徴で、物部守屋(モレヤ神)の怨霊がマグマの怒りとされてるらしい。まさにもののけだ。」


クワヤマダくんはさらに考え込む。

「諏訪って場所、歴史がすごく絡んでるんだな。馬を食べる文化も、モレヤ物部守屋を滅ぼした厩戸皇子(聖徳太子)のトーテムとしての馬が関係してるのかも。シカやウサギ、カエルの供え物にも、モレヤを追った部族のトーテムが込められてるんじゃないか?」


多文化の交差点:諏訪と茅野


ダイラも話を広げた。

「茅野には縄文のビーナスや大量の黒曜石が出土してるし、昔から大陸からの旅人や貴族が訪れてたんだろうな。ビーナスみたいにあんなボリュームのある体型は日本人じゃないと見てる。アフリカからも来たかもな。中国でも茅野の黒曜石が見つかってるって話があるし、多種多様な人たちがここを行き交ってたのは間違いない。」


クワヤマダくんは湖面を見つめ、静かに言う。

「御柱祭の荒々しさも、いろんな人の度肝を抜くためだったのかもな。木遣りの高音も、生贄を前に泣き叫ぶ人々を表現してるとか。ただの儀式じゃなく、深い意味があるんだな。」


奇祭を忘れる瞬間


ダイラは肩をすくめ、笑みを浮かべた。

「でも、こうして足湯に浸かってると、そんな生々しい祭りのことなんか忘れちゃうよな。」


その言葉にクワヤマダくんも頷いて笑う。

「結局、どれだけ深刻な歴史や信仰があっても、最後には目の前の小さな楽しみが戻ってくるんだよな。」


異次元からのクボタ


そこへ、異次元から御柱の上にまたがったクボタが突然現れた。


「お前ら、違う!御柱だけじゃフォッサマグナは鎮まらん!巨石信仰(ミシャグジ)も必要なんだ!」


クワヤマダくんとダイラは驚きの表情を浮かべる。


「万治の石仏を見たか?あの鍋蓋みたいな形は、フォッサマグナを封じるためのフタなんだ!」


ダイラが感心したように頷く。

「なるほど、巨石と御柱の合わせ技か。でもクボタ、お前もホイップアンパン食うか?」


クボタは一瞬戸惑ったが、アンパンを受け取り一口かじる。

「……お前ら、なんでこんなに楽しそうなんだ?これ、うまいな。」


日常とアートの境界


クワヤマダくんは笑いながら言った。

「どんな歴史や信仰があっても、最後に残るのはこういう小さな楽しみだろ?」


三人は足湯を出てラーメン屋へ向かう途中、再び語り合った。


「もし最後に一つだけアートを残せるなら、お前らは何を選ぶ?」とクボタが問う。


ダイラは即答する。「もちろんホイップアンパンだ。」


クワヤマダくんも頷く。

「どんなに壮大な歴史があっても、こういう日常の楽しみが一番長く残るんだよ。」


クボタは苦笑いを浮かべる。

「ほんとにそれでいいのか?」


月への旅と諏訪の未来


三人は夜の街を歩き、月を見上げながら、再び話が宇宙に及んだ。


ダイラ:「そういえば、日本人初の月面着陸予定宇宙飛行士って諏訪さんって言う方なんだよ。いよいよ諏訪(本人は諏訪出身ではない)も月に行くんだね。実はスワッて読み方は、独特なんだ。日本語だとすうほう、中国語読みだとスワなんだよね。やっぱり、諏訪地域の原始は渡来人にありそうだ。」


クワヤマダくん:「この前、御柱を宇宙に飛ばしグルグル回転させるとかやってたよな、クボタの未来アイデアの予想は当たっていたのかもな。」


三人は笑い合いながらラーメン屋に入る。湯気の立つラーメンをすすりながら、モレヤのチンコンと言わんばかりに馬刺しを注文し、歴史に思いを馳せ楽しんだ。

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