第363話 空ネイル遊ぶ(くうねるあそぶ)
スタジオは、相変わらず不思議な空気に包まれていた。ダイラが羊羹を口にしながら、唯識哲学について考え込んでいる時、突然、ギャル風の学生が部屋に入ってきた。彼女は派手なネイルを指でいじりながら、軽く微笑んでいた。
「ねえ、みんな。今日は空ネイル遊ぶって感じ?」と、彼女は軽い調子で声をかけた。
クワヤマダくんは、その言葉に一瞬キョトンとした。「空ネイル? 何それ、陽水の『くうねるあそぶ』みたいだな。でも、ネイルって何か空と関係あるのか?」
ギャル風の学生はネイルを眺めながら、ゆっくりと深呼吸した。「そう、空だよ。ネイルって、一見派手で物質的なものに見えるけど、これも結局は心が作り出した幻想なの。色も形も、感じ方次第でどうにでもなるんだよね。空(くう)の概念って知ってる?」
その言葉を聞いたダイラは、彼女に興味を持った。「空の概念か…。それは、すべてのものに実体はないっていうことか?」
「そうそう!まさにそれ!だから、ネイルで遊んでいるように見えるけど、本当は何もないのよ。ただの色と形。私たちが勝手に価値をつけてるだけ。感じる心が作っているものに過ぎないんだって、最近美大で悟ったの」とギャル風の学生は微笑んだ。
クワヤマダくんは驚いた顔で彼女を見つめた。「つまり、ネイルもアートも、ぜんぶ心が作ったものってこと?感じ方次第で、綺麗にも汚くも見えるってことか?」
「Exactly! だから、何が綺麗で何が汚いかなんて、みんな違って当然なの。私が空ネイルで遊んでいるのも、結局は心を解放してるだけ。楽しんでるけど、同時に執着もしてない。陽水の『食う寝る遊ぶ』みたいに、何も考えずにただ遊んでるのが一番悟りに近いのかもね」と彼女は軽やかに答えた。
ダイラは感心したように頷いた。「つまり、物質にとらわれず、ただ感じる心を通して楽しむことこそが、空(くう)に近づく方法だってことか。ネイルすらも悟りへの道になるんだな…。」
その時、無気力に横たわっていた寺村が再び口を開いた。「確かに、何も執着せずにただ流れに身を任せるってのは、一種の悟りだ。だから俺も、何もしない。食う寝る遊ぶ、それだけでいいんだ。」
「寺村も悟りを開いてるのか…? 俺はまだ煩悩だらけだよ。蛾を見たら怖いし、やっぱり綺麗なものが好きだし…」とクワヤマダくんは少し悩んだ顔をして言った。
ギャル風の学生は軽く笑って、ネイルを再びいじりながら言った。「そんなの、気にしなくていいよ。悟りって言っても、特別なことじゃないんだ。ただ、自分の心を理解して、楽しむだけでいいんだよ。ネイルをいじって遊ぶのも、羊羹を食べるのも、空を感じながらやれば全部一緒。」
その時、ダイラがふと羊羹の話を思い出した。「そういえば、この羊羹、実は未来人が宇宙から届けたコスモ食だったって話があるんだ。室町時代から続く羊羹も、形に囚われない永遠の空の象徴なのかもしれないな。」
「宇宙食…羊羹がそんなものだったなんて!」クワヤマダくんは驚きの声を上げた。「物質に囚われず、ただ楽しむ。空ネイルも、羊羹も、全部心の中の遊びってことか…。」
ギャル風の学生は満足そうに頷きながら、ネイルを見つめ続けていた。「そういうこと。だから、今日も私は空ネイルで遊ぶ。悟りって、意外とこんなふうに簡単に手に入るのかもね。」
クワヤマダくん、ダイラ、そして寺村は、それぞれ自分なりの方法で空の概念を感じ、悟りの道を歩んでいた。そして、未来人からの宇宙食としての羊羹も、空ネイル遊ぶという軽やかな日常も、彼らの物語の中で輝き続けることになった。
次回、クワヤマダくんは、ついに自分の煩悩と向き合う時がやってくる。蛾への恐怖を克服するため、ギャル風の学生と共に「ネイル・セラピー」の奥義に挑戦することに!一方、ダイラは、羊羹の謎を追って宇宙食の起源をさらに深掘りするが、意外な人物が現れてその真実を暴露!?果たして、寺村の「空寝る」スタイルは本当に悟りなのか?そして、未来人が送り込んだ新たなコスモ食の正体とは?
「ネイルの奥に広がる無限の空」編、お楽しみに!
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